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白き竜の少年 リメイク前

作者:刃牙
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レツは倒れたハルマの前に駆け寄り、静かに話しかける。すぐそばに目をやれば、傷一つない夜桜が妖しげに純黒の輝きを見せる

「少し休んでろ。ハルマ・・・オレがケリをつけっから」

レツの身体が、炎を纏う。右腕から放たれた炎は龍の形を象り、王虎に迫っていった

「(火炎変化・飛龍‼︎)」

龍が王虎を飲み込む。しかし、その瞬間。龍は弾け飛ぶ。何をやったのか見当もつかないが、ただ一つだけ言えることは、王虎は腕一本失くそうと、レツよりも強い

「・・・・・・これが業魔の最後の生き残りとはな」

「しかし、どうやって生き延びたのか」

「知るかよ!」

炎を纏った拳を王虎の顔面めがけ振り下ろすも、その拳はいとも容易く受け止められた。右手が炎で焼けている筈だが、眉一つ動かさず、自身の左腕があった箇所を見る

「一時的とはいえ、流石に左腕がないのは面倒だな」

蹴りを入れられ、後退したレツは苛立った様子だ。効かない事はない筈だ。そんな思いがレツの苛立ちを増長させる

「何で・・・効かねえんだ?オレの炎が」

「かつて、業魔の中にも貴様と同じように、火を操る者達がいた」

「奴らの火はまさしく災害!あらゆる里がその力を畏れ、欲した!だが、貴様のはどうだ?確かに操れるようだが、その力は微々たるもの‼︎奴らには遠く及ばん」

王虎の右手が光り、レツは構える

「見せてやろう。攻撃とは、こうやるのだ」

しかし、一瞬で目の前に現れた王虎の攻撃に反応出来ず、術をくらってしまう

「(爆遁の術!)」

「ガァッ⁉︎」

大きな爆発が巻き起こり、地面に打ち付けられるようにして倒れたレツに、王虎は見下した口調で話しかける

「分かるか?これが貴様と俺の力の差だ。千手ハルマは中々のものだったが、やはり俺に敵わなかった。その時の奴よりも弱い貴様が勝てる道理はない」

「貴様は戻って来るべきではなかった。千手ハルマが自らを犠牲にしてでも、貴様らを逃がそうとしたというのに、戻るなど愚か者がする事だ。その点では日向の小娘は利口だったな」

レツの歯が軋む音がする。忍としての合理的判断でいうなら、確かにカナの言う通りにするべきだとは分かっているのだ。しかし、仲間を捨てる事など、彼には出来なかった。起き上がり、王虎を睨み付ける

「うるせえ。おめえはカナの事知らねえだろ。あいつがいなくても、オレ一人で勝ってやる!それにオレがハルマより弱いって、分かった気になってんじゃねえよ‼︎」

「ほう?ならば、貴様は奴より強いという事を見せてくれるのか?」

『レツよ。自身の力を完全に開放しようとしてはならんぞ。それはお主の身が崩壊する危険が高すぎる!』

三代目の言葉がレツの脳裏をよぎる。しかし、今のままでは王虎には敵わない。このままでは大切なものを守れない。それに先程の爆遁で、ハルマがいる場所からは離れた場所にいる。ハルマに危害が及ぶ事はないだろう。

もう、レツに迷いはなかった

「(ハルマ。お前が何考えてんのか知らねえけど、死ぬなんて許さねえからな。オレはまだ、お前に何も返せてねえんだからよ)」

「悪いけど、約束破るわ。ジイさん。オレはあいつらを助けたいから」

レツを中心として、炎の奔流が巻き起こる。風を伝って感じられる熱気は今までのレツのそれを凌駕していた

「はぁあぁあぁあぁあぁあああああああああああああ‼︎!!」

「(何だ⁈この熱気は!)」

風は止んだが、熱気は消え去る事なく、肌を突き刺す。王虎はレツを見た時、思わず笑みを浮かべた。そこには黒く染まった髪を靡かせるレツがいたからだ

「ようやく、貴様も俺を楽しませてくれそうだな」

「ああ!そしてオレはお前に勝つぜ‼︎王虎!」

レツの背中から溢れ出た炎は彼の身体から離れ、四体の分身となった

「(陽炎分身‼︎)」

王虎に迫る分身たちは彼の人差し指から放たれた水鉄砲に当たったが、炎となって散る直前に煙玉を投げ付ける

「目眩しか・・・・」

視界が遮られ、見えるのは煙。その中から放たれる無数の矢が王虎を襲う

「(焔の矢・乱れ咲き!)」

右腕で覆うようにして、防ぐ王虎は矢が止み、煙が晴れたのを確認する。右腕を下ろした王虎だが、それと同時に雄叫びをあげながら、渾身の一撃を与えようとレツが、王虎に迫っていた

「うぉおぉおおおお‼︎」

「火拳‼︎」

咄嗟に右手を出して防いだように見えたが、炎は勢いを増し、王虎を呑み込む。レツの拳から放たれた炎は自らが拳となり、王虎を吹き飛ばした

「まだ・・・終わってねえか」

「中々・・・・・・これ程の力を有するとは思ってもいなかったぞ(こいつは歴代最強の業魔となるかもしれんな。業魔に日向。そして千手とうちはの血・・・ふっ。猿飛ヒルゼンは恐ろしい班を作ったものだ)」

王虎は向かい側から歩いてきて、そう呟いた。感心したかのような言葉を言い、レツを認めたような口ぶり。しかし、新たな攻撃の一手を既に繰り出していた

「だが、爆発は免れん」

レツの頭上に輝く玉は光を放ち、大きな爆発を起こす。爆風と共に、笑みを浮かべる王虎だが、爆心地を見ると、驚いたように目を見開く

「身に纏った炎で防ぐとは。器用な技を使うじゃあないか」

炎がレツを包むように纏わりついていた。それで爆発を防いだのだろう。傷一つなく、その場に立っている

「はぁあっ‼︎」

レツが王虎に炎を纏った踵落としを仕掛ける

「火炎脚‼︎」

「先程とはまるで違うな」

王虎は余裕を崩さず、右手にチャクラを込め、先程と同じ術を使おうとする。右手に光が収束し、球体となるのを見たレツは素早く炎を全身に纏わせ、防御の体勢を整えた

「爆」

投げられた球体は肥大化し、同時に眩い光を放つ。そして、爆発する

「(爆炎鳥‼︎)」

煙が舞い、その中からレツは鳥を象った炎を王虎に向けて、射出した

「(水鉄砲)」

それは容易く躱され、煙の中から出て来たレツの肩を水の銃弾が貫く。痛みに顔を歪め、立ち止まれば、両足をも撃ち抜かれ、痛みに悶える。立つ事もままならず、両膝をついてしまう

「ぐっ・・・・・・ぐぁぁあっ‼︎!」

痛みによって、集中力が途切れたレツの身体を包む炎が勢いを増す。身体は軋むように感じられ、痛みが支配する。炎を制御することができず、炎が消えるのを待つしかない。その様子を見て、王虎は興が削がれたのか、レツに背を向けた

「炎の暴走か・・・・」

「存外楽しめた・・・また会う時にはその力いただくぞ」

レツはその言葉を聞きながらも、意識が闇に沈む
 
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