レーヴァティン
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第六十四話 あやかしその三
「好きです」
「名古屋っちゃな」
「実は他にもきし麺や味噌カツや味噌煮込みうどんも」
「ういろうもっちゃな」
「好きです」
「そうだったちゃか」
「こちらの世界の名古屋に行かれましたね」
紅葉は愛実に微笑み問うた。
「いい場所でしたね」
「そう言えるってことは」
「私も伊勢に入る前に立ち寄っています」
「そうだったっちゃか」
「それで名古屋料理を満喫しました」
そうしていたとだ、紅葉は愛実に笑顔で話した。
「やっぱり名古屋は美味しいですね」
「食文化はかなり豊かっちゃ」
「鶏肉も美味しくて」
「そうっちゃな」
「ドラゴンズは弱いですが」
このことは少し陰を見せて言う紅葉だった。
「ここ数年は」
「そこでそれ言うっちゃ?」
「祖母がいつもやれやれと言っています」
名古屋生まれの彼女がというのだ。
「十年前はよかったのにと」
「それは監督交代のせいっちゃな」
「落合さんをですね」
「無理に交代させたからっちゃ」
フロントの者が現役時代中日にいたことがあるとはいえトレードで入った即ち外様である彼を嫌ってそうしたという。
「だからっちゃよ」
「そのせいですね、やはり」
「その後でゼネラルマネージャーになった落合さんのチーム運営も問題だったっちゃか?」
「あの急激な変革は」
「確かに選手の年俸の分だけお金は出来たっちゃが」
ベテラン選手に大幅減俸を行ってだ。
「それでも若手が出なかったっちゃからな」
「そのせいで、ですね」
「ああなったっちゃか」
「思う様にいかないですね」
「そうっちゃな、まあそのうちっちゃ」
「元の中日に戻るでしょうか」
落合が監督だった頃にとだ、紅葉は期待して言った。
「そうなるでしょうか」
「阪神でもそうなったっちゃ」
かつて長い暗黒時代にあったこのチームもというのだ。
「だからっちゃ」
「中日もですか」
「また戻ることもあるっちゃ。栄枯盛衰は野球でもっちゃ」
この世界でも言えることだというのだ。
「だからっちゃ」
「また強くなりますか」
「ずっと強いチームなんてないっちゃ」
栄枯盛衰は世の常だ、そうしたチームなぞ存在しないというのだ。
「強い時も弱い時もあるっちゃ」
「それが世の摂理ですね」
「ただ巨人はっちゃ」
「あのままですね」
「最下位であり続けて欲しい」
「私もそう思います」
「今十年連続最下位っちゃが」
勝率一割台シーズン百敗でだ。
「あのままっちゃ」
「未来永劫弱いままですね」
「それでこそいいっちゃ」
巨人は弱くあればいい、これは全世界の心ある者達が望むことだ。それ以上に巨人が無様に負けることがいいのだ。
「巨人には無様な負けがよく似合うっちゃ」
「全く以てそうですね」
「あれだけ優勝してきたっちゃ」
かつてはというのだ。
「それならっちゃ」
「これからずっと」
「最下位でいていいっちゃ」
「まさにその通りですね」
「西武よりも優勝してるっちゃよ」
「あのチームも随分優勝しましたね」
八十年代から九十年代までだ、このチームの黄金時代も随分と長くその強さは憎たらしいとまで表現される程度だった。
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