FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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魔竜の強襲
前書き
FAIRYTAILの続編がマガポケで出てきましたね。
第2話でクエストの内容が出てきたけど、それだとギルダーツの20巻での台詞が矛盾してしまうような・・・まぁ、いいけど。
「♪♪♪♪♪」
ここはシリルたちが戦い地上とは別の場所。全てを真っ白な空間で覆われたその場所にいるお団子ヘアの少女は、鼻歌交じりに地上を見下ろしていた。
「ずいぶんとご機嫌だな、ヨザイネ」
そこに大きな足音を立てて現れたのは水色のドラゴン。それを見たヨザイネは鋭い目付きをした後、ニッコリと微笑んだ。
「なんだ、ヴァッサボーネか」
ドラゴンのことが大嫌いだったヨザイネ。しかし、目の前にいるのは姿こそ違えど間違いなく自分が愛した人物。それを感じ取れたからか、彼女は彼に近づくように手招きし、地上を見下ろした。
「大きくなったろ、俺たちの子供は」
「えぇ。そうね」
頼もしく育ってくれた息子をようやく二人揃って見ることができて、彼女たちは幸せそうだった。
「天使の力というのはすごいのね」
そこにやって来る七頭のドラゴン。彼らはシリルの仲間である滅竜魔導士たちを育てたドラゴンたちだった。
「全員を生き返らせたのか?」
「一人残らず」
ヨザイネの生命エネルギー全てを駆使してこの戦争で命を落としたものを蘇らせた。だが、彼女はイグニールとメタリカーナの問いに首を振った。
「どうやら、全員ではなかったみたい」
彼女は天使だった頃の魔法を使い、湖の映像を切り替える。そこに映されたのは、赤紫色の髪をしたビッグテールの少女と、彼女に見守られたまま微動だにしない金髪の少年。
「時の歪みには、さすがの私も勝てなかったようね」
「じゃあナツたちは、そのヨザイネって人に助けられたってことなのね?」
「おぉ!!そうみたいだな!!」
その頃ナツたちは和気藹々とした雰囲気で会話をしていた。この戦争で命を落とした彼らは魂がこの世から完全に離れる前にヨザイネと入れ替わる形で地上へと戻された。その際彼女から謝罪を受けたものの、彼らは最大限の感謝を述べて地上へと舞い戻った。
「助けてくれたんだから謝ることないのにな」
「まぁ、あいつのせいで死んだやつもいたからだろうな」
ヨザイネに心の隙を突かれたグレイに殺されたリオンやジュビア、彼らに対しての謝罪だったのだろうが、彼らはこうやって戻らせてくれたことに感謝をしているため、絶対に恨むことはない。
「グレイ様、おケガは大丈夫ですか?」
「・・・」
手を差し出すジュビア。グレイはそれを無言で握り、立ち上がる。
「恐らく他にもたくさんの魔導士が生き返ってるはずよ」
「その全員のターゲットが・・・」
脳裏に現れる絶対的な悪。彼を倒さなければ、この先の未来はない。
「やってやるぜ!!んで!!その後はゼレフだ!!」
気合い満々でリュシーに続いて走り出したナツ。その後ろにスティングたちも付いていくが・・・
「・・・」
一人だけ、気付かれないように別の方向へと進んでいくものがいた。
「お母さん・・・ありがとう・・・」
自分のことをきっと見守ってくれていると空を見上げて感謝の言葉を述べる水竜。今までの絶望がウソのようにスッキリとした少年の表情を見て、その場にいた全員が笑顔になった。
「てかお前の母親幼すぎだろ」
「そりゃ~子供が大きくなれないわけだよね~」
「張り倒す!!」
ラクサスとセシリーの感想に思わず掴みかかるシリル。その時間さえも愛しく思えてしまうほど、彼らは絶望を味わってきた。
「さぁ、行きましょう。ティオスを倒すために」
未来の自分たちが生み出してしまった悪の成れの果て。それを止められるのは、自分達しかいない。それを実現させるために、彼らは目的地へと歩き始めた。
「ここは・・・」
その頃、カミューニたち同様にこの世に舞い戻った緑髪の女性は辺りを静かに見回していた。
「ランディ」
そこにやって来る金髪の女性。彼女だけではない。他にもティオスから殺されたアルバレス軍の魔導士たちがこの場に集結していた。
「あのヤロウ・・・絶対ぇ許さねぇ・・・」
