ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ソードアート・オンライン~剣の世界~
2章 生き様
19話 処置
前書き
どうも、白泉です!今回は、「夏だ!小説だ!ファンタジア!」第一弾!(※何のことかわからない方はつぶやきをどうぞ)いやぁ、これから毎週投稿なので、書くほうも大変なのですw
そんなことはさておき、今回ツカサとあの団長の回です。
ではさっそく、どうぞ!
窓から高く上った日の光が差し込み、部屋の全体と、そしてその部屋に置かれたベッドを明るく照らしていた。
そのベッドには一人の少女が眠り、その隣には一人の青年が片方の膝を伸ばし、もう一方を抱えて座っている。
ツカサは、何をするわけでもなく、ただぼんやりと部屋の壁を見つめていた。リアはあれから目覚めず、隣で昏々と眠り続けている。
部屋の中を満たすのは、リアの柔らかな寝息、明るい陽射し、そして静寂のみだ。
だが、唐突にその均衡をツカサの頭に響いたアラームと、視界に広がる「新着メッセージ」の文字で崩される。
そもそも、フレンド登録というものをしている人が少ないツカサにメッセージが来ることはほとんどない。たまにキリトから来るぐらいである。しかし、このタイミングはあまりにも不吉過ぎて、ツカサはそれを開くことをためらった。だが、結局開くことにする。
案の定、それは嬉しいものではない。
差出人は、“あの”ヒースクリフ。ツカサたちと同じように、ユニークスキル“神聖剣”を持ち、最強ギルドと名高い血盟騎士団の団長を務める、影響力がとても強いプレイヤーの一人だ。
そんな彼とフレンド登録をしているということはさておき、ツカサはその内容に目を走らせる。それはいたって簡潔、拍子抜けするほどシンプルだが、その中の重みをツカサは感じ取った。
「君だけでも、彼女を連れてでもいいから、グランザムまで来てほしい」
ツカサは、隣を見やる。そして、覚悟を決めると、ベッドを下りた。
55層主街区、“グランザム”。別名、鉄の都とも呼ばれ、その町は無数の鋼鉄の尖塔で形作られ、その手の職人も多くいる。そのあだ名の通り、町全体は灰色で覆われ、その金属独特の光沢は寒々とした雰囲気を与えている。
ツカサは、そんな街をたった一人で歩いていた。すでに正午は過ぎているはずだが、22層の晴れ間とは打って変わって、空は灰色の雲が低く垂れこめていた。
まるで自分の心の中を現しているようで、ツカサは思わず重くて長い溜息を吐いてしまう。
巨大な鉄の塊のような城の入り口に立っている門番に、ヒースクリフからのメッセージを見せ、最上階へと昇る階段を昇る。
自分の足音がやたらと廊下に響くような気がして、まるで童話の中の登場人物にでもなったような気分になる。
そんな階段も終わりを迎え、目の前には大きな扉が現れた。迷いなくツカサはその扉をノックする。
「はいりたまえ」
という彼の声を聴いてから、ツカサはその扉を押し開けた。
奥の壁はすべてガラス張りで、晴れの日には恐らく日が入って気持ちがよいのだろうが、今はあいにくの曇天で、暗い雰囲気でしかない。
その窓に背を向けるようにして、こちらに向かって座っている男。彼こそがユニークスキル“神聖剣”の使い手、血盟騎士団団長、ヒースクリフである。
「やあ、ご足労すまないね」
「いや、それは別にいい」
ツカサはねぎらいの言葉を冷たくバッサリと切り捨てる。なぜなら、“彼の本当の姿を知っているから”。
しかし、彼はツカサの様子に気に障ったそぶりも一切見せない。ツカサはまっすぐ歩き、彼の目の前に立つ。
180近い身長と、がっちりとしたその体躯は、ツカサのかなりほっそりしたそれを大きく上回るが、今はツカサが見下ろす格好になっている。
「それで?前置きはいい。要件はなんだ」
「君はすでに分かっているはずではないか?」
質問に質問で返す彼に、ツカサはいら立ちを隠さない。あからさまにヒースクリフをにらみつける。
「…リアのことか」
「そうだ」
彼は簡潔にそう言うと、前かがみになり、テーブルの上で手を組み合わせた。
「私はあの場にいなかったせいで、その時の状況はよくわからないが、彼女はずいぶん攻略組たちを怖がらせたようだね」
「……」
「…攻略組たちは、彼女の一か月前線に立ち入り禁止と、攻略組との接触を禁じることを望んでいる」
