ハルケギニアの電気工事
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第28話:課題消化!(その3:2大精霊登場!怒濤の池作り!?)
前書き
これで上級精霊4体が出そろいます。ますます賑やかになるエドワード君の周りですが、さて・・・
お早うございます。アルバートです。
昨日起きたことを羅列すると、
1.休憩していたら風の上級精霊が来て、少し話しをしたら、話の流れで『ジン』という名前を付けることになりました。
2.『清掃課』と正式に活動させるため、ギュンターさんという火のラインメイジにお願いして、課長に迎えることが出来ました。
3.コックのモーリスさんがガリアから来てくれました。すごい行動力で素早く来てくれたので、早速今日から食堂開業の準備を始めて貰います。
4.防毒マスクが出来ました。これで『保健衛生局』全体の活動準備も完了です。
なんてことになります。
さて、朝、気持ちよく目が覚めて、精霊達に囲まれて日課の訓練をしてから、家族で朝食を取りました。朝食後の団欒で昨日あったことを報告しましたが、メアリーが『ジン』の素晴らしさを話せば、父上は『ジン』に会いたかったと残念そうに言われ、母上からはモーリスさんが来たことで、食堂の料理を食べてみたいと言われました。
朝食後は『部長室』に行って、昨日の続きの書類決済を行っていると、ゾフィーさんが来ました。また書類を持っていますね。
「お早うございます、アルバート様。昨日の内に確認した書類です。決裁をお願いします。」
すっかり秘書さんモードですね。『事務局』の制服と合わせて、良くお似合いです。
「お早うございます。解りました。そこの未決済受けに入れておいて下さい。それから、こっちの決裁済みは持って行って良いですよ。」
「まあ、ずいぶん沢山出来ていますね。昨日も忙しかったようですが、ちゃんと休まれていますか?」
「ええ、休養はしっかりとっていますから大丈夫ですよ。昨日は少しイレギュラーが有りましたが、特に問題はありませんでしたから。」
「イレギュラーですか?何か面白いことでもありましたか?」
面白い事ってどんなことだろう?確かに、上級精霊が見られるなんて面白いことかもしれないけれど、来られる方は結構気疲れするんだけどな。
「面白い事って言うか、仕事場での作業が一段落したので外で一休みしていたら、風の上級精霊が来て、ちょっとした騒ぎになった位ですね。」
「ええ?風の上級精霊ですか?そう言えば、何か外が騒がしいと思っていましたけど、そんなに凄いことが起きていたんですか?失敗しましたわ。見に行けば良かった。精霊なんていつ見られるか解らないのに惜しいことをしました。」
何か、凄くがっかりしていますね。確かにかなりの見物かもしれませんが、普通の人は近くに来る事も出来ないと思いますよ。母上でさえ、『ジン』が帰るまで僕の所に来られませんでしたからね。
「まあ、そんなに気を落とさないで下さい。その内、また来ることもありますから。それにあと2体、まだ来ていない上級精霊がいますから、近いうちに来ると思いますよ。その時ゆっくり見ればいいじゃないですか。」
「本当ですか?それでは、今度来た時には知らせて下さいね。お願いします。」
やっぱり娯楽が少ないせいでしょうか。みんなこういったイベントがあると、食いついてきますね。
その後、ゾフィーさんと一緒に『事務局』の方に顔を出して朝礼&ミーティングに参加してから、『保健衛生局』にも行きました。ウイリアムさん達に、『清掃課』に来て貰う火メイジがギュンターさんに決まったことを伝えて、来週から『清掃課』の業務を開始するように指示を出しました。
それから、僕は屋敷の前庭に移動して、昨日母上から許可を貰った池作りに掛かりました。
場所は昨日考えた通り、前庭にあるロータリーの東側です。ここは前から少し暗い感じの木が多くて、鬱陶しいと感じていましたから、この際広めに木を切って大きな池を作ってしまいましょう。
やり方は何時もと同じです。まず、身長3メールのゴーレムを5体作って、必要な範囲内の木を引っこ抜いていきます。
