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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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求めるもの

 
前書き
ちょっと熱中症になりかけた本日。
皆さんも体調不良には気を付けてください。 

 
シリルside

「ティオスって奴はこっちにいるらしい!!」

ラクサスさんとタクトさんがお母さんから聞いたと言う情報を頼りにティオスの元へと向かっている俺たち。本当に合っているのか最初は不安だったけど、その考えは愚問だったみたいだ。

「まだ姿が見えないのに・・・」
「すごい魔力を感じるよ~」

まだティオスの姿を見ることはできないのに、彼の大きな魔力が徐々に近づいて来ているのがわかる。

「ん?」

しかし、それよりも俺たちの目を引いたのは空を飛ぶ漆黒の翼。

「おい・・・あれって・・・」

前に進めていた足が思わず止まった。それだけの出来事が、今、目の前で起こっているのである。

「アクノロギア・・・」

姿を見せてこなかった絶望の支配者が、荒れ狂う戦場へと舞い戻ってきたのだった。


















第三者side

「おい!!向こうに行ったのはまさか・・・」

その頃、シリルたちと同じくティオスの元へと向かっていたリオンたちもその存在に気付いていた。大きな翼を羽ばたかせ、空を進んでいくアクノロギア。

「まさかアクノロギアまで・・・」
「どうなってるって言うんだよぉ」

ティオスという最凶の悪魔がいるだけでも厄介なのに、それと同程度の力を保有しているアクノロギアまで現れたとあっては焦らずにはいられない。

「あいつ・・・俺が相手してやるよ!!」

その姿を見て一際スピードを上げた火竜(サラマンダー)。彼は恐れることを知らない。むしろ父の仇を取るために、アクノロギアを見て目を鋭くさせていた。

「待って!!」

アクノロギアがいる場所にティオスがいる。そのことはおおよそ感じ取れていた。そこを目指して速度を上げようとした一同だったが、ルーシィの声で立ち止まる。

「どうしたんだよ、ルーシィ」

水を差された格好になったナツは不機嫌そうに振り返る。全員が彼女の方を見ると、そこには辺りを見回しているジュビアもいた。

「グレイ様がいないんです!!」
「「え?」」

そう言われてようやく彼らも気が付いた。共に行動をしていたはずのグレイの姿がどこにも見当たらないことに。

「あいつ・・・どこに行ったというんだ」
「もう!!こんな時に・・・」

緊急事態にも関わらず姿を眩ませたグレイに怒り心頭のリオンたち。だったが、意外にもナツだけは冷静さを保っていた。

「リオン、お前たちはティオスのところにいってくれ」
「お前たちはどうするんだ?」

その問いに答えるよりも早くルーシィの手を取るナツ。彼はそのままどこかへ走り出そうとした。

「グレイを連れ戻してくる!!」
「連れ戻すって・・・」
「どこに行ったのかわかるの!?」
「たぶん・・・グレイは・・・」

ナツは彼がどこにいったのかおおよそ検討がついていた。だからこそ、ルーシィたちを連れてその場所を目指すことにした。




















「まさか君が一番にたどり着くとはね」

その頃、妖精の尻尾(フェアリーテイル)で一人待っていたゼレフの元に、一人の男が現れた。

「僕の予想じゃカミューニかラクサス辺りだと思ってたんだけど・・・」

彼はこの場所に誰かが来ることはおおよそ予想していたらしい。だが、目の前にいるのはその考えとは異なる人物。

「正直、残念だよ」

そう言って彼が冷めた目を向けたのは、全身傷だらけの黒髪の青年。

「そろそろ帰ってくんねーかなぁ。そこ・・・俺がいつも座ってる席なんだ」
「一番・・・ナツを悲しませる状況になってしまった」

ゼレフの元に現れたグレイ。満身創痍の彼に、ゼレフを倒す秘策は残されているのだろうか?


















