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レーヴァティン

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第六十三話 天津神の場所でその十

「待っていてくれよ、ただな」
「ただ、だな」
「油が取れるのはいいんだがな」
「あんたの仕事はか」
「おいらの仕事はここから志摩への渡しだからな」
「それが出来ないからだな」
「それが出来ない間はな」
 どうしてもという口調の言葉だった。
「俺にしてもな」
「商売あがったりでか」
「どうにもだよ」
 微妙な口調での言葉だった。
「本当にな」
「そうか、しかしだな」
「ああ、倒してまでかっていうとな」
 あやかしを倒してまで仕事をする、それはどうかというのだ。
「俺はそこまではなな」
「しないんだな」
「だから油が取れるんだ」
 だからだとだ、船乗りは英雄に話すのだった。
「それならな」
「油は必要だからな」
「何かとな、しかもあやかしの油ってのはいいんだ」
「質のいい油か」
「料理に使っても灯りにしてもな」
「いけるか」
「しかもいい具合にな、だからな」
「あやかしを倒すことはしないか」
 英雄もこのことがわかった。
「そうするか」
「今はな、まあ妖怪が消えるまでな」
「待てということか」
「そうしてくれるか。数日経てば何処かに行くさ」
 その妖怪はというのだ。
「三日前に出て来たからな」
「あと少しか」
「待っていてくれるかい?」
 船で志摩まで行きたいならとだ、船乗りは英雄達に話した。
「そうしてくれるかい?」
「急ぐか」
 英雄は船乗りの言葉を聞いて仲間達に顔を向けて尋ねた。
「これからは」
「そう言われますと」
「急ぐかと言われますと」
 良太と謙二が英雄に最初に答えた。
「特にです」
「急がないですね」
「これといって」
「今の我々は」
「危急の話は伝わっていないでござる」
 智もこう言った。
「だからでござる」
「話聞いてたらあと数日で渡れる様になるし」
 妖怪がいなくなってとだ、耕平も述べた。
「そやさかいな」
「待っていいかと」 
 峰夫もこう言った。
「特にであります」
「そうっちゃな」
 愛実も言ってきた。
「急がないし待つのもいいっちゃよ」
「その間この街も見ておくといいかのう」 
 当季は波止場だけでなくそこから街も見ていた。
「これも何かの縁ぜよ」
「それならです」
 最後に紅葉が言った。
「船が出るまでの間この街を見ていましょう」
「全員そう思うか。それならだ」
 英雄も頷いた、そうして船乗りに顔を戻して彼に話した。
「俺達は今はな」
「待つかい?」
「そうする、急ぐ時になれば」
「その時はかい」
「また急ぐ」
 そうするというのだ。
「その時はな」
「そうか、それじゃあな」
「その妖怪を見るのも一興だが」
 あやし、この巨大な妖怪をというのだ。 
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