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ナイスヒット

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第三章

「私は無理もするよ」
「左様ですか」
「うん、そうもするよ」
「左様ですか」
「そうだよ、この歳になってもね」
 今もというのだ。
「そうしているよ」
「それが発明王になれた理由ですね」
「ははは、そうかも知れないね」
 エジソンはアスレチックスのフロントの者に気さくに笑って応えた、そうしてだった。
 この話の後で彼は自分が発明した映像でカップのバッティングを何度も観た、その後で助手に話した。
「いいフォームだね」
「それで定評がありますね」
「伊達にヒットを量産している訳ではないね」
「フォードみたいですからね」
 自動車を大量生産しているこの企業の話が出た。
「カップのヒットは」
「そうだね、そういえばね」
「ああ、フォードさんは若い時に」
「私のところにいたよ」
「そうでしたね」
「ライト兄弟もだったよ」
 エジソンはカップの映像を観つつ助手に話した、彼にとっても懐かしい思い出だ。
「彼等もいたよ」
「そうでしたね」
「そして彼等はね」
「ああしてですね」
「面白いことをやったよ」
 フォードにしてもライト兄弟にしてもというのだ。
「あの通りね」
「自動車に飛行機に」
「二人共ね」
「はい、そして今はですね」
「カップを観ているが」
「グラウンドでなくとも観られますね」
「私が発明したこれでね」 
 映像、まさにそれでだ。
「出来る様になったよ」
「実に面白いですね」
「私もよくこんなものを発明したものだ」
「苦労した介がありましたね」
「全くだよ」
 エジソンは助手と話をしつつカップのバッティングの映像を何度も観た、そのスイングや足の動きまでだ。そうしてだった。
 後日球場に来た、そのエジソンにカップは笑顔で挨拶をした。
「よく来てくれましたって言うべきかな」
「ははは、来たくて仕方なかったよ」
 エジソンはカップと握手をしつつ笑って返した。
「そして今日遂にだよ」
「球場に来てくれたんだな」
「そうだよ」
 まさにと言うのだった。
「そうなるよ」
「そうか、じゃあな」
「うん、君との勝負だね」
「相手をさせてもらうな、ただな」
「ただ?」
「その前にその目でな」
 エジソンのそれでとだ、カップは笑って話した。
「俺のバッティングを観てくれるかい?」
「映像でなくだね」
「そっちでは観ていてくれたよな」
「そうさせてもらっていたよ」
 実際にとだ、エジソンも答えた。
「これまでね」
「そうだよな、けれどな」
「映像だけじゃなくてだね」
「その目でも見てくれよ」
 直接というのだ。 
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