| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

友達が欲しい

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「そんなに実感ないとか思うことはな」
「ないんだ」
「そうだと思うがな」
「そうだといいけれど」
 やはり実感を感じることなく言う小太郎だった。
「僕も」
「ああ、そんなに気にしないでな」
「友達作っていけばいんだ」
「これからもな」
「そうよね」
 母もここで言ってきた、白菜と鯖の缶詰をじっくりと煮たものを食べつつ。
「小太郎も頑張ってるから」
「友達を作ろうと」
「それで出来てきてると思うわよ、お母さんも」
「普通に話をする子が出来てきて」
「そうよ、あと友達ってね」
 ここで母は息子にこうも言った。
「何ていうかはっきりわかるかっていうと」
「自分が誰かの友達とか」
「そうしたものでもないんじゃないかしら」
「ああ、自分がそう思っていてもとかな」
 父も母のその言葉に応えた。
「相手は思っていないとかな」
「あるしね」
「じゃあ皆も」
 小太郎は両親の言葉を聞いて暗い顔で驚いた、そうして言った。
「僕を友達と思っていないとか」
「あるかもな、そして逆もな」
「僕が友達と思っていない子が僕を友達と思っている」
「そうしたこともあるだろ、結局友達っていうのはな」
「はっきりわからないんだ」
「そんなものだろ、だから難しく考えずにな」
 それでと言うのだった。
「人と付き合っていけばいいんじゃないか」
「そんなものなんだ」
「難しく考えないでな」
 また我が子にこう言った。
「そうしてな」
「それじゃあ」
「ああ、気楽に考えていったらどうだ」
 父は我が子に暖かい声をかけた。
「これからな」
「それじゃあ」
 小太郎は父の言葉に頷いた、そうしてあまり深刻に考えないで友達を作っていこうとも考えた。だがそんな時だった。
 不意にだ、日頃結構話していた部活の後輩が交通事故で死んでしまった。小太郎はその知らせに驚いて言った。
「あんないい子が死ぬなんて」
「ああ、だからな」
 それでとだ、部長はいつも以上に蒼白な顔になった小太郎に話した。
「彼のことは忘れない様にしよう」
「これからも」
「お通夜にも出よう、部員全員で」
「わかりました」
 小太郎は部長の言葉に頷いた、そしてだった。
 彼は後輩のお通夜にも出て冥福を祈った、だが彼が死んでからもだった。ずっと彼のことを思うのだった。
 そうしてだ、家でも両親に彼のことを話した。
「あんなにいい子いなかったのに」
「死んだんだな、交通事故で」
「そうなったのね」
「うん、そして」
 そのうえでと言うのだった。
「僕ずっとあの子が死んだこと残念って思っているんだ」
「ひょっとしてな」
 ここでだ、父が小太郎に行ってきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