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329部分:第二十五話 キャンプファイアーその一


第二十五話 キャンプファイアーその一

               第二十五話  キャンプファイアー
「そんなことがあったんだ」
「そう」
 椎名が赤瀬に話していた。今二人は教室にいる。手早く後片付けをしたので今は元の教室に戻っている。喫茶店だった名残はない。
「危なかった」
「あいつ、やっぱり」
「それでだけれど」
 椎名はここで赤瀬に問うた。今教室にいつのは彼等だけだ。
「そのあいつは」
「ああ、言った通り放り出しておいたよ」
「そうなの」
「学校の裏手にね」
 そこにだというのだった。
「丁度そこにお巡さん達がいてくれたから」
「呼んでおいたから」
「相変わらず用意がいいね」
「事前に準備しておけば何でもできる」
 椎名はこのことがよくわかっていた。少なくとも某国の赤い官房長官よりは遥かに、いや比べ物にならないまでわかっているのだった。
「だから」
「その通りだね。じゃああいつはこれで」
「そう、終わり」
 まさにそうだというのであった。
「多分少年院に送られて」
「全然反省しないで出て来るかも知れないよ」
「そうはならない」
「あいつが反省するっていうのかな」
「それはない」
 赤瀬の今の言葉にはすぐに首を横に振って答えた。
「ああいう奴はそれは絶対にない」
「じゃあ何でそうならないっていうの?」
「多分送られるのは」
「うん、だから少年院だよね」
「網走超高等少年院」
 何とも剣呑そうな名前の少年院だった。
「あそこまで悪い奴はそこに送られる」
「網走なんだ」
「そこに入れられたら終わり」
 そうした恐ろしい場所だというのだ。世の中恐ろしい場所は幾らでもある。
「十年で出ても」
「うん」
「出た瞬間に闇業者が来てどっかの国で地雷処理に出される」
 物騒な話であった。椎名はその物騒な話をいつもと変わらない無表情で話す。
「歩いて」
「ええと、歩いて?」
「そう、応援団付きで」
「応援団ってどんなの?」
「後ろで機関銃持ってる応援団」
 さらに物騒な話になっていた。少なくともそこに人権やそういったものが欠片程もないことは赤瀬も聞いているだけでわかった。
「そうした場所に送られるから」
「それって中東とかその辺り?」
「多分。そうして消えていくから」
「恐ろしい話だね、それって」
「悪党に生きる資格なし」
 ここでも何処かの拳法の伝承者みたいなことを言う椎名だった。
「そこまでしていい」
「地雷原歩いてもだね」
「噂では他にもある」
 椎名はここでまた言った。
「そう、こっちも凄い」
「凄いってどんなのかな」
「内臓牧場」
 その言葉だけで血も凍る単語であった。
「それ」
「ええと、考えたくないけれど」
 赤瀬の常識の中ではだ。それは最大限におぞましい話だった。つまりそれは。
「あれ?臓器売買の?
「そう、ドナーになる」
「やっぱりそうなんだ」
「噂じゃ高く売れる」
 実際に臓器売買はかなりの闇ビジネスになっている。それにまつわる黒い噂や不気味な都市伝説も後を絶たない。実際にある話もそこにあるのだ。
「それもかなり」
「内臓がねえ」
「角膜とかそこも」
 つまり目であった。
 
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