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ドリトル先生と奇麗な薔薇園

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第五幕その九

「僕も薔薇はね」
「そうだよね」
「だからお家の中も薔薇で満たしたんだね」
「そして先生にもプレゼントしてくれたんだ」
「うん、実はある人がお家に来るんだ」
 王子は皆にさらにお話しました。
「エジプトの由緒正しい家のお嬢さんがね」
「エジプト?」
「あの国の」
「そう、そのお嬢さんは薔薇が大好きで」
 その人もというのです。
「それでなんだ」
「王子は薔薇をお家の中で一杯にしてるんだ」
「そうしてその人をお迎えするの」
「そうするんだ」
「そう、クレオパトラみたいにね」
 笑ってです、王子はそのお嬢さんのお国の歴史に出て来るあまりにも有名な女王様の名前を出しました。
「僕はそうするんだ」
「クレオパトラもそうしたね」
 先生は王子の今のお話に笑みを浮かべて応えました。
「ローマの将軍アントニウスを迎える時に」
「そうだったよね」
「そう、クレオパトラは船だったけれど」
「その船の甲板を薔薇のお花で満たしてね」
「そうして迎えたね」
「そのクレオパトラみたいにね」
 まさにというのです。
「僕もそうしてみたんだ」
「素晴らしい演出だね」
「そうだよね」
「うん、古代エジプトやローマを思わせる」
「僕もそんなイメージだよ」
「本当にいいよ、ただ日本では」
 先生は今自分達がいるこの国のことを思うのでした。
「それはないんだよね」
「あっ、花びらをお家や船に満たすことは」
「しないよね」
「うん、そうだね」
 王子も頷くことでした。
「日本ではしないね」
「自然に花園とか並木道は作ってもね」
「そうしてもね」
「お屋敷や船の甲板を花びらで満たすとか」
 そうしたことはです。
「しないからね」
「クレオパトラみたいなことは」
「また違うんだ」
 そうしたことはしないというのです。
「日本の花の愛で方はね」
「そうだよね、薔薇にしても」
「最近ではお風呂に恋人と一緒に入る時に薔薇の花びらでお風呂を埋め尽くす人もいるけれど」
「そうした人は少数だよね」
「うん、それでね」
 そうした人はいてもというのです。
「やっぱり基本はね」
「見て愛でるか花瓶に入れて」
「そうして見て楽しむよ」
「それが日本人だね」
「薔薇についてもね」
「エジプトやローマとは違うね」
「ローマに負けない位の歴史がある国だけれど」
 それでもというのです。
「また違う文明だからね」
「お花の愛で方もだね」
「そうなっているんだ」
「そうなんだね、しかし日本人と薔薇は」
「あまりつながらないんだね」
「どうもね」
 王子としてはというのです。
「日本人は桜が第一でね」
「お花はね」
「梅や桃、菊があって」
 こうしたお花達が日本では多くそしてよく愛でられているというのです。
「百合や菖蒲、菫とかがあって」
「そしてだね」
「薔薇は欧州からのお花で」
 それでというのです。 
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