見える世界は、私にとって・・・
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序章
孤高の剣士
前書き
「俺が、破滅の脅威を止めてみせる」
一人の青年は、王に誓う。
「イトゥラセン」。
それは、全ての命が平等に扱われる平和な王国。
生物は生きる。自然と共に。
人々は笑う。喜びを胸に。
生命は輝く。星の様に。
お伽噺の様に、平和な王国。
破滅の光が、現れるまでは。
謁見の間。厚く重い扉が鈍い音を立てて開く。
鎧を着た男性二人に続く様に、一人の青年が謁見の間に入る。
ボサボサな黒髪、青い瞳の、どこか威圧を感じる青年。
青年が謁見の間の中央に立つと、鎧の男性達は早々と扉から出ていった。
扉が閉まる音が止むと、青年は口を開いた。
「俺はエレト。エレト・ディシア。
お前か? この国の王は」
男性は低い声で、黄金の玉座に座る若き王を指差した。
金色の刺繍を施した赤いローブの王は、玉座から立ち上がる。
「お逢いできて光栄です、エレト殿。
如何にも、私こそがこの国の王でございます」
王はエレトの前まで歩くと、丁寧に御辞儀をして、微笑んだ。
「貴方がこの国に来て下さったと言う事は、
私の……この国の頼み、忌まわしき魔女を倒して下さるという事ですね」
「……頼まれたからじゃない」
間髪を入れずに返された返事に、国王は驚いた様子を見せる。
驚いた国王を無視して、エレトは話を続ける。
「この国は俺にとっての故郷でもあるからな。
魔女が昔現れて、それから国は暗くなった。今は喜びを感じる事さえも鈍ってきているじゃないか。
俺は、魔女が許せない。それだけだ」
「……そうだったのですか。貴方の思いはよく分かりました。
魔女がいる深淵の森は危険です。此方で何も用意する事が出来ず誠に申し訳ありません。
……無事を、祈っています」
王が祈るかの様に、エレトの前で手を組み、額に当てる。
エレトは黙ってその様子を見ていたが、踵を返して扉へ向かった。
そして扉の目の前に来た所で立ち止まり、少しだけ振り返る。
「俺が、破滅の脅威を止めてみせる」
静かに告げると、扉を開けて出ていった。
国を出るまで、エレトは振り返らなかった。
「(魔女は……民を殺す時、笑っていたんだな)」
心の中で、エレトは呟く。
幼い頃、エレトは一度だけ深淵の森を訪れた。
子供の純粋な好奇心を押さえる事なんて、中々出来ないだろう。
その好奇心一つで深淵の森へ立ち入り、道が分からなくなり、途方に暮れた過去。
あの時彼は、森へ入るべきでは無かった。
彼の前に現れたのが、
破滅の光を司る、あの魔女だったから。
夢の様で、夢じゃない。
あの時覚えた、あの恐ろしさは、恐怖は、嘘じゃない。
全て、本当の事だ。
「…………」
森で出会ったのがあの魔女だと知ったエレトは、
魔女を倒して国に再び平和をもたらすべく、剣士の道を選んだ。
今のエレトは、歩み続ける最強の剣士。
振り返らずに、前だけを見て歩む、孤高の剣士。
国の為に、己の為に、エレトは深淵の森へ向かう。
後書き
序章として、今回の主人公である剣士エレトが登場しました!
深淵の森へ向かうエレト・・・・その先で起こる出来事とは?
次回に、ご期待ください!
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