ローゼンメイデン〜エントロースライゼ〜
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第六話〜眠りの者〜
前書き
諸事情により短めの投稿です。お久しぶりすぎてなんかもうやばいです。ローゼンゼロ連載おめでとう。
「え、、、と。一回まとめると。」
柿崎めぐはnのフィールドに生きていた(漂っていた?)
紫苑さんは彼女と出会った
その後、不思議な声が聞こえて
翠星石たちとの話の結果、それが『心の声』であるという結論になった。」
「うん、そういうことだね。」
「うーーん、、、。」
力を与えられる、というのは何か意味があるはずなのだ。マイスターローゼンの役割を得た僕のように。紫苑さんが柿崎さんに出会ったのがnのフィールドで、そこで力を得たのだとしたら少なからずお父様、ローゼンの意思があるはず。今はほとんどが僕の管理下(実際はそう言えるほど大層なものではないが)にあるnのフィールドだけど、元の所有者である彼が動いたとしてもおかしくない。
悩んでいる僕に痺れを切らしたのか、翠星石が口を開いた。
「とにかく!紫苑なら、聴けるかもしれないですよ!」
「ん?どういうことだ?」
「あぁ!変に鈍いやつですぅ!真紅ですよ、真紅!」
「あ!」
考えなかった!確かに、それはできるかもしれない。
期待が高まっていったが、少し冷静に考えた。真紅は今、nのフィールドにいる。彼女の心に触れようと、扉を探し回ったけど見つからない。やはり彼女の心は今は無い、というのがその時の結論だったのだ。だが、もし紫苑さんの力が、特別なものだとしたら、真紅の心に触れられるかもしれない。
「、、、やってみる価値はあるか。」
「です!」
「紫苑さんはいいんですか?」
「協力するって言ったじゃないか。今更何を断るのさ。できるかわからないけどね、やれるだけやってみるよ。」
「ありがとうございます!」
「それに、、、。」
「?」
「ふふ、何でもないよ。さ、真紅ちゃんのところへ連れて行ってよ。」
暗闇を手探りなぼくにとって彼は光だった。真紅の心がわかれば、何かローザミスティカのヒントが得られるかもしれない。もちろん、できない可能性もあるが、、、。
期待と不安の中、僕達は真紅の眠るローゼンのアトリエへ向かった。
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ふと、目が覚めた。この時間に起きることは滅多にと言っていいほどなかったのだが。
早起きなマスターの所為で体内の生活時計が狂ってしまったのだろうか。機械のような自分の身体なら文字通りだな、と少しの笑みがこぼれた。と、自分はこんな簡単に笑えたのだっけ。彼がマスターになってから、調子が狂うことが多くなった。
樢玖島 紫苑、今まで出会ったどの人間より、わからないことの多い人間だ。その感覚はめぐに似ている。マスターになる人間とドールは何処か引かれあっているということから考えれば当然と言えるかもしれない。だけどめぐと違うのは彼女以上に実体が掴めないところだ。はたから見ると彼は気持ち悪くなるほど甘い人間だが、時折背筋がゾッとなる顔をする。悲しみなのか怒りなのか、わからない。ただ、自分にとってあの顔は、恐ろしく感じる。あの顔の裏には彼の何があるのか。
鞄を開けると、人工精霊のメイメイが忙しなく動き回っていた。どうやら当のマスターは双子と会っているらしい。
欠伸をして、まだ眠り足りないと二度寝をしようとした。が、これはもしやチャンスと見た。今のうちに彼のことを調べてみようと考えたのだ。
あの夜、まだ忘れられない。
彼が何者なのか、知っておく必要がある。
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涼しげなある日の夜、吹く風は草木を揺らす。大きな月が僅かに照らすのは縁側で空を見つめる青年、樢玖島紫苑だ。
「、、、、、。」
普段とは違い彼はどこか陰りのある表情をしている。そこへ、舞い降りた水銀燈。
「珍しいわね、この時間に起きているなんて。」
「、、、、、、。」
