ある少年の疑問
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第三章
やはり彼の周りにレイノルズという人物はいなかった、それは彼の妻の周りについても彼について批評を行った人物にもだった。
やはり誰もいなかった、それでアレクシスはクラスメイトで図書館のいつもの席で言った。
「どれだけ調べてもね。ネットでも調べたけれど」
「いないんだね」
「うん、ポーの周りにはね」
知人達が誰も知らないと言った通りにだ。
「いないね」
「レイノルズって人は」
「君が調べてもだよね」
「うん、いなかったよ」
クラスメイトもこう答えた。
「一人もね」
「じゃあ誰なのかな」
「一切不明だよね」
「どうもこのことを不思議に思って」
「君以外にも調べた人がいるんだ」
「そうみたいだけれど」
しかしとだ、アレクシスは友人に答えた。
「誰も見付けられなかったみたいだよ」
「レイノルズが誰かって」
「そう、一人もね」
「これから書く作品の登場人物にするつもりだったのかな」
クラスメイトはここでこう言った。
「ひょっとして」
「それだと余計にわからないよ」
「ポーの頭の中だけのことだから」
「もうそれはポーだけにしかわからないよ」
それこそというのだ。
「もうね、けれどね」
「けれど?」
「世の中調べてもわからないことがあるんだね」
アレクシスはクラスメイトにしみじみとした口調で首を傾げさせつつ述べた。
「僕そのことがわかったよ」
「君は何でも知ってると思ったけれど」
これがクラスのアレクシスへのイメージだった、いつも読書をしていて成績も極めて優秀で何か聞かれたら常にすぐに答えるからだ。
それでこのクラスメイトもこう思っていた、しかしだった。
彼の今の言葉を聞いてだ、クラスメイトもわかったのだ。
「違うんだね」
「わからないから読むし勉強するんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、けれどね」
「調べてもだね」
「わからないことがあるんだね、それで」
アレクシスはあらためてという口調で述べた。
「レイノルズのことはこれからも機会を見付けてね」
「調べていくんだ」
「他の本も読みたいから今は置いておくけれど」
それでもというのだ。
「またね」
「機会を見付けてだね」
「調べていくよ、調べてもわからないことでもさらに調べていけば」
そうすればというのだ。
「わかる筈だから」
「だからだね」
「調べていくよ」
「じゃあレイノルズのこと頑張ってね」
「そうしていくよ。じゃあ今度は魯迅読むよ」
「その人はどの国の作家さんかな」
「中国の作家さんだよ、この人の本を読むよ」
こう言って実際にだった、アレクシスは魯迅の本を読みはじめた。クラスメイトは今度はローランの歌を読んだ。
アレクシスはいつも図書館にいる、そして本を読んで作品世界の面白さを楽しむと共に色々と調べていた、だがポートレイノルズの関係はこの時はわからず以後実際に機会を見付けて調べていった。それがはじまりとなって後に高名な文学者になるとはこの時は誰も想像していなかった。だが騎士物語を読んでいたクラスメイトがフェシングの選手になり同窓会でこのことを話して誰もが成程と思ったのだった。その時に彼がはじまったのだと。
ある少年の疑問 完
2018・7・19
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