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レーヴァティン

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第六十四話 あやかしその七

「通るのに何日もかかるとなりますと」
「尋常な長さやないからな」
「それ位はあるであります」
「そやな」
「そう思うと凄いであります」
「そんな妖怪もおるんやな」
「そういえばあやかしがどれだけの長さか考えたことなかったな」
 船乗りは二人のそのやり取りを聞いて呟いた。
「俺も」
「船乗りさんもかいな」
「ああ、通るのに何日もかかってな」
 船の上をだ。
「油がやたら多いのはわかっててもな」
「それでもかいな」
「そこまでは考えてなかったよ」
 そうだったというのだ。
「どうもな」
「ふと考えたことなかったんか」
「何日も船の上を通って油でその船が沈められる」
「その二つが大事でか」
「ああ、長さはな」
「考えてなかったか」
「今言われて気付いたよ」
 今まさにというのだ。
「そういえば相当な長さでな」
「その長さはやな」
「本当にどれだけだろうな」
「この島一回り出来る位ではないやろ」
 耕平は幾ら何でもそれはないと考えた。
「この島大陸並にでかいけどな」
「流石にそれはないであります」
 峰夫もこう言ってきた。
「それではこの島にいること自体が」
「出来へんな」
「流石に。長くてであります」
「数百キロか」
「一日に船の上を通るのを四十キロとして一週間」
 峰夫は頭の中で計算した、ここで。
「そう考えるとであります」
「二百十キロか」
「それ位かと」
「まあそんなとこか、しかしな」
「二百十キロでもでありますな」
「めっちゃ長いな」
 耕平はあらためて述べた。
「それだけでも」
「相当な長さであります」
「正真正銘のデカブツやな」
 ここでこう言った耕平だった。
「ほんまに」
「化けものと言うと思ったでありますが」
「いや、化けものなのはわかってるからな」
「それは言わないでありますか」
「それでこう言うたんや」
 デカブツと、というのだ。
「それがしはな」
「そうでありますか」
「それでや」
 さらに話した耕平だった。
「二百十キロやろこの島でもな」
「存在出来るでありますな」
「そやな、しかしあやかしって泳ぐ速さはそれ程でもないんかいな」
「ああ、遅いぜ」
 それはと答えたのは船乗りだった。
「それはな」
「そうなんか」
「ああ、船の上に出てる身体の動き見たろ」
「そういえばゆっくりしてたな」
「身体が大きいせいかな」
「動きは遅いんやな」
「そうなんだよ、それに動きが鈍くてもな」
 それでもというのだ。
「別にな」
「あの巨体で鱗も頑丈でか」
「鮫とか鯱に噛まれても平気だからな」
「襲われる心配もないか」
「そうなんだよ、まあこれであやかしはいなくなったし」
「先に進めるな」
 英雄が船乗りに応えた。 
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