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たったそれだけ

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第一章

                たったそれだけ
 東北の青森県で大雪となった、その雪は凄まじくもう市民生活全体に深刻な影響を及ぼす様になっていた。
 それでだ、知事も困り果てていた。
「青森も雪が多いがね」
「はい、これではです」
「市民生活に深刻な影響が出ています」
「即座に何とかしないといけません」
「さもないとこれ以上の影響が出ます」
「これ以上影響が出ては」
「即座に除雪作業にかかろう、県庁全体で」
 知事は決断を下した、そうしないとどうにもならないのは明白だと思われたからだ。
「そうしよう」
「それがいいですね」
「では、ですね」
「これよりですね」
「除雪作業を開始しましょう」
「人も機械も総動員して」
「もう手が空いている職員も機械も使ってだ」
 そうしてというのだった。
「道路の除雪作業だ、主要道路を除雪しても違う」
「はい、そうです」
「それだけで流通がかなり復活します」
「そうすればそれだけ市民生活が復旧します」
「それでは」
「自衛隊にも要請しよう」
 知事はこの決断も下した。
「やっぱりこうした時はな」
「災害の時はですね」
「何といってもですね」
「自衛隊ですね」
「あの人達ですね」
「そうだ、だからだ」
 県だけでは人が足りない、そう見越してのことだ。
「自衛隊にも要請しよう」
「それもすぐにですね」
「そうするのですね」
「ことは一刻を争う」
 知事の顔は深刻なものだった、県の行政を預かる者として市民生活の確保に心血を注ぎ最善の方法を採るのは当然のことだからだ。
「ではだ」
「はい、今から」
「すぐに自衛隊にも要請しましょう」
「除雪作業をお願いしましょう」
「主な幹線道路の」
 官僚達も応えてだ、すぐにだった。
 知事から直接の要請で自衛隊に除雪作業の命令が下った、命令を下した基地司令は自ら陸戦服にみを包み言った。
「では今から動ける者全員でだ」
「はい、出動ですね」
「除雪作業にあたりますね」
「そうして雪をどけて」
「交通を復活させますね」
「こうしたことこそが任務だ」
 自衛隊、つまり自分達のというのだ。
「まさにな」
「はい、その通りです」
「災害救助は自衛隊の重要な任務です」
「国民の生活を守ることですから」
「ならです」
「すぐに出動しましょう」
「基地には当直の者達だけを置いていく」
 窓の外の降り注ぐ雪を見つつだ、司令は周りにいる幹部達に応えた。当然彼等も陸上自衛隊の緑の制服から陸戦服に着替え靴も長靴になっている。
「使えるものも全て持って行くぞ」
「重機もですね」
「除雪用のそれも」
「それも持って行きますね」
「ショベルカーでもブルドーザーでも使えるならだ」
 それならというのだった。
「投入するぞ」
「そうしていきましょう」
「この大雪です」
「何とか雪をどけてです」
「市民生活を復旧させましょう」
「雪の中で動けなくなっている車があればな」
 司令はこうしたことまで考えていた。 
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