空に星が輝く様に
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35部分:第三話 入学その十一
第三話 入学その十一
「やっぱり」
「あれっ、普通はそうだろ?」
陽太郎は星華の言葉を聞いてこう返した。言いながら校門を出る。これでもう学校から出た。後は家に帰るだけであった。
「ジャージだろ?やっぱり」
「男の子はそうだけれど」
星華はここで口を少しだけ尖らせて述べた。
「女の子は違うのよ」
「いや、だからジャージだろ?」
「それは中学じゃない」
「ああ、そうか」
「うちの中学校は夏でも下はジャージだったけれど」
二人の通っている中学校ではそうだったのだ。半ズボンやスパッツというものはなかったのだ。それで星華はこのことを言うのだった。
「暑かったのよね」
「暑かったのか」
「そうよ・・・・・・ってあんたもそうだったじゃない」
口を尖らせての言葉だった。
「夏もジャージだったでしょ?下は」
「俺剣道の袴で慣れてるから」
だが陽太郎はここで部活のことを話に出した。
「そういうのは別に」
「慣れてるのよ」
「慣れてるよ。それにな」
「ええ。それに?」
「やっぱりあれだろ。佐藤ってバスケだから」
「そうよ。夏はジャージじゃなくてユニフォームの半ズボンで動いてたから」
ここにそれぞれの部活の違いが出ていた。
「全然平気だったのよ」
「そうだったのか」
「そうよ。それでね」
星華はさらに話した。
「それがどうなのか気になるのよ」
「夏が暑いからか」
「半ズボンかスパッツだったらいいけれど」
「そうか。じゃあな」
「ええ、帰りましょう」
こう言ってであった。二人で帰路につく。その途中また言う星華だった。
「ところでさ」
「今度はどうしたんだ?」
駅に向かう道は静かで落ち着いたものだ。左右の商店街は賑わっているがそれでもだ。雰囲気は静かで落ち着いた、その中を歩いていた。
「この学校って居合部もあるのよね」
「ああ、そうだよな」
俯き加減になっている星華の言葉に応えた。
「それもあるよな」
「そうよね。やっぱりね」
「やっぱり?」
「その部活って剣道部のすぐ隣でやるのかしら」
「ああ、そうかもな」
陽太郎は何も考えることなく答えた。
「剣道と居合って兄弟みたいなものだからな」
「じゃあ」
それを聞いて星華は自分の中に焦りや苛立ちといった感情が起こるのを感じた。それは何故生じたかわからないが確かに生じていた。
「あれ?」
「あれって?」
「居合部って女の子もいるし」
「いや、剣道部だっているだろ」
陽太郎はここでも星華がどうしてそんなことを言っているのか全くわからなかった。それはどうしてもであった。気付いていなかったと言ってもよかった。
「普通に。居合部だってな」
「男の子もいるわね」
「そうよね」
「いや、何でそんなこと言うんだ?」
陽太郎は星華の言葉の意味がわからなかった。
「また。何でなんだ?」
「何でもないわ」
こう言うだけの彼女だった。
「そうなの」
「何なんだよ、また」
「私はバスケ部だから」
このことも言葉に出した。
「けれど」
「けれど?」
「剣道・・・・・・できないから」
また俯いていた。そのうえでの言葉だった。
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