「ッ!?おい、どういうことだ、ヒースクリフ!」
彼の言葉に、沸点が低くなっていたツカサが声を高くした。
「別に私がそれを望んでいるわけではない。あくまで攻略組が望んでいるのだ」
「俺が聞きたいのはそういうことじゃない」
触れれば切れてしまいそうなほどのツカサの鋭い視線は、真っすぐヒースクリフを射抜いている。
「確かに、リアはラフコフメンバーを殺した。だが、それは皆が殺すこともあるかもしれないという合意の下で参加し、自分だって殺すかもしれなかったんだ。それがただリアに変わっただけのことのはずだ」
「だが、報告によれば、彼女は殺しを楽しんでいるようだったと」
「っ…」
ツカサは押し黙った。
そう、そこがネックなのだ。別にその行為自体は、今回の場合咎められるものではない。だが、問題はその時の彼女の様子である。
リアは躊躇なく…いや、むしろその唇には笑みさえ浮かべて殺していった。
しかし、ツカサは思う。“それがいったい何だというだ?”なぜ彼らはそこまで過剰に反応する?結果は、リアがほとんどのメンバーを殺しましたの一文で済む。それなのに、なぜ掘り返そうとするのか。
だが、ツカサは心の中で首を振った。何しろ、自分たちと一般人の彼らとは、そもそも“感性や考え方、価値観”もちがう。そんな相容れないような彼らに理解などできないと思うし、理解してほしいなど、ツカサは露ほどにも思っていなかった。
「…わかった」
結局、ツカサはそれを承諾することにした。ここで下手に動かないほうがいいと思うし、あまり彼らを刺激しないほうがいい。
だが、ツカサはそれだけで終わるつもりもなかった。
「だが、条件が2つある」
「…なんだね?」
ツカサはまっすぐヒースクリフの瞳を見つめた。
「一つ目は、リアがその制裁を下されるなら、俺も一緒に受ける」
「…きっと、彼らも君もそうすると思っているだろう」
つまり、イエス。こちらの条件は受け入れられる自信があった。だが、次の条件はどうなのだろう。
「二つ目は…恐らく、俺たちが前線に出ない一か月間の間に、最前線のボス攻略戦があるだろう。…だが、俺たちは攻略組たちがどんなに危険な状態になっても、絶対に出ない。死者が何人出ても、だ。」
「…それは、私一人の意見では決めかねるな」
顎に手を当て、ヒースクリフは考え込むしぐさをする。ツカサとて、一応はここで従順な態度を見せるが、簡単に引き下がるつもりもない。何しろ、そもそもリアが虐げられているのだ。確かに自分たちは異常だとわかってはいるが、それでもツカサの神経を逆なでするのには十分だった。
自分たちの存在の大きさを、ここでわかってもらわなければこれから先、厳しいだろう。いや、彼らは本当はわかっているはずなのだ。ここまで、ある程度のハイペースで攻略できたのは、オールラウンダーの2人の力はかなり大きいものだったと。だが、今彼らはパニック状態にある。だからこそ、もう一度わからせてやる必要があった。…これからの攻略に自分たちが…いや、リアが必要不可欠だということを。
「リアにそこまでさせるということは、つまりそういうことなんだろう?自分たちでリアを虐げておいて、都合のいい時だけ助けを求めるだなんて、虫が良すぎる。そこはどちらかに固めるべきだと思う」
「……確かに、君の言うことには一理ある。わかった。何か言われたら私のほうから彼らを説得しておこう」
「よろしく頼む。…それじゃあ」
要件は終わったとばかりに、ツカサはさっさと踵を返し、扉へと大股で歩いていく。だが、
「やはり血盟騎士団に入るつもりはないのかい?」
ツカサは足を止め、振り返る。その表情には、わずかに嘲りの笑みが含まれていた。
「残念ながら、な」
ツカサはそう言い放つと、もう何も言わないヒースクリフを置いて部屋を出た。
後書き
はい、いかがでした?今回はツカサとヒースクリフの絡みの回でした。
いやぁ、それにいても、ヒースクリフに対してのツカサの態度w怖すぎww
イケメンって、怒ると怖いんですよねww僕も怖くなりたいww
なんてことはさておき、次回は!リアとツカサの回になります!僕としては、このラフコフ編の中では一番好きな場面なので、頑張ろうと思います!
少しでも気に入った方、感想を書いてもいいよという方、ぜひお願いします!もしかしたら、毎週投稿が継続するかも⁉(冗談ですwwでもペースは上がるかもです!)では!
ページ上へ戻る