意識しなくても『ノーム』が手伝ってくれるので、ゴーレムも魔力を殆ど使わないで出来てしまいます。まだ作った事はありませんが、今なら父上の作るゴーレムよりも大きなゴーレムを作る事も簡単にできそうです。
こうして抜き取った木は一旦森側に置いて、後で薪に出来る大きさに切って乾燥させておきましょう。
次に、池の部分の土を使ってゴーレムを作り、南側に歩かせて20メール位の所で土に戻します。これを何回か繰り返すと直径15メール、深さ1.5メールの池が出来ました。
池の南側には大きな土の山が出来たので、今度はこの土を練金して30サント位の石を沢山作ります。そして、その石を伐採用に作ったゴーレムに、池の廻りと中心部を覗いた底一面に、しっかりと敷き詰めさせました。
残った土の一部で、池の東側に50サント位の高さで適当に土台を作り、池の部分にあった芝を張り、伐採した木を練金で加工して東屋を建てました。柱4本に屋根が有るだけの簡単な物ですが、ベンチも作って置きましたから、散歩の時の休憩所といった感じです。
最後に残った土は、またゴーレムにして屋敷の裏まで歩いて行かせ、そこで土に戻して山にしておきます。何かで必要になるかもしれませんから取っておきましょう。それにしてもゴーレムって便利ですね。
後は池の周りの芝生を整えて、これで池の形は出来上がりました。後は水を入れるだけです。
ずっと手伝ってくれた『ノーム』に聞いてみましょう。
「『ノーム』。この池に水を貯めたいのですが、ここの下に地下水脈は通っていますか?」
『ノーム』は集まって、何やら話し合っているように見えます。少しすると『ノーム』たちが此方を向いて、顔に見える所を横に振りました。
「この下には地下水脈はないのですね?」
そう聞くと、『ノーム』は顔を縦に振ります。どうやらこの下には無いようですね。そうすると屋敷の井戸水はどこから来るのでしょう。
行ってみた方が早いので、屋敷の西側にある井戸に行ってみました。井戸の廻りには『ウンディーネ』がいます。やっぱり水のある所に居るんですね。
「『ウンディーネ』。この井戸の地下水はどっちの方から流れてきていますか?」
そう聞いてみると、『ウンディーネ』達が井戸から北東に向かって並びました。どうやら並んだ下を水脈が流れているようですね。あっちの方向から流れてくると言うことは、池から見ると50メール以上離れていることになりますね。ちょっと水を引くのは難しいかな?失敗しましたね。先に水脈を確認すべきでした。
『ウンディーネ』にお礼を言って、池の所に戻ります。
池の側に座り込んでどうしようかと悩んでいたら、池の中心の石を置かなかった土の部分が盛り上がってきました。『ノーム』が嬉しそうに飛び跳ねていますから、これは土の上級精霊のお出ましでしょうか?
丁度通りかかった執事さんに、『事務局』と母上達に土の上級精霊が来たことを伝えるようにお願いして、そのまま待ちます。来たら教えるという約束でしたからね。
少しすると、全身茶色でごつごつした感じの巨人が現れました。大きな土ゴーレムといった感じでしょうか。でもちゃんと目や鼻や口がありますから、やっぱり見た目は大違いです。
[お前が我が眷属に名前を付けたという人間か?]
他の上級精霊と同様に大きな声ですね。ちょっとくぐもっていてゆっくりとした話し方なのは、普段土の中にいるせいでしょうか?
「はい、確かに私です。私の名前はアルバート・クリス・フォン・ボンバードと申します。貴方は土の上級精霊ですか?」
[おまえ達人間の言い方をすればそうなるのだろう。ところで、昨夜、儂が山の上で月を見ながら風に吹かれていると、風の奴が来てな。話しを聞けば、我らの眷属だけでなく、風や火の奴らにも名前を付けたそうだな。]
山の上で月見ですか?意外と風流なのかな?風流な土の上級精霊?なんだかな~??
「ええ、まあ、そういう事になりますね。成り行きというか、その場のノリとでも言いましょうか、火と風の上級精霊にはそれぞれ名前を付けさせて頂きました。」
[そうか。我が眷属に名前を付けた事には特にいう事はない。眷属共も喜んでいるようだからな。それは良いとして、どうだ、ついでにと言ってはあれだが、儂にも名を付けてみんか?]
