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レーヴァティン

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第六十四話 あやかしその六

「ことが成るぜ」
「それは何よりだ」
「それも二匹釣れたか」
「ああ、全員食えるな」
「でかいのが二匹あるしな」
「ならすぐに刺身にするか」
「ああ、しかしあんた達ハマチだけじゃないな」
 見ればそれはまだあった。
「鯛は三匹か」
「それがしが釣りました」
 智が言ってきた。
「これも」
「そうか、それじゃあその鯛も今からな」
「捌くか」
「ああ、ただ俺はな」 
 船乗りは自分の話もした。
「今から船を動かさないといけないからな」
「魚は捌けないな」
「悪いな。誰か出来るかい?」
「魚なら捌けるっちゃ」
 すぐにだ、愛実が言ってきた。
「お刺身も出来るっちゃ」
「へえ、そうなのかい」
「お母ちゃんに教えてもらったっちゃ」
 魚を捌いて刺身にする包丁の捌き方をというのだ。
「だからっちゃ」
「あんたが出来るか」
「だから任せるっちゃ」
「わしも出来るぜよ」 
 当季も右目を瞑って言ってきた。
「魚は大好物で実家も綱元じゃからのう」
「魚には慣れていてか」
「そうぜよ」
「じゃあ二人で刺身にするんだな」
「そうするぜよ。あとわしは鰹釣ったぜよ」
 この魚をというのだ。
「それも捌くぜよ」
「あんたはその魚か」
「鰹は大好物じゃしのう」
 当季のそれだとだ、笑って言うのだった。
「ではどのお魚も早速捌くぜよ」
「じゃあ俺は船を進めるな」
「頼んだぜよ」
 そちらはとだ、当季は船乗りに告げた。
「是非のう」
「それじゃあな」
「しかし。思ったよりも早く進めましたね」
 良太はこのことをよしとしていた。
「あやかしは何処かに行きました」
「如何なるものでも限りがある」
 謙二の言葉は静かなものだった、尚彼と紅葉は釣りには参加していない。殺生を戒める職業だからということもあってだ。
「ですから」
「あやかしといえどですね」
「一週間も進んだのですから」
 船の上を湖から出てだ。
「そうしたのですから」
「それで、ですね」
「はい、あやかしも去ったのです」
 一週間も通り過ぎていてというのだ。
「例え長くいても」
「あやかしの長さには限りがある」
「ですから」
「そういうことですね」
 良太もここで納得した、だがここで耕平はこう言った。
「しかしあやかしって何キロあるんや」
「その長さはでありますね」
「そや、長いっていうてもな」
「幾ら何でもですね」
「一週間昼も夜も船の上通りとかな」
 そうしたことが出来るのならというのだ。
「どんな長さや」
「尋常な長さではないですね」
「そう思うやろ、自分も」
「はい」
 こう耕平に答えたのだった、峰夫も。
「どうにも」
「十キロでは済まんな」
「何百キロでしょうか」
「それ位あるか?」
「そうでありますな」
 まさにとだ、峰夫は耕平に答えた。 
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