「俺たちを殺したこと、後悔させてやる」
怒りで顔中に血管が浮き出しているアジィール。同様の表情を浮かべているジェイコブ、この二人は完全にティオスに怒りを持っていた。
「ランディ。私たちであいつを倒そう」
まだ心が決まっていないブランディッシュではあったが、ディマリアのあまりにも真剣な表情に、心が揺らいだ。
「私もそれには賛同だ。ティオスを生かしておくことはできない」
ナインハルトもこの場に現れていた。真っ先にティオスの手に掛けられた彼からすれば、その反応は当然である。
「俺は次こそアクノロギアをこの手で仕留めてみせる」
そう言ったのはアクノロギアに一撃でやられたゴッドセレナ。彼はティオスよりもアクノロギアの方が重要なターゲットになっていた。
「お前らの気持ちはわかる。だが、俺たちはティオスの敵になるってことは、陛下に逆らうってことか?」
そんな中冷静な意見を言うものもいた。ワールとブラッドマン、そしてラーケイドだ。
「父さんの敵になるなら、ただじゃおかないよ」
「我々と敵対することもわかっているのか?」
フィオーレの魔導士たちにやられた彼らからすれば、ティオスを狙うということはフィオーレの味方になるということ。それはアルバレス軍の魔導士としては本来なら許しがたい愚行なのだ。
「確かにそうだが、このままティオスを生かして置くわけにはいかないだろ」
「奴は陛下すらもその手に掛けうる存在だ」
真っ向から対立する両者の意見。一触即発の雰囲気・・・それを打破したのは、意外な人物だった。
「メンドくさい・・・」
そう呟いた声に全員が反応した。そこにはうんざりしたような目で仲間たちを見据えるブランディッシュがいた。
彼女は蔑むような目付きで全員を一瞥すると、どこかへと歩き出す。
「どこに行くんだ?ランディ」
彼女がどこに向かおうとしているのか、ディマリアが声をかける。すると、彼女は背を向けたまま立ち止まり、答える。
「やり残したことがあるの。借りを返さないと、私は先に進めない」
そう言って振り返ったブランディッシュは、今にも戦いを始めそうになっているディマリアたちに自分の考えを述べた。
「私はアルバレスの人間。今さらフィオーレに付くことはないわ」
「ランディ・・・」
彼女もワールたちと同じ考えなのかと残念そうにしているディマリアだったが、話しはそこで終わりではなかった。
「ただ、ティオスはアルバレスの人間ではないはずよ」
かつてアルバレス帝国に攻め入り、ゼレフが来たことで何とか収まったティオスと天海。彼らはスプリガン16に名前こそ連ねているが、ゼレフの味方をするわけでもなく、個人で戦っている。
「私は妖精の尻尾の子に借りがある。それを返さなきゃいけないの」
ルーシィに命を救われ、母の死の真実も知ることができたブランディッシュは、彼女にこの時だけ付くことを決意した。
「ティオスのことは陛下も警戒していたわ。だから温厚な彼があの子にだけ常に厳しく当たっていた」
何を目的にしているのか見せないティオス。彼だけは自由にさせられないとゼレフは彼にだけ厳しい態度を取ってきた。つまり、彼はフィオーレだけでなく、アルバレスにとっても脅威と言えるのだ。
「あなたたちがどうするかは自由よ。そしてそれは、私も一緒」
そのまま背を向けてその場を後にしたブランディッシュ。残された16のメンバーたちは、お互いの顔を見合わせて立ち尽くすことしかできなかった。
今いるだけでも十分な戦力が揃っていると言っても過言ではないカミューニたち。それに対するは片腕を奪われたことで満足に立っていることもできないティオスただ一人。
「終わったな、ティオス」
「降参するなら命までは取らんぞ?」
これまでの彼の行動を見れば許しがたい行為だが、それも彼なりの信念があってのこと。そうとなれば無闇に命を奪うようなことまではしないと思っていたが・・・
「その答えはNOだ」
ティオスは止血した腕を押さえながら、立ち上がってカミューニたちを見据えた。
「俺はここで引くほど甘い決意でこの場にはいない」
ここで諦められるほどのものであれば良かったのに、それほど弱い意志ではないことを伺わせるティオス。それを聞いたオーガストは、残念そうにため息をついた。
「一応とは言え、かつての仲間を葬らねばならないとは」
