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レーヴァティン

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第六十三話 天津神の場所でその十二

「鉄砲どころか大砲だってな」
「効かないか」
「だからな」
「あやかしにはか」
「誰も攻撃しないんだよ、ましてやな」
「油を落としてくれるからか」
「出たら何処かに行くまでそこから先は通れないけれどな」
 それでもというのだ。
「油を落としてくれるからな」
「いいんだな」
「ああ、実は有り難い妖怪だからな」
 大量の良質の油、それを落としてくれるからだというのだ。
「いいんだよ」
「成程な、倒すよりもか」
「油を貰うんだよ」
 船乗りは英雄に笑って話した。
「じゃあそのあやかしのところにな」
「今から連れて行ってくれ、金はある」
 そちらの心配は無用だというのだ。
「渡し賃と他に必要なものはこちらで調べさせてもらってだ」
「払ってくれるかい」
「そうする」
「そこで言い値とは言わないんだな」
「金はあるが節約はする」
 このことは忘れないというのだ。
「何時どれだけ必要になるかわからないものだからな」
「しっかりしてるね、あんた」
「無駄遣いはしないだけだ」
「成程ね、あんた大物になるぜ」
 英雄の返事を聞いてだ、笑って応えた船乗りだった。
「強いだけじゃなくて金の使い方もわかってるなんてな」
「だからか」
「そうした奴は大物になるんだよ、金ってのはやっぱりな」
「大事なものだな」
「それの使い方がわかっているかどうか」
「それが大事だな」
「ああ、本当に出来てないとな」
 それこそというのだ。
「しくじるからな」
「いざという時に金がなくてな」
「俺みたいにな」
 ここで自分のことを話した船乗りだった。
「大きくなれないぜ」
「あんたもか」
「でっかい船が欲しかったんだけれどな」
「その船を買う金がなかったんだな」
「ああ、酒が好きでな」
「酒代に随分使ってか」
「それでなんだよ」 
 そのせいでというのだ。
「今の船のままさ、だからな」
「金の使い方をわかっていることか」
「俺みたいに暇があったら大酒飲んでるとな」
 そこで金を浪費すればというのだ。
「金なんて溜まらないからな」
「あんたそれだけか」
「ああ、あと博打もするぜ」
「それだ」
 英雄は博打と聞いて目を鋭くさせて言った。
「どうせ負けたら勝つまでやるな」
「よくわかってるな」
「そうした奴は金が溜まらない」
「俺もわかってるんだがな」
「大きな船を買いたいならだ」
「博打はか」
「するな」
 絶対にという言葉だった。
「あんたの性格を聞く限りこう言うしかない」
「そうだよな、やっぱり」
「大きな船を持ちたいならな」
「その分の金を溜めろか」
「博打をせずにな」
「そうだよな、これから気をつけるな」
「さもないと船は買えない」 
 船乗りが買いたいと思っている大きな船はというのだ。
「それが現実だ、欲しいものがあるならな」
「無駄な使い方はするな」
「そういうことだ、では今からな」
「ああ、小さな船でな」
「まずはあやかしのところに行くか」
「それから志摩に行こうな」 
 英雄達が行きたい国にというのだ、こう話してだった。
 一行は船に乗った、英雄はこちらの世界ではじめての本格的な船旅に出たのだった。


第六十三話   完


                2018・4・23 
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