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ナイスヒット

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第一章

               ナイスヒット
 その交流関係を聞いて多くの者がまずは耳を疑った、そしてその話をした者に対していぶかしむ顔で問い返した。
「あのタイ=カップとトーマス=エジソンがか?」
「ああ、付き合いがあるらしい」
 話をした者はいつもこう返した。
「何でもな」
「野球選手と発明家がか」
「そうらしいぞ、本当にな」
「どういうつながりがあるんだ、しかもな」
 誰もがここで彼の人間性を話した。
「タイ=カップだぞ」
「あのタイ=カップだな」
「ああ、確かにプレーは凄いがな」
 野球のそれはというのだ。
「あいつの人間性はな」
「最悪だな」
「あんな乱暴な奴はいないぞ」
 カップはそのプレーだけでなくこのことでも有名だった。
「とんでもないスライディングをしてな」
「スパイクをいつも相手を攻撃する為に磨いていてな」
「ユニフォームの下にピストルを持っているんだぞ」
 そうした噂もあった。
「人種差別は酷いし暴言ばかり吐いてな」
「とにかくすぐに怒るな」
「そんな奴だぞ、あいつを好きな奴はな」
 それこそというのだ。
「この世にいるか」
「まあとでもない嫌われ者だな」
「そのカップとか」
「エジソンがな」
 発明家、アメリカでも有名な彼がというのだ。
「付き合いがあるなんてな」
「実際にそうらしいな」
「信じられないな」
「けれど事実らしいな」
 タイ=カップとトーマス=エジソンの間に付き合いがあると聞いて誰もがまさかと思った、だがこのことは事実だった。
 そのはじまりはまずはエジソンからはじまった。
 エジソンは発明に没頭していたがその中である話を聞いた。それで研究の合間に休んでいる時に助手の一人にその理知と人生の苦労が感じられる顔で尋ねたのだ。
「アスレチックスのタイ=カップのことだがね」
「あの乱暴者ですか?」
 助手もカップについてまずはこう言った。
「またとんでもない乱闘を起こしたんですか」
「いやいや、乱闘のことじゃないよ」
 エジソンは助手にカップの代名詞ともなっているそのことは否定して返した。
「別にね」
「じゃあ株のことですか?」
「それでもないよ」
「じゃあ何ですか?」
「野球のことだよ」
 まさにそれ自体のことだというのだ。
「彼は随分優れた野球技術を持っているね」
「はい、あの性格ですが技術は凄いですね」
「そうだね、しかし彼の性格は本当に問題なのだね」
「問題じゃないと言う人の方が珍しいですよ」
 カップの場合はというのだ。
「それこそ」
「まあそれは私も聞いているがね、しかしね」
「性格のことは今は置いておいてですね」
「そう、野球人としてのカップについて話したいのだよ」
 エジソンは助手に真顔で話した。
「今はね」
「それで野球技術がですか」
「凄いと聞いたがね」
「そうらしいですね、研究していて」
「その研究の仕方を知りたいのだよ、何でもね」
 エジソンは助手が勧めたコーヒーを礼を言って受け取って飲みはじめてからさらに話した。
「彼は野球を精密科学の様に研究しているそうですね」
「科学だからですね」
「そう、科学だからだよ」
 ここでエジソンは笑って助手に話した。 
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