空に星が輝く様に
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313部分:第二十三話 嫉妬と憤怒その七
第二十三話 嫉妬と憤怒その七
陽太郎はそれを受けてだ。すぐに何か察した。
「こういう蒟蒻とかさ」
「あっ、わかりますか」
「こういう場所での定番じゃない」
だからわかるというのである。
「蒟蒻で驚かすのって」
「ううん、考えて作ったんですけれど」
「あれだろ?上から吊るしてさ」
「そうです、それもわかるんですね」
「わかるよ。後は」
前の薄のところから出て来たのは。幽霊だった。
「うらめしや〜〜〜〜」
頭に三角巾を着けてざんばら髪で青い顔をしている。何処からどう見てもだった。
陽太郎はその幽霊を見てだ。また月美に話した。
「これもさ」
「おわかりなんですね」
「俺実はこういうの平気なんだよね」
そうだとも話すのだった。
「幾ら見てもそんなに驚かないし」
「じゃあもっと怖いものにすればよかったかも」
「悪いけれどね。けれど怖がる人は怖がってるみたいだね」
あちこちから悲鳴が上がっていた。男女共にだ。
「じゃあやっぱりここは怖いよ」
「だといいんですけれど」
「まああれだよ」
陽太郎は笑顔で月美に話す。
「学校のお化け屋敷でそんなに怖くてもさ」
「おかしいですか?」
「おかしくはないけれどやっぱりそんなに凝れないしさ」104
だからだというのである。
「それに」
「それに?」
「人によって怖いと思う対象も違うし」
「そういえば私は」
月美は陽太郎の言葉を受けて視線を上にやった。右の人差し指を唇にやってそのうえで言うのだった。
「ゾンビが怖いです」
「ゾンビっていうと」
「はい、バイオハザードです」
まさにそれであった。ゲームのあれだ。
「ですからあのゲームは」
「してないんだ」
「どうしても抵抗がありまして。エイリアンとかは平気ですけれど」
「あれも気持ち悪いよな」
「けれどあれは平気なんです」
そうだと陽太郎に話すのだった。
「他には十三日の金曜日も」
「あれもなんだ」
「オーメンは嫌な感じがしましたけれど」
「あれっ、月美ってまさか」
彼女の話を聞いていてだ。気付いたのだった。
「ホラー映画とか好き?」
「そういう小説も好きです」
まさにそうだというのだった。
「怖いのは昔から」
「そうだったんだ」
「最近は小泉八雲も読んでますし」
「ラフカディオ=ハーンだったかな」
「はい、凄く奇麗で怖い話が多いんですよ」
日本に来てその美しさに魅せられた人物である。そして心まで完全に日本人になりただひたすら日本を愛した。そうした人物である。
「雪女の他にも色々なお話がありますよ」
「そうか、小泉八雲もだったんだ」
「他にはポーも読んでます」
今度は外国文学だった。
「魯迅も」
「あれっ、魯迅の本って怖いんだ」
「怖いですよ。私魯迅はホラーだと思ってます」
「そんなに怖いんだ」
「剣を打つ話とか」
具体的な作品の名前も出て来た。
「薬も。人の血を饅頭に浸して食べるお話でして」
「確かにそれって怖い感じだよな」
話を聞けばそれで感じ取れることであった。
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