ねここい
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第5話
前書き
蔵原竜太君のお兄さんはイケメンです。
何とか巨大猫4匹の恐怖から逃げ帰ると、俺の部屋には化け=猫が寛いでいた。
ベッドに寝そべり勝手に俺のマンガを読んでいる。
親父の酒のつまみ……さきいかを頬張りながら。
何やってるんだ!?
如何いうつもりだ、コイツ?
「よう、お帰り。如何だった学校は?」
「うるせぇ。何なんだこの状況は!? 本当に女神様の力とお前の呪いで、生涯の伴侶候補が猫に見えてるのか!?」
「お前はアホなのか? 昨日そう言ったじゃろう」
俺よりアホに見える化け=猫に『アホ』呼ばわりされるのは腹立つ。
「ふざけんな! あんなの怖くて口説けるか!」
「にゃにを言う。猫じゃなくたってヘタレの貴様に女は口説けんじゃろ。一生童貞でいる言い訳が出来たじゃろ? 感謝せよ!」
「ふ、ふざけやがって……」
「にゃはははは。悔しかったら猫女でも口説いてみんしゃい(大笑)」
く、くそぅ……確かに俺には女を口説く度胸も技術も存在しない。
「あ、そうそう……昨日言い忘れてたけど、お前に掛けた呪いは半年で解除不能になるからニャ」
「は、半年ぃ!?」
半年って一年の半分って意味か!?
「そうニャ。今が4月だから10月の終わりまでに猫女の1匹に告白して、OK貰わニャいと呪いは永遠に解けないニャ(笑)」
「お、おま……10月末って……それまでに恋心を育む重大イベントがなさ過ぎるぞ! 大体告白とかって、2月のVDか3月のWDだろ!」
「どうせ貴様にはVDもWDも告白できんニャ。ガタガタぬかしてないで覚悟を決めるニャ」
言い返せないのが腹立つ!
「じゃぁそういう訳でアチシは帰るニャ」
コイツ、本当に何しに来てたんだ?
「あ、そうニャ……さきいか食べ切っちゃったから、買い足ししとくニャ」
ふざけるな! 何でお前の為に……
そう言うとマンガ数十冊を読み散らかして窓から出て行ってしまった。
もう片付ける気力も起きない俺は、マンガ本をベッドの端に寄せて俯せで横たわる。
どうすりゃ良いんだ?
世の中は広いし、俺の生涯の伴侶が4匹……もとい、4人だけって事は無いだろうけど、他を探した所で全部巨大猫に見えるわけだから、どのみち怖いだけ。
つまり俺が将来結婚する為には、現状の4匹……じゃなかった、4人を口説かなきゃならないわけで……
唯でさえ女性を口説くなんて不得意なのに、対象が巨大猫なんて難易度高すぎ!
今日知り合った蔵原みたいに女性を口説く術があれば、もう少しは何とかなりそうだけど……
いや、でも相手は巨大猫だしなぁ……
でも俺にはそう見えてるだけで、本来は普通の女の子なんだよなぁ……
蔵原も4人が美女だって言ってたしなぁ……
慣れるしかないのか?
って言うか、あの4匹……違った、4人の中の1人を口説き落とさないと、俺の呪いは永遠に解除されない。
つまり……仮に高校卒業後、巨大猫に慣れて女性を口説ける様になっても、結婚まで行き着く相手は巨大猫のまま。
更に言えば、結婚出来ても嫁は巨大猫のまま……
それはヤバいぞ!
巨大猫が怖いとか言ってる場合じゃねー!
俺は徐に起き上がると、机の上のパソコンに向かい起動させる。
立ち上がるやインターネットで猫の事を調べまくる。
不慮の事故で猫好き認定されちゃった訳だし、多少は詳しくないと支障をきたすだろう。
幸か不幸か俺の生涯の伴侶候補である4匹……間違えちゃダメだ、4人は猫好きらしいし、外見が俺に判らない以上、好きな物から攻めていかなきゃならない。
判る範囲でも好感度を上げていかなきゃならんだろう。
うん、そうだ。
蔵原の言動をよく観察して参考にしよう。
アイツの様にまでは無理でも、俺にだって真似出来るところがあるかもしれない。
だから俺は猫の事を調べ上げる。
姉が「おい馬鹿弟。夕飯だって声が聞こえないのか?」と部屋に怒鳴り込んでくるまで時を忘れて調べてた!