反応がない。無視するのはいいが、されるのは癪に触る。
「何か言いなさいよ。」
「、、、君は悪魔なのかもね。」
「、、、はぁ?」
理解できない。と思ったのだが、自分のようにイかれた部分がこいつにも有るのだと思った。
「あの子への当てつけのつもり?」
「ああ、そういえば君は天使だったんだね。忘れていたよ。」
めぐを意識して言ったというわけでもないようだ。それにしてもやはり雰囲気がおかしい。別人ではないかとも思える。
様子を窺っているとゆったりと話し始めた。
「めぐは君と死にたがっていただろう?」
「、、、、ええ。可笑しな子だったわ。」
「ふふ、そうだね。、、、でもね、本当は僕が一緒に死ぬはずだったんだ。」
「何のこと?」
少しずつ空気が暗くなっていると感じたのは、いつの間にか月が雲に隠れていたからだ。
「貴方はめぐを救いたかったのではないの?」
「それは、『彼』の言葉だね。」
「馬鹿にしてるの?お寝んねの時間かしらね?」
「あははは、確かに、『ボク』は眠っているね。」
「、、、、、『貴方』は、誰なの。」
雲が退き、光が彼を照らした。
「何てことはない。僕は君のマスターさ。」
いつもと同じの気持ち悪い微笑みで彼はそう言った。
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(アレは、何だったのかしら。)
やがて、二階にある彼の部屋らしきところに来た。この先に何かがある。
鍵は開いていた。
水銀燈はゆっくりと、部屋の中へと入っていった。
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「ここが、ローゼンのアトリエです。」
nのフィールドにある扉を開け、紫苑さん達を案内した。
ローゼンのアトリエは、今や僕の作業場になっている。ここには彼が使っていた道具や錬金術などの本が所狭しと置いてある。もちろん片付けはした、だが物が多すぎる。しかもどれもが使い道がありそうで一つを手に取ると読みふけってしまうのだ。結果、物を奥にしまうことが出来ずに歩く道だけを確保している状態だ。
そんな中、唯一整頓された作業台。持ってきた石とローゼンの本とを照らし合わせる毎日をこの大きな木製の作業台で過ごしている。
そしてその横のいつも目の届く所に真紅を寝かせている。
いつ、起こせるのだろう。僕自身、起こせると思っている。これまで何度彼女の目を覚まさせたのだろう。でもこれは今までのどれとも違う、今の彼女は限りなく...やめよう。
どうも自分は根っからのネガティブらしい、希望は見えている、紫苑さんの『力』やドール達、本当に少しずつだけど前に進んでるんだ。
「彼女が、真紅ちゃんだね?」
「はい...何か分かりそうですか?」
「試してみるよ。」
そういうと紫苑さんは真紅のところまで行き、祈るように手を組んだ。
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僕には何が出来るのだろう。本当に、僕には何も無かった。めぐが死んだその日から。いや若しかしたら、もっと...ずっと前から。
でも、何も無い僕にめぐから託されたこの力はきっとこのために使うべきなのだと思う。
少しだけコツが分かった。無意識というか空っぽというか、自分を中身のない器にするイメージだ。なるほどそれなら自分にはやりやすい。
そして、すぅっと体に風が通る。
「うわ!」
ジュンくんの声だ。何があったんだろう。でももう僕は止められない。風がどこまでも吹いてゆく。
風が止んだ。静寂が僕を包みこみ、孤独が僕を浮かせてゆく。
孤独?
辺りに人の気配を感じなくなった僕は不安から目を開いた。恐ろしさからゆっくりと。
「……?」
そしていつの間にか真っ白になった空間に立っていた僕の前には
「真紅……?」
燃えるような、それでいて儚げな紅いドレスを纏う金髪のドールが立っていた。
後書き
紫苑君が本格的に協力ですね。
もっと色んな人物を出せる展開を作れる脳が欲しいなぁ。
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