「ここで来るか、アクノロギア」

天界から見下ろしているドラゴンたちと一人の天使。彼らは戦場に舞い戻った暗黒の翼を見て顔を強張らせていた。

「まだティオスも倒せてないのに・・・」
「こんなタイミングで現れるとはな」

グランディーネとメタリカーナが思わず弱気な声を発する。

「確かティオスというものはアクノロギアより強いはずだが?」
「奴にアクノロギアを任せるのか?」

最終的にはアクノロギアをもターゲットにしているティオス。そうなれば多少前後してでも彼に期待が寄せられる・・・

「いいえ、無理よ」

だが、ヨザイネは簡単にその考えを否定した。

「万全なティオスならアクノロギアなんて楽勝だろうけど、今はバランスが崩れた状態。それで勝てるほど甘くないわ」

本来の力を失っているティオスでは相当厳しい戦いになる。それはカミューニが彼の腕を切り落とすことを計算していた彼女ならば簡単にわかるものだった。

「ならばどうする?」
「今の人間たちでは、アクノロギアを倒すには至らない」

二国間の戦争で消耗している魔導士たち。彼らが協力しても及ぶかわからない相手。アクノロギアの登場で400年前の竜王祭の再来になってしまうのか、そんな不安がドラゴンたちに流れた。

「いや、問題ないのだろ?ヨザイネとなら」
「さすがですね、炎竜王」

だが、イグニールは彼女の狙いに気付いていた。ヨザイネは噂に違わぬその嗅覚に思わず拍手をする。

「何?ヨザイネ。問題がないって」

隣にいたヴァッサボーネはそれがどういうことなのかわからず問いかける。すると、ヨザイネはニヤリと笑ってみせた。

「まだいるでしょ?アクノロギアを倒せるマスターピースが」

一瞬頭に?マークが過ったが、すぐに何のことを言っているのか理解できたドラゴンたち。彼らはその男の登場を、待つことにした。


















「「「「「・・・」」」」」

戦場に舞い降りたアクノロギア。その存在を目の当たりにした魔導士たちは、言葉を失い、その高い魔力に恐怖を抱いていた。

「何者だ・・・」
「この魔力・・・」
「どこかで・・・」

目の前にいるのは人の姿をしたアクノロギア。彼のその状態を目にしたことのない者たちは突然の乱入者に困惑の色を隠せない。

「アクノロギア・・・」
「とうとう来てしまったか」

一方、アイリーンとオーガストは子と母を守るように先陣に立つ。彼らの口から放たれた男の名前に、エルザたちはますます目を丸くさせていた。

「うぬであったか・・・人々に滅竜の力を与えた者は・・・」

そう言って彼が最初に見据えたのは緋色の髪をした女性。彼女はアクノロギアがドラゴンになる原因とも言える滅竜魔法を生み出した存在。真っ先にターゲットにされることは、予測していた。

「ならばうぬは我の母」

そういった瞬間、全員がアクノロギアの姿を見失った。次に彼が姿を見せたのは、アイリーンの目の前。

「我の罪ィ!!」

目にも止まらぬ高速パンチが炸裂。鈍い音と共に、腹部を突かれたアイリーンは血を吐き出した。

「ガハッ!!」
「母さん!!」

あまりの衝撃に耐えきれず地面に転がる緋色の絶望。アクノロギアは彼女にさらなる追撃に出ようとしたが、オーガストが杖でそれを防いだ。

「うぬは黒魔導士と似た匂いがするな」
「・・・」

杖でアイリーンを守ろうとするオーガストとそれを打ち破ろうとするアクノロギア。両者が均衡しているその時、後ろからそれを妨げる者が現れる。

「氷天神の・・・怒号!!」
「「「「「!!」」」」」

アクノロギアの襲来をチャンスと位置付けたティオス。彼はアクノロギアものとも、オーガストたち全員を一気に葬り去るためにブレスを放った。

「クハハハハハッ!!」

他の魔導士では絶対に出せない威力のある攻撃。しかし、あろうことかアクノロギアはそれを一瞬のうちに食らってしまった。

「魔法を・・・食べた?」
「一体何の属性を・・・」

ティオスが放ったのは彼の本来持っていた氷の滅神魔法とシリルの体を器にしたことにより手に入れた天空の滅悪魔法。二つの属性が混じり合っていたはずの攻撃を、アクノロギアは何の考えもなしに食べてしまっていたのだ。

