FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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絶望を覆すもの
前書き
【速報】【速報】【速報】
作者、ガジルの存在を忘れてた(笑)
「これだけいれば、ティオスでも何とかできるかもしれないか?」
合流した魔女の罪の面々。彼らを見たオーガストは、微かに希望が見えたのかもしれないと考えていた。
「仕方ない、裏の手を使うか」
だが、その希望を彼は一瞬で消し去るだけの力を持っていた。
ヒュンッ
突如全員の視界から消えたティオス。状況を飲み込めずにいると、ソーヤの悲鳴が響き渡った。
「うわあああああああ!!」
慌ててそちらを見るとそこには血まみれになって倒れているソーヤと、彼の体から引き抜いた鮮血の付いた腕を自身の水で洗い流しているティオスの姿があった。
「で?次はどいつがやられたい?」
表情一つ変えない彼の姿を見て背中から冷たいものを感じる。近くにいたエリック、マクベス、リチャードは慌てて距離を取った。
「貴様・・・一体どうやって・・・」
一度見た魔法をコピーする魔法を使用しているオーガストですら、彼がどうやって今の一瞬でソーヤの背後を取ったのかわからなかった。いや、そもそも彼は原理などわかっていなくても魔法をコピーすることが可能であるはずなのに、それができないことが一番気になるところなのかもしれない。
「あぁ、これか?」
びっくり顔を晒しているオーガストたちを見て笑いを堪えられないティオス。彼は全員の顔を見回すと、ニヤリと笑ってみせた。
「そもそも、俺はどうやってこの時代に来たと思う?」
「「「「「???」」」」」
突然の質問に数人が顔を見合わせる。時を越える方法は現在彼らが知っているものではたった一つだけ。
「エクリプスじゃないのか?」
ゼレフ書の魔法であるエクリプス。その扉は時を繋ぐとしてヒスイ姫や未来のローグが時代を繋ごうとして来た。
その回答を聞いたティオスは拍手をする。
「ご名答!!俺はエクリプスを通じてこの時代にやって来た」
だからゼレフに似た魔力が体に滞留していると続けるティオス。それで終わりかと思われたが、そうは問屋が下ろさなかった。
「でもおかしいよな?エクリプスの扉は大魔闘演武の時に俺が破壊した。なのになぜ俺は未来からやって来ることができたのか」
「「「「「!!」」」」」
この時代においてエクリプスの扉は破壊されている。だから未来のローグは過去に遡れなくなり、過去からやって来たドラゴンたちと一緒に元の時代に戻らされたのだ。
「元の時代に戻ったローグとやらが再び扉を生成したのでは?」
「いや、それならばローグは再びこの時代にやってくるはず。そうなれば扉を破壊されようがこの時代に残れるはずだ」
エクリプスが時を繋ぐ条件を満たすその日にローグは再度現れ同じことをするはず。そうなれば今の時代で扉を破壊しようと、再度扉は開かれることになりローグやドラゴンの存在が消えることはありえない。
「ならなぜお前は消えない?元の時代に戻らないんだ?」
ここで疑問になるのはティオスの存在。彼は確かにエクリプスを通じてやって来たと言った。それなのに、扉がなくなる未来に書き換えられた現在では、彼はここにいられるはずがない。
それなのに、今、彼は確かにここに存在している。
「その答えは非常に簡単だ。俺は扉が破壊されることも計算に入れてこの時代にやってきたんだ」
答えになっているようでなっていないティオスの回答。混乱状態の彼らは次の言葉を待つ。
「エクリプスと“時の狭間”を通じさせたのさ」
「時の・・・狭間?」
それを聞いた瞬間、オーガストを除いた全員が初めて聞く単語に首を傾げる。
「時の狭間・・・黒魔導士がエクリプスを作り、それを通りこの時代にやって来た者たちがいた。そいつらのせいで現在の時空が歪んでしまい、それを修正するために存在する無の境地だ」
シリル、ナツ、ウェンディ、ガジル、スティング、ローグ、グラシアンがこの時代にやって来た際に出来上がったもの。それは本来出来上がるはずだった時間とは異なるものになった現在のそれを、正すために存在している。
「俺はエクリプスとそれを繋げてこの時代にやって来た。時の狭間はこの時代にシリルたちが存在している限り消えない。例えエクリプスが破壊されようと、俺は時の狭間の力を通じてこの時代にやって来たようなものだから、存在が消えることはないのさ」
