戦国異伝供書
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第二話 百姓の倅その六
「自信があるぞ」
「その様ですな」
「ずっと乗っておる、そして槍もな」
「そちらは織田家でもかなりだとか」
「そうじゃ、槍の又左と言われておる」
前田はその整った顔を大きく崩して笑って話した。
「この槍で戦の度に敵を薙ぎ倒しておるぞ」
「それは凄いですな」
「次に戦があってもな」
「その時にはですか」
「どんどんな」
まさにというのだ。
「首を取ってくるわ」
「そうされますか」
「その活躍を見よ、そしてお主もな」
「戦の場でも」
「首を取っておるな」
「何とか」
こちらには困った顔で言う木下だった。
「この前一つです」
「前の戦ではそうであったか」
「はい、左様でした」
「それも認められての侍と思うがな」
それに取り立てられたというのだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「わしは六つ取ったからな」
「六つもですか」
「首を取るとな」
まさにというのだ。
「多ければ多いだけな」
「よいですな」
「だからお主もそこはな」
「頑張ってですか」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「首を取るのじゃ、もっとも殿はな」
「首だけではないですか」
「うむ、そうじゃ」
このことも話す前田だった。
「兵の采配なりもな」
「御覧になられますか」
「そうした方じゃ」
まさにというのだ。
「全部見てそうしてな」
「采配もですか」
「広くな」
まさにというのだ。
「見ておられる」
「そうした方だからこそ」
「お主も実力さえあればな」
「これからもですな」
「どんどん出世するぞ、わしもじゃ」
前田は自分のことも話した。
「もう槍と馬だけではいかぬからな」
「これからは」
「兵法、采配のそれも学んでおるしな」
それにと言うのだった。
「それにじゃ」
「さらにですか」
「政のことも学んでおるわ」
そちらのこともというのだ。
「内蔵助や鎮吉達と共にな」
「そうそう、政ですが」
木下は前田の今の言葉に気付いた顔になって言った。
「当家では五郎左殿ですが」
「あの御仁か」
「はい、やはり大事ですぞ」
「これからを考えればじゃな」
「領土が広くなれば治める場所も人手も必要になりますので」
それ故にというのだ。
「ですから」
「よりじゃな」
「はい、政はです」
「大事じゃな」
「むしろ戦よりもです」
木下は前田にこれまで聞く側だったが強い声で語る側になってそのうえで彼にさらに話していった。
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