やっぱりそう来るんですね。こんな事になるとは、アルメリアさんも判らなかったでしょうから、今度有った時に話したら驚くでしょうね。
「それでは、『ラサ』という名前を贈らせて頂きます。土の精霊王という意味の名前です。」
[ほほう。それは良い名だ。確かに、その名前貰ったぞ。ところで、この丸い穴は何だ?]
「この穴は、池を作ろうと思って作った物です。この屋敷には井戸が一つ有るだけで、川や湖が無いので『ウンディーネ』が自由にいる場所がありません。そこで、『ウンディーネ』が居られる場所にと思いました。」
[『ウンディーネ』とは水の眷属のことか?それにしては、水の気配がないがどうしたのだ?]
「実は、ここまで作ったのですが、調べてみた所地下水脈が少し離れた所を通っていて、ここまで水を引くことが出来ない事が判ったのです。それで、どうした物かと思案しておりました。」
「ふむ。なるほど、水の道は大分北の方にあるようだな。どれ、あそこまで道を作ってやるか。]
そう言うと、『ラサ』は右手を軽く動かしました。見る見るうちに池の真ん中に穴が開きます。その後、池から北の方に向かって軽い揺れを伴う地響きがしました。どうやら、池から地下水脈まで水路にする穴を掘ってくれたようです。
[こんな物か。これで水の道が出来た。]
「有り難うございます。本当に助かりました。」
[なに、対した事ではない。ついでに水の出口も作っておいてやったから、どんなに水が入ってきても池から溢れる事はないだろう。それよりも、道が出来たので水の奴が来るぞ。心して相手をするが良い。]
水の出口って排水溝ですか?忘れてましたね。あのままだったら池があふれて、この辺り一面水浸しでした。助かりましたよ。ところで、今水の奴って言いましたよね?それって水の上級精霊のこと?いきなりの上級精霊の揃い踏みですか?
なにやら、池に出来た穴から「ゴゴゴゴゴ………!」と腹の底に響くような音がしてきたと思ったら、水の柱が池の真ん中に立ちました。高さ5メールの天然の噴水ですか?太陽の光で虹が出来ました。綺麗ですね。チラッと屋敷の方を見ると母上やメアリーの他に屋敷の人のほとんどが来ているようです。『事務局』の人たちも来ています。良かったですね、この人達が上級精霊さん達ですよ~。
凄い勢いで池に水が溜まっていきます。あれだけ、どうやって水を引こうか悩んだのが馬鹿みたいです。
やがて、池が一杯になった頃、噴水の勢いが収まってきました。どうやって排水しているのか判りませんが、水は池の縁から少し下の所で上昇を止めています。
そして、噴水が止まるかな?と思ったら、今まで噴水が有った所に水色の女性の姿をした精霊が現れました。他の上級精霊は男性に見えましたが、水の上級精霊が女性のようですね。確か呼び出した相手の姿を写して現れると思いましたが、今回は誰も呼んでいません。確かに女性の姿なのですが、いったい誰を模しているのでしょうか?
姿が安定した時、視線が『ラサ』の方を向きました。
[土の。お前が道を通してくれたようだな。礼を言おう。]
[なに、大した事ではない。今し方、此方の人間に名前を貰ったので、その礼の代わりにやった事だ。]
すると、今度は僕の方を向いて言いました。
[お前が我が眷属に名前を付けた人間か。我はラグドリアン湖に住まう者だ。]
ラグドリアン湖が出ましたね。モンモランシ家の管轄ですが、こんな事になっているなんて知らないでしょうね。それにしても、ラグドリアン湖からここまで、どんな経路でやってきたんでしょうか?もしかしたら世界中の地下で繋がっていたりして?
「初めまして。私がアルバート・クリス・フォン・ボンバードです。貴方の眷属である水の精霊に名前を付けた者です。勝手な事をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
[ふむ。なかなか礼儀を弁えた子供だな。この池は我のための物か?その気遣いに免じて不問に付す。]
「有り難うございます。池の具合はいかがでしょうか?」
[日当たりも良いし、深さも上々だ。なかなか良い作りであるぞ。気に入った。]
「それは良かった。いつでもいらして下さい。」
[ちょくちょく、寄らせて貰おう。ところで、風や火の奴らに名前を付け、今また土にも名を付けたというのだな?]
