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真田十勇士

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巻ノ百四十四 脱出その九

「ですから」
「あの者も来てくれるか」
「そして長曾我部殿もどうやら」
「あの者の星もか」
「落ちたと思いましが落ちかけたところで」
 そこで、というのだ。
「それがしも驚きましたが」
「空に残っておったか」
「そして後藤殿も」
「おお、あの者もか」
 後藤もと聞いてだ、彼を何かと頼りにしていた秀頼は思わず喜びの顔になった。そうして喜びの声で話した。
「生きておるか」
「どうやら大和の方に落ち延びられましたが」
「生きておるか」
「その様です」
「それは何より、ではな」
「やがてですな」
「薩摩に迎えたいのう」
「はい、時が来れば」
「そうしたいな」
「わかり申した、ではまずは」
「肥後に入りじゃな」
「そこから落ち着いて薩摩に入りましょう」
「その様にな」
 秀頼は幸村の言葉に船の中で頷いた、そうしてだった。
 一行は海に出て少し経ってから大きな船の前に出た、その船に乗り込むのは夜でしかも変装しながらだった。
 その船に乗り込んだ、その時に木下家の者達が言ってきた。
「お元気で」
「薩摩に行かれてもあちらでお幸せに」
 こう言ってだ、秀頼達を篤い礼で以て送り出した、そしてだった。
 大船にいる加藤家の者達も秀頼を篤く迎え入れて言った。
「ようこそ生きておられました」
「この船に乗られたならもう大丈夫です」
「海から行きますので」
「海にには人の目もありませぬ」
「もう心配は無用です」
「肥後まで行けますぞ」
「済まぬな」
 秀頼は加藤家の者達にも応えた。
「それではな」
「はい、これよりです」
「船は肥後に向かいます」
「それではです」
「ゆうるりとして下され」
「真田殿もご子息も家臣の方々も」
 幸村だけでなく大助そして十勇士の者達にも話した。
「ご安心して下され」
「肥後まで入られて下され」
「そしてです」
「城まで入られて下され」
「かたじけぬお言葉。それでは」
 幸村が応えてだ、そしてだった。
「お願い致します」
「我等は豊臣恩顧の家です」
「そのことは忘れていませぬ」
「常に何かあればと思っていました」
「その時が来たのですから」
 加藤家の者達は口々に言った。 
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