空に星が輝く様に
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27部分:第三話 入学その三
第三話 入学その三
「それにね」
「それに?」
「話変わるけれど」
こう前置きしてからの再度の言葉だった。
「これから。まあ朝練もあるけれど」
「ああ」
「一緒に通学するのね」
にこにことしながらの言葉だった。
「毎日この電車で」
「そうなるのか?」
「そうじゃないの?だって同じ高校だし」
「朝練がはじまったらそうはいかないだろ」
これが彼の意見だった。
「かなりな」
「そうなの。何か」
陽太郎の今の言葉を聞いてだ。星華は暗い顔になった。そうしてそのうえで肩も落とさせて。残念そうな様子になってそのうえで話した。
「がっかり」
「がっかりって?」
「あっ、何でもないわ」
ここからはまた隠した彼女だった。
「別にね」
「そうなんだ」
「何でもないから。まあたまたま一緒になったらね」
「その時はだよな」
「一緒に行こう」
何とかにこりとした笑みを作って述べたのだった。
「一緒にね」
「その時はな。じゃあとにかく」
「来たわよ、電車」
話しているその傍からだった。左手から電車が来たのだった。言うまでもなく二人がこれから乗る電車である。
「じゃあね」
「ああ、行くか」
こうして二人はその電車に乗った。扉が中央から左右に開くとその中に入った。電車の中はというと。
「意外と人少ないわね」
「ああ。座れそうだけれどな」
「座るのは別にいいじゃない」
それについては微笑んで返してきた星華だった。
「それはね」
「いいか」
「そう、いいわよ」
いいというのである。
「別にね。どうせすぐだし」
「それもそうか」
「そう思うわ。それじゃあね」
「ああ、ここで立っていようか」
「そうしよう」
こう話してであった。二人は扉のところに立つころにした。しかしその時だった。陽太郎は自分の左斜め前の席に彼女を見たのだ。
「あれっ、あの娘」
「どうしたの?」
「いやさ」
その彼女を見ながらの言葉である。
「一緒の教室だったんだよ
「一緒って?」
「だから入試の時だよ」
その時だというのだ。
「その時に一緒の教室だったんだよ」
「そうだったの」
「へえ」
あらためて彼女を見る。今は八条高校の制服だ。青い短いスカートに白いハイソックスである。上着も青であるネクタイだけ赤である。
「あの制服なんだ」
「青と青ね」
星華はただ色を見ただけである。
「ただ。向こうの色はね」
「俺のは濃い青だからな」
そのマリンブルーの長ランを見て言う陽太郎だった。
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