食後も猫の事を調べようと考えており、食事時の会話を憶えてない。
いや……姉が進級して新しいクラスの事を愚痴っていた事だけは憶えてる。
何故なら姉も俺と同じ高校で、しかも新たなクラスメイトに『蔵原 龍太』と言う男が居ると言ってたからだ。
蔵原の兄か?
姉が言うにはクラス中の女子(姉を除く)がキャーキャー言うくらい美男子らしいのだが、当人は『女に興味ない』的にスカした奴らしい。
蔵原の兄だったら女好きかな?
同姓のってだけの他人かな?
兄(かもしれない)の事を聞いて、俺に姉が居る事が知られて、女好きの蔵原に『紹介しろ』と面倒臭い事を言われたくないから、秘密にしておこう。
何せ俺の姉は、特殊な性癖でも無い限りそれらの対象にはならない女だから、誰にも言いたくない。
中学時代、俺の姉の事を何一つ知らない友人が『姉ちゃんが居るのか! じゃぁ着替えを覗いたり、パンツを盗んじゃったりしてんのか? 羨ましいなぁ!』と俺をからかってきた。
だが想像をしただけで吐き気がする事を言われ、数日口をきかなかった事がある。
せめて外見だけでももう少しマシなら、俺だってオカズにしてたかもしれないけど、容姿も悪けりゃ性格も最悪とくりゃぁ健全な思春期少年の発電道具にはなり得ない。
本人には絶対に言えない。
性格が悪い上に凶暴だから……
さて……
高校生活2日目だ。
先ずは巨大猫に慣れないと!
幸運なことに先方からの好感度はそれ程低いとは感じない。
猫好きアピールが効いてるのか?
今日も、休み時間や下校前に俺の席付近へ集まって猫談義に勤しんでいる。
美少女(だと思われる)方々が集まってきて、蔵原の饒舌さも拍車がかかり、学びたい俺には絶好の教材になってくれてる。
だが3組のHRが終わり、彼女さんが向かえに来ると俺の特別授業は終了する。
彼女さんに何やかんや文句を言いながらも、イチャイチャ(彼女さんからの一方的なやつ)をしながら帰って行く。
羨ましいなぁ……
「ねぇ先生。蔵原の彼女……真田さんって、本当は男だって3組の友達から聞いたんだけど、本当?」
え、嘘!?
だ、だって……あんなに可愛いんだよ? 男とかあり得なくない!?
アメショの佐藤さんから、とんでもない情報を聞かされ驚く我々。
三毛猫先生も驚いてる様に見えるが……
「……って私も教頭先生や校長先生から聞いてるわ。手術とかは完全に終わってって、何処から如何見ても女の子にしか見えないらしいけど、本当は……」
マジかぁ……
だから女好きの蔵原が『彼女じゃ無い』と言うのか……
そう言えば始めて会った時に彼女さん(?)も『今はね……』と思わせぶりなことを言ってたのかぁ……
「良い。以前は性同一性障害に苦しんでたらしいの。でも今は家族や蔵原君のお陰で、苦しみから解放されたらしいから、無闇に今の情報を広げてはダメよ。真田さんだって幸せになる権利はあるんだからね!」
そ、そうか……そりゃそうだよね。
普通、完全に男だった時の事を知ってれば、あんなに抱き付かれたりしても邪険に扱ってしまうかもしれないけど、蔵原は困りながらも絶対に酷いことは言わないし、邪険にしたりはしてない。
女好きではあるが優しい奴なんだと知った。
でもあんだけ可愛ければ……
俺だったら……
う~ん……やっぱり羨ましいぞ!
後書き
幸ちゃんの事は公然の秘密的な扱いになってます。
外見は完全に女の子なので、男子と一緒の更衣室では着替えが出来ません。
とは言え女子に無断で同じ更衣室を使わせておくと、
後でバレた時に問題が大きくなるから、
最初から報告だけはしておいてるんですね。
それと、蔵原龍太君は女に興味ない訳ではなく、
奥手なオタクな為、女子達の反応に対応出来ないんですね。
弟と性格が反対だったら、今頃ハーレムを作ってるはずです。
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