「属性?我にはない。我は最後のドラゴン・・・すべての“魔”を喰らいし終焉のドラゴン。魔竜アクノロギアなり!!」

その言葉を残し見慣れたドラゴンの姿へと変貌を遂げるアクノロギア。それによりさらに魔力が高まり、人々は恐怖のどん底に叩き落とされていた。

「全ての魔を・・・こいつには魔法が効かんというのか!?」
「ああ・・・あ・・・」
「天狼島で対峙した時とは魔力が違いすぎる」
「こんなのに・・・どうやって勝てば・・・」

アルバレスもフィオーレも関係なく見下ろしているアクノロギア。その絶対的な力を前に、ひれ伏すしかないかのように思われた。

「ふっ」

この男を除いては。

「やはりドラゴンの頭は大したこと無さそうだな」
「何?」

本来の肉体バランスを失い力は半減。おまけに命中率も下がっているはずのティオスは、ドラゴンになった彼を見て笑っていた。

ヒュンッ

額に手を当てたかと思うと一瞬で姿を眩ましたティオス。彼がどこにいったのか全員がキョロキョロしていると、アクノロギアの背中から爆音が響き渡った。

「ガハッ!!」

鼓膜を破るのではないかと思えるほどの音。当然威力は絶大で、アクノロギアは思わずふらついた。

「お前らの弱点。それは背中に乗られたら反撃できないということだ」

威力が落ちていようとティオスには滅竜の力が備わっている。おまけにこの至近距離。攻撃を外す方が難しい。

「ハハッ、しかもこの位置からなら・・・」

アクノロギアの背中から左腕を下へと向ける。

「いかん!!」
「全員下がれ!!」

彼が何をするかはすぐにわかった。オーガストは素早く前へと移動し、杖を構える。

「お前たちにもいくらでも攻撃をぶつけられる!!」

手から放たれたレーザー。高いところからの視線とあれば遮るものもなく、おまけに邪魔をされることもない。それならば確実に狙いを定めることができ、今のティオスにはもっともいい場所と言えた。

ガンッ

ティオスの魔法を相殺しようとするオーガスト。彼の魔法はコピーすることも無効化することもできる。それなのに・・・

「ぐあああああ!!」

オーガストはティオスの攻撃を受け止め切れず、魔法に飲み込まれた。

「バカな!?」
「オーガスト様!!」

これまで傷ひとつなくその力を遺憾なく見せつけてきたオーガスト。それなのに、ティオスは負傷した肉体でそれを打ち破ってきた。

「お前らが生き返ったことは誤算だったが、こうなっては仕方ない。もう一度皆殺しにしてやるだけさ」

アクノロギアの背中を蹴りつけるティオス。なす統べなくダメージを受けるアクノロギアは、ふらつくだけで何もできない。

「小癪な」

だが、ティオスが上げた弱点はドラゴンの姿での話。それはすぐにアクノロギアも理解できた。そのため、彼はすぐに人間の姿へと戻る。

「おっと」

足場が小さくなっているのを感じ取ったティオスは素早く地上へと舞い戻る。人の姿に戻ったアクノロギアは、ティオスを睨み付けた。

「我を道具として扱ったこと、後悔するがいい」
「来いよ、雑兵」

地面を蹴ってティオスとの距離を詰めるアクノロギア。彼が攻撃のモーションに入ったタイミングでティオスは得意の瞬間移動を使う。

「逃がさん」

アクノロギアの背後を取ったかに見えたティオス。しかし、アクノロギアは途中で攻撃を止め、ティオスに体の正面を向けた。

「!!」

思わぬ事態に困惑するティオス。そんな彼の腹部にアクノロギアは拳を叩き込んだ。

「ゴホッ!!」

地面を転がるティオス。アクノロギアは止まったところで立ち上がろうとしている彼を見下ろし冷静に解説した。

「貴様のその瞬間移動。何かと魔力をリンクさせなければ発動できないようだな」

ティオスは時の狭間とエクリプスを繋ぎこの世界にやって来た。その際、彼は偶然にも時の狭間の力をわずかながらに得ることができたのだ。

「なるほど・・・時の狭間に自らの魔力をリンクさせることで」
「ティオスは瞬間移動・・・いや、別空間に一時的に入り込むことができたのか」

時の狭間は世界中のあらゆるところに繋がっている。彼は意識を集中させて自らの魔力と時の狭間の魔力をリンクさせ、その空間へと入り込み、瞬間移動に見せた技を使うことができることを、アクノロギアは見抜いた。