エクリプスの存在により歪んだ時をさらに歪めることにより現代で存在を維持しているティオス。これでは、彼を未来に返すことは不可能なのは誰が考えてもわかった。
「ローグもアホだぜ。いくら先に送り込んだ俺が帰ってこないからって自分からこの時代に来るとは」
「先に・・・送り込んだだと?」
ティオスの正体を知らないマクベスたちは勝手に話を広げていくティオスに完全に付いていけていない。だが、オーガストだけは全てを察しているのか、動じることもなく耳を傾けていた。
「未来のローグは大魔闘演武の七年後にこの時代にやって来た。だが、命の危険に晒されている人間が七年もボーッとしていられるわけないだろ?」
「言われてみれば・・・」
操竜魔法の修得に時間がかかったのだとしても、フロッシュを一年後に殺され、その後はアクノロギアに支配された世界で年単位でそれを行えるとは思わない。むしろ、フロッシュへの愛が強かった彼ならば、真っ先にエクリプスを思いだし使用するはずだ。
「ローグはアクノロギアを止める自信がなかった。だからRシステムを使って俺を蘇らせ、この時代に送り込んだ。当初は未来のローグが来た大魔闘演武に来る予定だったが、無理矢理時の狭間に繋げることでやって来る時間も場所も俺の思いのままにした。
奴は俺がアクノロギアに殺られたか、エクリプスに何らかの不備が生じたと勘違いしてこの時代に自ら乗り込んできたのさ。俺はアクノロギアを倒すため、そして、それ以上のものを得るためにあいつの決めた時間から離れたと言うのに」
「それ以上のもの?」
ここで初めてオーガストの表情が変化した。彼は生まれ持った高い魔力でこの世の理を理解していた。だが、ティオスの真の目的だけは気が付いていなかった。
「アクノロギアなど取るに足らない。俺なら容易く存在を消せる。ならなぜお前たちアルバレスと共に過ごして来たと思う?」
ティオスの実力は十分に理解している。そして彼ならば、アクノロギアに勝つ可能性が十分にあることもわかっていた。
だが、彼は一人で戦うのではなく、アルバレスの人間としてアクノロギア、そしてフィオーレと戦う道を選んだ。
「なぜだ?ティオス」
オーガストの問いに笑みを浮かべるティオス。彼は両腕を広げて声高らかに答えてみせた。
「俺がこの世界の人間を全て消してやるのさ!!」
「「「「「!?」」」」」
世界征服とでも言うのかと思っていた。だが返ってきたのはそれを遥かに越える回答。そのあまりのぶっ飛んだ答えに言葉を発することができない。
「この戦争は両軍に多大な爪痕を残した。多くの犠牲が出て、街は崩壊した。これに乗じれば、その目的を果たすことは容易くなる!!」
天を仰ぎながら宣言するその姿はまさに恐怖の対象だった。確かに両軍に被害が出ることはやる前からわかっていた。だが、それを利用して人類を滅亡させようとするなど、想像できるはずがない。
「ふざけるな!!」
その言葉に怒りを現したのはエルザだった。彼女は亡骸となったジェラールの前に立ち、ティオスを睨み付ける。
「全ての人間を消すだと!?貴様にそんなことをする権利でもあるのか!?」
「エルザ・・・」
目の前で大切な人が奪われ、育ての親さえも命を落とした。それを見越して戦っている彼が彼女はどうしても許せなかった。
「あぁ、あると思ってるけど?」
「何?」
またしても予期していなかった答えに目を見開く。ティオスはその間抜けな顔を見て肩を震わせた。
「そもそも、この世界はあまりにも不条理だと思わないか?」
突然の問いかけに多くの者に疑問符が現れる。だが、数人はその言葉の意味をすぐに理解していた。
「神は平等だと言うが、それならなぜ全ての人間に平等に幸せが舞い込んで来ないのか。顔、身長、性別、健康状態、寿命、境遇、頭脳、魔力・・・ありとあらゆるもので“差”が生じている」
「それは人間の個性だ!!全員が一緒であるはずがない!!」
当たり前のこと過ぎて疑問に思うこともないティオスの思考に声をあげる。だが、それにさらなる疑問を彼は投げ掛けた。
「ならばなぜその個性でバランスを保つことができないんだ?」
「それは・・・」
何か一つに秀でていれば、他の何かで劣っている。それはもちろんあり得るが、全ての人間のバランスが保てているわけではない。成功するものとできないもの・・・勝者と敗者に別れるのが、この世界の常だ。
「確かに人は平等ではない!!だが、お前はそれを手に入れられなかっただけで人を殺すのか!?」
この時、エルザは勘違いしていた。ティオスはオーガストのように世界から疎まれていた存在なのだと。だが、それは違っている。