上級精霊の間だって、横の繋がりが結構あるのでしょうか?どうしてこんなに情報が早いのでしょう?
「土の上級精霊には先ほど『ラサ』という名前を贈らせて頂きました。」
「ほう。『ラサ』か、良い響きだな。それで、当然我の名前も既に考えておるのだろうな。]
おっと。当然と言われましたね。かなり期待しているようですが、上級精霊の間では名前を付けるのがトレンディになっているのでしょうか?
「はい。もうそろそろ来られる頃かと思い、考えさせて頂きました。『クウィンティ』という名を贈らせて頂きたいと思います。」
[『クウィンティ』か。それはどんな意味があるのかな?]
「水の精霊王の意味があります。いかがでしょうか?」
[気に入った。その名貰うとしよう。何か用事がある時はその名を呼ぶと良い。]
「有り難うございます。これからよろしくお願い致します。」
[[解った。また会おう。]]
『ラサ』と『クウィンティ』は、揃って言うと土と水の中に消えていきました。
これで全ての上級精霊とのイベントは終了ですね。肩が凝りました。結局みんなお友達になってしまったようですが、モンモランシ家は大丈夫でしょうか?
張りつめた気が抜けて、やれやれ終わったと座り込もうとしたら、後から羽交い締めにされました。
「アルバート!!呼んでくれて有り難う~!!一度に2人も精霊にあえるなんて、凄いわ!」
「お兄様!凄いです!あれが精霊さんなんですか?」
「アルバート様!私、生きている間に精霊にあえるなんて思いませんでした。約束守って頂いて感激です。」
その他大勢の喚声で耳がおかしくなりそうです。母上、首が絞まっています。苦しいですから話して下さい。し・死ぬ~!?
ひどい目に遭いました。上級精霊に許して貰って家族に殺されたら洒落になりませんよ。 結局、あのまま母上に締め落とされて、気が付いたら自分の部屋でベッドに寝かされていました。
目が覚めて、ベッドの上で起き上がると、ドアが開いてアニーが入ってきました。僕が目を覚ましているのに気付くとニヤリ(?)と笑って近づいてきます。ちょっと怖いのですが、何かしましたか?
「お目覚めですか、アルバート様。」
「ああ。アニー。私はどうしてここで寝ているのかな?」
「はい。それは、アルバート様が奥様に締め落とされて、気を失ってしまったせいです。慌てたゾフィーさんが奥様からアルバート様を引きはがして、この部屋まで運んでくれたんですよ。もうすごい勢いでした。」
「それは、ゾフィーさんに助けられましたね。実際死ぬかと思いましたから。」
「それにしてもアルバート様は、色々な女性に慕われているようですね?ゾフィーさんだけでなく、『事務局』の女性の方々全員が一緒に付いて来て大騒ぎでしたよ。メアリー様はもちろんですが、メイドの何人か走り回ってメイド長に怒られていました。」
ははは…………、どういう意味でしょう?ボクコドモダカラヨクワカリマセン………。
「ところで、お腹減ったんですが、今何時ですか?」
「あからさまに話をそらせましたね。今丁度夕食のお時間になります。お食べになりますか?」
「はい。食べます。お腹ぺこぺこです。」
これ以上アニーに責められると怖いので、とっとと食堂に逃げる事にしました。
もっとも食堂に行っても、今度は母上からからかわれるし、父上も面白そうにしているので料理の味も良く解りませんでした。
まだ7歳なんですから、女性関係については早いと思うのですが、此方の世界では違うのでしょうか。
生前から生きてきた年数を合計すれば50年以上になります。妻も子供もいたのでゾフィーさんやアルメリアさんに魅力を感じる事も大いにありますが、生前の常識では7歳と言ったら小学校1年生ですよ。いくら何でも早すぎるでしょう?と感じるのも現代日本に住んでいた感覚なのでしょう。
余り深く考えると、色々な問題が出てきそうなので、今日は上級精霊のイベントをクリアしたという事だけ考えて、気持ちよく眠る事にしました。
明日が普通の日でありますように。お休みなさい。
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