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空に星が輝く様に

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287部分:第二十一話 見てしまったものその四


第二十一話 見てしまったものその四

「もう後は寝るだけですし」
「そうだよな。ええと」
 屋上を見回す。するとだった。
 ベンチがあった。プラスチックとパイプでできたベンチだ。屋上にいつも置かれているそのベンチである。
 そのベンチを見てだ。陽太郎は月美に話した。
「座る?」
「あのベンチにですよね」
「ああ、あそこに座ろうか」
 こう彼女に勧めるのだった。
「それでどうかな」
「わかりました」 
 月美はまた微笑んで陽太郎に答えた。
「それじゃあ」
「それでゆっくりと話そう」
 陽太郎は穏やかな声で誘う。
「二人でさ」
「はい、それじゃあ」
 こうしてだった。二人は一緒に座って話をはじめたのだった。
 まずはだ。月美から話してきた。足を閉じて俯き加減で座っている。両手は膝の上だ。
「陽太郎君って」
「俺?」
 陽太郎は足は少し開いてだ。手は拳にして太腿の上に置いている。
「俺なんだ」
「というか妹さんですけれど」
「ああ、あいつね」
「妹さんおられますよね」
 こう切り出すのだった。
「確か」
「ああ、いるよ」
 そのことを自分で認める陽太郎だった。
「それがどうかしたのかな」
「私もいますから」
 月美もだというのだ。
「手のかかる妹で」
「あはは、こっちもだよ」
「そうなんですか?」
「うん、そうだよ」
 笑って答える陽太郎だった。
「実際さ。妹ってそうだよな」
「そうですよね。生意気でませていて」
「あれっ、こっちは違うけれど」
「そうなんですか」
「生意気でもませてもいないな」8
「じゃあどういう娘ですか?」
「何ていうか。何かっていうと俺になついてきて」
 こう月美に話すのだった。
「それで慕ってくれてさ」
「いい娘ですか?」
「いい娘だよ、とても」
 このことを自分でも認める陽太郎だった。
「それでいつも学校から帰ったらさ」
「どうされてますか?」
「相手してるよ。勉強の時以外は」
「うふふ、何か妹さん思いですね」
「俺はそんなつもりはないけれど」
「けれどそれがわかります」
 月美はにこりと笑って陽太郎に話した。
「とても」
「そうかな。俺本当にそんなつもりはないけれど」
「けれどそうですよ」
「月美から見たらかい?」
「そうです。陽太郎君ってとても妹さん思いですね」
「ううん、自覚はないんだけれどな」
 腕を組んでの言葉だった。そうしてそのうえで話すのであった。実は彼はそうしたことははじめて言われたのである。誰にも言われたことはなかった。
「それでも。そうかな」
「そう思います。私の方は」
「その生意気でませているって娘?」
「そうなんです。まだ小学生なのに」
「何年なの?」
「五年です」
「ああ、こっちは一年」
 それぞれの妹の学園も話すことになった。自然な流れだった。
 
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