「いや・・・俺は最高の時を過ごさせてもらったよ」
「え・・・」
「従兄に迎えに来てもらって、友達と魔法学校に行って、黒魔導士に出会って滅神魔法を手に入れて、たくさんの大切な仲間に囲まれていた」
「滅神・・・魔法・・・」
「まさか・・・」
ここでエルザとウェンディはようやく気が付いた。他人の空似ではない。彼が本物のレオンであるということに。
「確かに辛いときもあったし、平和な世の中とは言えなかったけど、俺は間違いなく幸せだった。あの時が来るまでは」
「あの時?」
何が彼を変えてしまったのか固唾を飲み聞き入る。かつての少年は悔しそうに奥歯を噛み締めた。
「天海に負ける、あの時までは」
その一部始終を見ていたものたちはすぐに疑問に思った。レオンは天海に勝てなかった。しかし、負けたわけではなかった。
「お前は天海を倒したじゃないか!!それでシェリアを守れたと笑顔で最期を迎えたんじゃなかったのか?」
あの言葉が嘘偽りだったとは思えない。あれだけ仲間のことを愛していた彼が、どういう経緯があってRシステムで蘇ると同時にこうなってしまったのか。
「それはお前が知る俺だ。俺は・・・
天海になす統べなく負けたんだ」
「「「「「え・・・」」」」」
彼の過ごしてきた時とエルザたちが過ごしてきた時では、ある時から大きな狂いが生じていたのである。彼が生きてきた時代は今とは大きく違っている。
「俺は天海を止められずにこの世を去った。その後、何が起きたかは全てローグから聞かされたよ」
レオンを欠いたフィオーレ軍だったが、彼らはアルバレスに何とか勝利を納めることができた。その一番の要因は、レオンが破れた直後に現れた第三勢力。
「ハルジオンにアクノロギアが現れたんだ。そりゃそうさ、あの時滅竜魔導士があそこに三人もいたんだ。奴が攻めてきてもおかしくはない」
しかし、それがレオンが抜けた穴を塞いでくれた。
天海はシリルたちを狙おうとしたアクノロギアを見て、彼をターゲットに切り替えたのだ。
強者との戦いを望む彼であれば、当然挑むことはわかっていた。
その結果天海はアクノロギアに多大なダメージを与えたものの、最後はドラゴンと化したアクノロギアのブレスにより街もろとも消し飛ばされた。
その戦いで受けたダメージによりアクノロギアは滅竜魔導士たちの抹殺を一時的に諦め撤退。その後はアイリーンのユニバースワンなどで戦況は傾いたものの、最終的にゼレフを倒すことに成功した。
「だが、その直後に襲ってきたアクノロギアの猛攻を防げなかった。その結果多くのものが命を落とした」
そう言った瞬間に、彼は顔を伏せた。その顔が上げられると、鬼のような形相にギョッとした。
「アクノロギアを倒すために犠牲になったのは、ほとんどが妖精の尻尾以外の魔導士だったんだ」
「??どういうことだ?」
なぜ妖精の尻尾以外の魔導士たちからばかり多くの被害者が出たのか、その理由がわからない。それを尋ねると、ティオスの表情はさらに強張る。
「お前たちが妖精の球体を使ってアクノロギアを閉じ込めるから港までアクノロギアを誘導してくれと言ったからだ!!」
ティオスが来た歴史では、アクノロギアを倒せる方法は滅竜魔法だけでは足りなかった。彼の動きを封じ、滅竜魔導士たちの滅竜奥義でトドメを刺す。それが最善の策だと思っていた。
その方法としてアクノロギアを妖精の球体で閉じ込めることにしたルーシィたち。しかし、彼を閉じ込めるために妖精の尻尾は港に行き、準備をしていたがそれが失敗だった。
発動方法を知らない魔法を使えるはずもなく準備は不十分、さらにはアクノロギアを港まで誘導するために残った魔導士たちやり方がわからずほぼ全滅。
極めつけはグレイだった。彼はハルジオンにアクノロギアを連れてこようとした兄弟子のリオンが殺されたことで暴走した。滅悪魔法を操るために微妙な精神状態をこれまで維持してきたことも相まって、アクノロギアを倒そうとしたが周りすらも巻き込む攻撃をしてしまった。
その結果、ローグの相棒であるフロッシュが命を落とし、それによりローグの中の闇も増幅。二人は潰し合い、その争いに参戦しようとしたアクノロギアを止めようとしたナツたちも死亡。
残っていたのはローグと、アクノロギアの攻撃を被弾し意識を失ったシリルと数人の妖精たち。
悪運強く生き残った妖精の尻尾の忠告を無視し、Rシステムを一年足らずで作り上げたローグはシリルの肉体を使いレオンを生き返らせた。後は最初に、彼が話した通りの出来事が起きた。