杖を向けるオーガスト。そこから放たれたのは空へと伸びるほどに大きな氷の波動。
それは瞬く間にティオスを飲み込んだ。
「なんてパワーだ!!」
「これが魔導王の力・・・」
オーガストのあまりの一撃に言葉を失う一同。だったが、彼の魔法が解けた直後の光景にさらに衝撃を受けた。
「完全には相殺できないか」
ティオスは倒れることなくその場に仁王立ちしていたのだ。それにエルザたちは驚愕したが、すぐにその理由を察した。
「あいつはスレイヤー系の魔導士。同じ属性の魔法は食べられてしまう」
オーガストの魔法は他者の魔法を一瞬でコピーするというもの。彼はティオスの魔法をコピーしたものの、それはこの場面での最善手ではない。
「オーガスト様。あなたは防御に徹してください。攻撃は私たちが」
相手の魔法を相殺することができるオーガストにティフェンスを任せ、他のものたちが徹底的に攻めに出る。それならば攻撃を相殺されることはない。
「全身体能力上昇・・・神の騎士!!」
ウェンディの付加により攻撃力が上昇した魔導士たちが一斉に襲い掛かる。それを避けようにも数が多すぎるため、ティオスは敢えて迎え撃つことにした。
「さっきの分、喰らいな!!」
真っ先に彼に迫ったのはソーヤ。不意を突かれてしまった先程の攻撃の借りを返そうと自らの持てる最速で迫る。
「お前がどれだけ速度を出しても無駄だ。俺は―――」
常人では捉えられない速度のはずのソーヤの動きをティオスは完全に見切っていた。迫ってくる彼の手を掴もうとしたティオス。しかし、その視界にわずかに入る二人の魔導士。
「換装・飛翔の鎧!!」
「流星!!」
ソーヤと互角の速度で迫ってきていたのはエルザとジェラール。ソーヤを掴もうとしていた左腕とは反対の・・・右腕で防ごうとしたが、そこにはもう彼のそれはない。
「ぐっ!!」
本来の動きとは程遠いティオスではこれを防ぐことなどできるはずもなく、簡単に三人の攻撃を浴びてしまう。
「ハァ!!」
バランスを完全に整えきれていないティオスは片膝を付いた。それを待っていたアイリーンは大気へと付加し、ティオスの肉体にダメージを与える。
「氷神の・・・」
防戦一方・・・いや、防御すら取ることができないティオスは怒りの表情へと変わっていた。だが迂闊に動けばまた足元を掬われる。それならばと青年は広範囲に広げられるブレスで反撃に打って出た。
「怒号!!」
当たれば一溜まりもない強烈な一撃。ではあった。だが、彼のそれはまるで別方向へと飛んでいき、誰のことも捉えることはできなかった。
「片腕を失うだけでここまで力が落ちるとは・・・」
「アクノロギアも一年前、左腕を失ったことで早々に撤退したからな」
今までの絶対的な王者が素人のようになってしまっていた。それだけ人間は・・・いや、生き物はこれまでとは異なるバランスになると、それを修正することができないほどに繊細なのだ。
「もうこいつを落とすのに時間は掛からない。終わりだ」
攻撃を放つことも避けることもままならないティオスでは、いかに巨大な魔力を保有していようと勝負にならないことは明白。戦いは決したかに思われた。だが・・・
「あと少し・・・あと少しだけ時間が欲しかった」
諦めたかに聞こえるティオスの声。だが、彼の見上げた大空から突然、何かが大きな音を立てて舞い降りてきた。
「なんだ!?この魔力!?」
「ひっ・・・」
現れたマントを羽織ったボサボサ髪の男の魔力に、エルザは視線を向け、ウェンディはガタガタと震え出した。
「まさか・・・もう来たというの?」
「時間切れ・・・か」
アイリーンとオーガストはその男を見て表情を曇らせる。この地に舞い降りたその男は、ニヤリと歯を見せていた。
「我は飽きた。この世界に飽きたぞ、黒魔導士」
漆黒の翼、アクノロギア。世界を破滅へと誘うその男がぶつかり合う魔力を嗅ぎ付けやって来たのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
カミューニたちの登場によりティオスが一気に堕ちるかと思いきやそうは問屋が卸しません。
ここにアクノロギアが現れる非常事態。さらには次からゼレフ辺りも出てくる予定です。たぶんね。
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