戦国異伝供書
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第一話 語ることその一
戦国異伝供書
第一話 語ること
戦国の世は終わり天下は織田家の下に治められることとなった、信長は安土城を己の居城とし大坂と江戸にそれぞれ城を築き天下を治めることとした。
織田家の家臣達も諸大名もそれぞれ封じられ織田家の中で生きることになった。その中でだった。
等しく大名となった織田家の家臣達と諸大名が今は安土城において話をしていた、彼等は今は酒を飲んでいた。
その酒を飲みつつだ、羽柴秀吉がこんなことを言った。
「いや、琉球との貿易をはじめ」
「それにですな」
その羽柴に明智光秀が応えた。
「台湾を日の本の領土とする」
「そうした話になっていますな」
「確かに」
その通りだとだ、明智は羽柴に答えた。
「ただ台湾はどうもです」
「これといって治める者がなく」
「兵を送れば」
それでというのだ。
「もう日の本の領土になる」
「その様ですな」
「あの地から明そして南蛮諸国と貿易を行い」
今度は蒲生氏郷が言った。
「そうしてです」
「本朝が豊かになる」
「上様はそうお考えですな」
「これからは領土とです」
蒲生は二人にさらに話した。
「貿易によってです」
「豊かになる」
「そうなっていきますな」
「左様です、もう戦はなくなりましたが」
それでもというのだ。
「貿易で忙しくなりますぞ」
「そこで用心すべきはじゃ」
織田家の重鎮中の重鎮である柴田勝家が言ってきた、今も豪快な笑顔である。
「明もそうであるが」
「はい、南蛮です」
竹中半兵衛が柴田に応えて述べた。
「エスパニアやポルトガル、そしてどうもオランダという国も」
「しきりにじゃな」
「外に出ています、イングランドという国も」
「そうした国々にはか」
「警戒が必要かと、ですが」
「それでもか」
「はい、ああした国々の拠点は西の遠い端にあり」
それでとだ、竹中は柴田に話した。
「大軍を送ってくることは船でもです」
「あまりないな」
「むしろあちらでは戦がこれまでの本朝よりかなり多いとか」
竹中はこのことから言うのだった。
「ですからここまで来ることは」
「ないな」
「だからです」
今度は黒田官兵衛が言ってきた、織田家の二人の軍師は今も健在だ。
「我等は南蛮のことを常に聞いて読んで学ぶべきことは学び」
「後れを取らぬ様にしてか」
織田家で柴田と共に重きを為している丹羽長秀が応えた。
「そのうえで」
「はい、やはり明やその南蛮の国々と商いをして」
「富を得ることか」
「それがよいかと」
「それで本朝の中もか」
「治めます」
貿易に力を注ぐだけでなくというのだ。
「そして国の中も豊かにして」
「外からも富を得てか」
「そしてです」
「内外から豊かにしていくか」
「南蛮の、そして明のよきものも入れながら」
「そうして強くもなるか」
「そうなります、上様はそうしたことをお考えです」
信長、彼はというのだ。
「既に」
「ううむ、凄いのう」
柴田と並ぶ織田家の武の二枚看板とされていた佐久間信盛もここで言ってきた。
「そこまでなるとはな、尾張一国をどうかと言っていた時と比べると」
「変わりましたな」
その佐久間に滝川一益が応えた。
「あの頃と比べると」
「まことにな」
「変わりました」
「天下を統一してな」
「さらにですから」
「全く以て変わったわ」
「実に」
佐久間も頷くことだった、そして彼はさらに言った。
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