「あの時代ではアクノロギアは倒せなかった。生き返ったばかりの俺では日に日に成長していく奴をもう止められない。だからこの時代に俺を送り込んだんだよ、奴は」
だが!!と両腕を広げたティオスは声を高らかに張り上げる。
「アクノロギアを倒すのは今なら容易い!!だからそれだけでは足りなくなったんだ!!このままアクノロギアを倒しては一部の者しか幸せになれない。ならば俺は・・・
全員をこの世から消し去り、全員を平等の立ち位置にしてやろうと考えたのさ」
未来で起きる悲劇が、彼の心を壊してしまった。シェリアやシリルたちを助けたかった彼の心は、敗北と共に砕け散り、歪んだ死神へと変貌を遂げた。
「ふざけないで!!」
彼の話を聞いて声を上げたのは意外な人物だった。メイビスと共にやって来たキナナは、彼の自己中心的な思考に珍しく怒りを覚えた。
「あなたがしているのは単なる虐殺!!誰もそんなことを望まないし、昔のあなただって絶対に嫌がるはずよ!!」
「この声・・・」
キナナの仲間を想う強い声。それに聞き覚えのあったエリックは目を見開いた。
「そうだな。昔の俺は未熟だった。だけど今は違うぜ。俺は・・・」
手のひらをキナナへと向けるティオス。そこに巨大な魔力が集められていく。
「アンクセラムに変わり神になる」
放たれた氷の波動。それは一直線にキナナへと伸びていったが、それを遮るようにエリックが割って入った。
「があっ!!」
「エリック!!」
強烈な一撃に地に伏せるエリック。自らを庇った彼にキナナは駆け寄る。
「お前だったんだな・・・やっぱり・・・」
「覚えてたんだね・・・」
無限時計の戦いでシリルに破れたエリックはキナナと出会った。だが、彼はその時視力を失っていたため、彼女の顔を見るのは今回が初めてだ。
「また会えて・・・嬉しいぜ・・・」
姿は違うが、もう一度友の声を聞けたエリックは満足げだった。例えここで命を落としても、悔いがないかのように。
「二人まとめて消え失せろ」
誰の目にも追えない速度で二人に接近したティオス。彼の手には氷と風、そして水の魔力が集められていた。
「エリック!!」
「キナナ!!」
エリックを抱き抱えているキナナは、とてもじゃないが避けきれないことはわかっていた。それでも、最後の最後でもう一度会いたかった人に出会えた二人は、その最期を受け入れる覚悟はできていた。
「避けてください!!」
「キナナさん!!」
降り下ろされようとしている手刀。仲間たちは死を受け入れている二人に必死に叫ぶが、もうどうしようもない。そう思っていた。
「鉄竜棍!!」
だが、それを神は認めることはしなかった。
「やはり来たか。だが・・・」
声から誰が攻撃を仕掛けてきたのかはすぐにわかった。ティオスは取るに足らないその一撃を受け流し、そのままエリックたちを仕留めようとした。だが・・・
ザシュッ
彼を襲ったのはガジルの鉄竜棍ではなかった。
「え・・・」
地面を転がるティオスの右腕。何が起きたのかわからず呆けていると、体の均衡が崩れたことによりティオスは地面に倒れた。
(なんだ・・・一体何が・・・)
ガジルの鉄竜棍に腕を切り落とすような力はない。ましてや彼の攻撃ならティオスは容易く受け流せる。それなのに、実際に起きているのは想定とは全く異なる事象。切り落とされた腕の部分を止血しながら、顔を上げる。すると、そこにはいるはずのない顔があった。
「ったく、人使い粗い奴だな」
「そう言うなよ。いい作戦だったろ?」
ゆっくりとティオスの腕を切り落とした青年に歩み寄るガジル。その彼の言葉に深紅の髪の青年は笑って答えた。
「え・・・なんで・・・?」
「どうして・・・お前が・・・」
ウェンディとエルザは、その男の登場に心底驚いた。深紅の髪をし、フードが付いたマントを身に付けた、魔女の顔のようなギルドマークを刻んだ青年。
「託されたからには、役割を全うしたいんだよ」
かつて聖十大魔道の称号を持っていた、イシュガルBIG3の一角であるカミューニ。信じられない人物の登場に、戦場の空気が変わった。
後書き
いかがだったでしょうか。
皆さんお待たせしましたね、絶望の時間終了ですよ!!
いきなり救世主登場ですよ!!えぇ、死んだはずのカミューニさんです。
ティオスを止めれるのは彼しかいないですよ、私が彼好きなだけなんですが(笑)
次からは一気に流れが傾きますよ。それもどこまで続くかわかりませんが。
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