空に星が輝く様に
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252部分:第十八話 運動会その十
第十八話 運動会その十
「そういうことだから」
「最後の最後にか」
「その手はもう打っておいた」
ここでも椎名は冷静に述べた
「後は見ているだけ」
「俺達はか」
「選手達は必死だけれど」
二人はこんな話をしていた。そうしてであった。
最後の競技がスタートした。時間がかかるうえに校外で行われるので他の競技の前にはじまった。そのうえで全員走るのだった。
当然そこには星華もいる。彼女は最初から飛ばしていた。
「負けないからね」
先頭を走っていく。序盤から中盤はそれでいけた。しかしであった。
「えっ・・・・・・」
次第にペースが落ちてきたのだ。星華もそれを感じ何とか頑張ろうとする。
だが体力が追いつかずだ。次第に足が遅くなってきた。そして後ろから他のクラスの選手達がどんどんと迫ってきたのであった。
「まずい・・・・・・」
後ろをちらりと見て呟く。四組の選手達の姿は見えない。
「このままじゃ・・・・・・」
危惧を覚えた。そうしてであった。
その危惧は的中した。星華は遂に抜かされた。終盤に入ったところでだ。しかも抜いたその相手がだ。彼女にとっては問題だった。
「そんな、三組の」
見間違えようがなかった。三組の生徒の一人だった。そしてまた。
もう一人来た。それも三組の生徒だった。二人の三組の生徒に抜かされたのだ。
今彼女は三番目だ。何とかペースを元に戻そうとするが適わない。足が思った以上に動いてくれない。それで次第に焦りを覚えてきた。
「負けたら・・・・・・」
駄目なのはわかっていた。それでもだった。
ペースは元に戻らないまま距離だけを浪費していく。そして遂に。
学校に戻った。歓声が聞こえる。しかしだった。
「えっ、三位?」
「星華ちゃんトップじゃないの?」
「それに」
州脇達三人は帰って来た選手達を見て驚いていた。
「一位と二位って三組の」
「そうよね、ここで一番と二番取られたら終わりよ」
「優勝できないじゃない」
三人はこのことも危惧した。そうしてであった。
「星華ちゃんしっかり!」
「頑張ってよ!」
「あと少しだから!」
「わ、わかってるわよ」
星華は三人の言葉に心で頷いた。しかしであった。
「けれど・・・・・・」
足がもう思うように動いてはくれないのだ。自分がどう思ってもだ。
それで先に走る二人との距離を縮められないままだ。遂にゴールに着いた。
三番だった。結局それで終わった。倒れ込む彼女のところに三人が来た。
「大丈夫!?」
「動ける!?」
「飲みものいる!?」
「だ、大丈夫よ」
倒れ込み肩で息をしながら言った。
「けれどね」
「いいわよ、頑張ったんだし」
「そうそう」
「それはね」
「悔しい・・・・・・」
顔を俯けさせての言葉だった。その顔から銀色の汗が滴り落ちる。
「一番だったら優勝できたのに」
「それはそうだけれど」
「それでも仕方ないじゃない」
「そうよ」
「あいつに・・・・・・」
同時に二人脳裏に浮かんでいた。
「負けたし。いいところを見せられなかったし」
「負けた?」
「いいところって?」
「誰に?」
三人はその対象は一人だと思った。しかしそれは違っていた。そしてそれがわかるのはだ。他ならぬ星華本人だけであった。
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