空に星が輝く様に
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293部分:第二十一話 見てしまったものその十
第二十一話 見てしまったものその十
「一回やってみたらいいわ」
「そうか。じゃあ一回やってみっか」
「あれっ、案外素直なのね」
「お酒だったら何でもいけるしな」
実は酒好きの狭山だった。
「確かに朝は御飯だけれどな」
「パンも食べるしね」
「食べるさ。それじゃあな」
「ええ、それで?」
「パンは昼な」
パンについてもしっかりと言う。
「その時に食べるからな」
「そう。私お昼は御飯食べるつもりだけれど」
「パン屋の娘でもか」
「そうよ。私お米も好きだしね」
「そういや御前も何でも食べるよな」
「何でも残さず食べる」
お父さんやお母さんが聞けば手放しで喜びそうな言葉である。食べ物を粗末にすることはやはり悪いことなのである。それは津島も同じだった。
「そういうことよ」
「そっか。そうだよな」
「そういうことよ」
「そう。食べ物を残したら駄目」
ここで椎名が言う。見ればいつもの面々が全員揃っている。そしていつもの校庭の木の下で車座になって食べているのであった。
「絶対に」
「そうだよな。椎名いいこと言うよな」
陽太郎はお握りを食べながら椎名に対して言う。
「俺もそう思うよ」
「その通り。ところで斉宮」
「何だよ」
「そのお握り美味しい?」
こう彼に問うのだった。
「それで」
「ああ、美味いぜ」
食べながら率直に答える陽太郎だった。
「俺このお握りが好きなんだよ」
「そうなの」
「けれど何でそんなの聞くんだ?」
「それ麦入ってるわよね」
「ああ」
見ればだ。そのお握りには麦が入っていた。コンビニで売っている麦飯のお握りなのである。
「そうだけれどな」
「斉宮って麦飯も好きだったの」
「好きだぜ」
実際にそうだと答える陽太郎だった。
「けれどそれがおかしいのか?」
「ううん、いいこと」
「いいことなのか」
「そう、いいこと」
悪いということはないというのだ。
「麦が入った御飯はいい」
「質素だからか?」
「違う。身体にいいから」
それが椎名がいいと言う理由であった。
「だから」
「俺美味いから食ってるんだけれどな」
「麦飯食べてたら脚気にならない」
「おい、脚気かよ」
陽太郎は脚気と聞いて眉を顰めさせた。
「今時脚気になる奴はいないだろ」
「油断してたらなるから」
「いや、だから今は普通にパンとか食べるからだろ」
脚気がどうしてなるか。ビタミンB1が不足することによってなる。陽太郎はこのことを言うのだった。実際に昔の我が国ではそれでかなり大変だった。
「麦飯を食べなくてもな」
「そうだけれど脚気以外にもいいから」
「そうなのか」
「もっといいのは十六穀御飯」
椎名はこれも話に出すのだった。
「それはもっといい」
「健康志向なんだな」
「美味しくて身体もいい」
椎名は言った。
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