「見抜ければこっちのもの。意識を集中させる隙を与えなければいいのだからな!!」

ここからアクノロギアの怒濤の攻撃が始まるかと思われた。しかし、その期待は大きく裏切られる。

「ふぅ・・・ようやく体が馴染んできたな」

片腕を失われたティオスもその肉体にようやく慣れてきたらしく、動きが徐々にではあるが良くなってきた。そのためアクノロギアの攻撃を食らうことなく間一髪で回避している。

「こんな馬鹿げた戦い・・・ありえない・・・」
「レオンと天海のバトルも次元を越えていたが・・・これはそれを越えている」

アクノロギアとティオス。人間の力を凌駕した二人の魔力だからこその戦いに魔導士たちが割って入る間などない。だが、彼らの戦いは決着が着くのか疑問に思えてきた。

「このまま共倒れしてくれればあるいは・・・」

自らの魔法の無力化を打ち破られてしまったオーガストはそんな考えになっていた。勝てるかどうかわからない相手・・・ゼレフが妖精の心臓(フェアリーハート)を手に入れれば状況は一変できるが、その考えは彼の頭の中にはもうない。

ドォン

オーガストの願いが通じたのか、巨大な爆発が二人を飲み込む。それに他の魔導士たちも飲み込まれたが、中央にいた二人の被害の方が大きいはず。

「大したものだ」
「そっちもな」

そのはずなのに、彼らは大きな傷が付くこともなく、平然と立っていた。

「やはり格が違う・・・」
「私たちが割っていける戦いではありませんね」

エルザとメイビスがボソリと呟いた。その時だった、アクノロギアが盛大に笑い始めた。

「なんだ?」

アクノロギアの方が有利である現時点で全く攻めきれないのに余裕な彼の姿はまさしく異常といえた。思わずティオスも怪訝な顔を浮かべる。

「ドラゴンの血が足りん!!我はもっと力を付けなければならない」

そう言って彼はティオスから視線を切った。彼の瞳に映ったのは、藍色の髪をした少女。

「貴様の血を浴びれば、我はさらに力を得られる」

その目は完全に常軌を逸していた。確実に仕留めることができる獲物を見つけた猛獣が、それを得ようと突進してくるではないか。

「こやつ・・・」
「行かせるか!!」

ウェンディの前に立ちはだかったのはオーガストとジェラール。彼らは仲間を守るために自らの危険を省みなかった。

「邪魔だ」

だが、アクノロギアは決死の二人も軽々と弾き飛ばしてみせた。

「「ぐあああああ!」」
「オーガスト様!!」
「ジェラール!!」

空中に投げ出された二人。しかし、彼らよりも危険が迫っているのはこの少女。

「我にその血を与えよ!!」

伸びるアクノロギアの手。それはもう天空の巫女の体を貫く寸前だった。

(シリル!!)

もうダメだと思わず諦めてしまったウェンディ。彼女は目を閉じ最愛の少年の顔を思い浮かべる。

ガシッ

だが、来るべき衝撃は来なかった。何が起きたのかと顔を上げると、そこにはアクノロギアの拳を片手で平然と止めている凶悪な男の姿があった。

「なんだ?貴様は」

少し眠たげな目をし、長めの髪を後ろへと流している東洋の衣服に身を包んだその姿を知るものたちは鳥肌が立った。

「貴様、強者だな?」

















「天海、あなたしかアクノロギアを止めれる人間はいないわ」

天下無双・天海。ティオスに並ぶ最強の男が、混沌の地をさらに掻き回していく。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ついに来ましたよ、天海。かなり彼の復活は意見が別れそうなところですけどね。
果たして彼の登場は吉と出るか凶と出るか、見物です。 
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