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かんざし売りの女

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第二章

「考えてるんだけれどね」
「どういった考えだい?」
「今あたし達は大人用のかんざしばかり作ってるじゃない」
 紫蓮達はというのだ。
「秀さん達もそうでね」
「じゃああれかい」
「そうだよ、子供用のもね」
 そちらのかんざしもというのだ。
「作って売らないかい?」
「そうだね」
 相棒もうどんを食べつつ応えた。
「ここはね」
「そうだろ、子供用を作って売ったらね」
「あたし達のかんざしも売れるね」
「そうなったらだよ」
 紫蓮はそこから先のことも話した。
「あたし達の暮らしもよくなるよ」
「今も悪くないけれどね」
「長屋暮らしもね」
「けれどだね」
「やっぱり店持ってるならね」
 それならばというのだ。
「店大きくしたいだろ」
「そうだね、それも大店にね」
「だったらだよ」
「子供用のかんざしをだね」
「作って売らないかい?」
 相棒にこう提案するのだった。
「そうしないかい?」
「そうだね、それじゃあね」
「あたしの考えに乗るだね」
「実際うちには子供用のかんざしないしね」
 相棒は紫蓮にこのことから答えた。
「しかもあたし達のかんざしは秀さん達のより売れてない」
「だったらだよ」
「大坂は商売人同士の競争も激しいからね」
「若しちょっとでも油断したらだよ」
 若しくは手を抜いたらだ。
「その時はね」
「店が潰れるね」
「店が潰れたらまた道で開いた店からだよ」
 今みたいに建物の店でなくというのだ。
「雨だの雪だのにいつも気をつけないといけないね」
「そうした店に逆戻りだからね」
「折角屋根のある店にまでいったんだし」
「それならだね」
「商いも知恵と工夫だよ」
 紫蓮は相棒に強い声で言った。
「ならいいね」
「ああ、子供用のかんざしをだね」
「これから作ってね」
「売るんだね」
「そうしようね、あとここのうどん美味いから」
 紫蓮はこちらの話もした。
「もう一杯どうだい?」
「いいね、しかし道頓堀も美味いうどん屋あるんだね」
 二人は今そちらの店にいるのだ、二人が店を開いている日本橋から歩いて行ける場所で実際に歩いて行ったのだ。
「こんな美味い店が」
「そうだね、だからね」
「うどんもう一杯だね」
「それでまたここに来ようね」
「そうしようね」
 こう話して実際に二人はそれぞれうどんをもう一杯注文して食べた、そうしてこの日は食べ歩きをさらに続けた。
 二人は子供用のかんざしを作ってそちらも店で売る様にした、すると店の前を通りがかった小さな女の子達がだ。
 店の前に書いてある子供用かんざしありますという言葉と実際に店に並べられている実物を見てだ、自分達の手を引いている親達に言いだした。
「おかん、あれ買って」
「あのかんざし買って」
「かんざしいいよね」
「だから買って」
 こう言いだしてだ、親達がそれならと親によっては仕方ないなという顔になってそのうえでだった。
 子供用のかんざしは最初からかなり売れた、それでだった。
 紫蓮はその売り上げにだ、また子供用のかんざしが売れた時に相棒ににんまりと笑ってそのうえで話した。 
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