FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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親子の絆
前書き
今日初めてBBQをやりました。
普段インドアな私もこれでアウトドア派の仲間入りですね。
尻流「一回でそれはない」
冷温「毎年やれ」
「ジェラール・・・」
現れたナイトに嬉しいような、恥ずかしいような表情を見せるエルザ。間一髪で彼女を守ったジェラールは、オーガストを睨み付ける。
「あれで懲りたと思ったが・・・まだ陛下に楯突くつもりか?」
鋭い眼光を向けるオーガスト。ジェラールは彼の実力は十分にわかっていたが、一歩も引くことはなかった。
「俺は・・・エルザがいたから今、こうして生きていられるんだ。だから、絶対に守り抜いてみせる」
死を怖れない勇敢さ。それは誰から見ても明らかではあったが、オーガストはそんな彼を可哀想なものを見る目で見つめていた。
「希望を持てば勝てるとでも?」
そんな甘いものではないと言わんばかりに突進してくるオーガスト。ジェラールはそれを受け止めようとしたが、魔力の違いからなのかあっさりと吹き飛ばされてしまった。
「くっ!!」
「ジェラール!!」
地面を転がるジェラール。オーガストは彼に杖を向ける。
「親子の絆・・・愛し合うものの絆・・・どれも浅はかだな」
そう言い放った彼の魔法はジェラールを直撃し、彼は血を吐きながら宙を舞った。
タッタッタッタッ
その頃、アイリーンから距離を取ろうとしていたメイビスは突如その足を止めた。
「どうしたの?初代」
偶然マカオたちとはぐれたことでメイビスと一緒にいたのはキナナのみ。それが運がよかったことをこの時の二人は知ることはない。
「・・・戻らないと」
「え?」
突然のそんな言葉にキナナは首を傾げた。彼女が引き留めようとするよりも早く、メイビスは元来た道を走り始める。
「ちょっと!!初代!!」
慌ててそれを追い掛けるキナナ。彼女が何を感じ取ったのか、それは誰にもわからない。しかし、何か使命感のあるその表情を見れば、止めることなどできるはずがなかった。
「私は・・・どうすればいいの?」
地面に横たわったまま涙を流し続けるヨザイネ。そんな彼女の・・・いや、母の姿を見ていたシリルはただ黙して動かない。
「あなたのことを大切に考えてきたはずなのに・・・なんで400年も気付かなかったの・・・?」
自分の愛が間違っていたのかと嘆くヨザイネだったが、それは仕方がないことだった。
なぜならシリルは400年間生き続けていたわけではない。彼はヨザイネがいなくなった後、ドラゴンになったヴァッサボーネに魔法を教えられ、その後はすぐにこの時代へとエクリプスを通じて送り込まれた。
400年間の空白・・・それではいくら天使であるヨザイネと言えども、息子の魔力を感じ取ることなど不可能だった。
「・・・母さん」
やったの想いで口を開いたシリル。ヨザイネはそんな彼を潤む瞳でじっと見つめている。
「俺は、ずっと母さんがいるなんて知らなかった。いや、わかってはいた・・・でも、何かの事情で俺と一緒にいられなくなったんだって思ってたから・・・」
決して口にすることはなかった。そもそもヴァッサボーネが人間だったことすら知らなかった。てっきり母と父を失った息子を育ての親であるヴァッサボーネが育ててくれたのだと・・・しかし、それは間違いだったことを知る。
「母さんが自分を責めることないよ。だって、俺もわからなかったんだから」
母も子も相手が何者なのかわかっていなかった。ただ、何かを感じたのは確かではあったが、それが確信を持つほどのものではないことは仕方のないこと。
「俺さぁ・・・正直どうすればいいのかわからなくなったんだよね」
自然と流れ落ちる涙。少年はそれを拭おうとすらしない。
「母さんとこれからどうすればいいのか、全く検討がつかない」
母であるヨザイネとこれ以上戦う理由はない。しかし、これまで多くの仲間たちを殺めてきた彼女を、許してしまうことが本当に正しいのか。
「・・・私もね・・・この先のことがわからないの」
ようやく起き上がったヨザイネ。彼女は傷だらけの息子を見て、奥歯を噛み締める。
「本当はあなたを抱き締めたい・・・でも、私は私たちを引き裂いたドラゴンを許せないの」
ドラゴンたちの醜い戦い・・・それによって彼女たちは引き裂かれることになった。それを思うと、目の前にいるのが愛しの息子であっても、心から歓迎することができない。
「「どうすればいいの・・・かな?」」
ビュンッ
杖から放たれる魔法。それをアイリーンがギリギリで防ぐと、続けて彼女が反撃に出ようとする。
「遅い」
「!!」
魔力を放出しようとした、しかし、オーガストはそれよりも早くアイリーンの後ろに回り込み、彼女の首元に杖を叩き込む。
「流星!!」
その間にジェラールが捨て身の体当たり。オーガストには魔法がここまで一度も通用していない。それを踏まえれば、この判断は当然ともいえる。
「遅い」
「!!」
流れ星並の速度になったジェラール。それなのに、オーガストはそれを上回る速度で彼の背後を取った。
「ガハッ!!」
「ジェラール!!」
背中を叩かれ勢いよく地面に倒れる。それをエルザが心配し叫ぶが、そんな彼女の目の前に敵は現れる。
「親子の絆も、仲間の絆も崩れ去るがよい」
完全に隙を突かれたエルザは反応をする余裕がない。そのままオーガストの杖が突き刺さるかと思われたが・・・
「天竜の咆哮!!」
それを遮るようにウェンディがブレスを放つ。
「小賢しい」
ウェンディの渾身のブレスを右腕で受け止めるオーガスト。それなのに、その腕には傷一つ付いていなかった。
「天空の滅竜魔法・・・なかなかのものだ」
「そんな・・・」
誰の魔法も通じず、為す術がない状態。数的には優位であるはずなのに、魔導王の前ではそれは無意味となっていた。
(どうすれば・・・)
もう勝つ道はないのか、諦めそうになったそんな時、戦場にもう一度光を灯すために一人の少女が舞い戻ってきた。
「みんな!!」
「「「「「!!」」」」」
息を弾ませてやって来たのはアイリーンから身を隠すために逃げたはずのメイビス。その後ろからはキナナも追いかけてきていた。
「初代!!」
「なんでここに!?」
メイビスの登場に驚く面々。だが、一番動揺していたのはこの男だった。
(母さん!!)
メイビスとゼレフの子供であるオーガスト。彼は母を見ると、ずっと彼女を思い続けてきたからなのか、わずかな隙が生まれた。
「そこよ!!」
「!!」
その隙を逃すことなく突いてくるアイリーン。オーガストはそれを交わすことができず転倒する。
「ぐっ・・・」
まだ動揺を押さえきれずにいるオーガスト。その時、アイリーンはあることに気が付いた。
「ようやくわかりましたわ、あなたの魔法の正体が」
「え・・・」
アルバレスで共に戦ってきた二人だったが、普段は一緒になることも少なく互いの魔法についてはほとんど知らなかった。しかし、彼の戦いぶりを見ていたアイリーンはそれに気が付いた。
「あなたの魔法は《瞬間コピー》。敵の魔法を瞬時にコピーし、無効化することができるのね」
オーガストは今まで戦ってきた魔導士たちに様々な魔法を見せてきた。それゆえに彼はあらゆる魔法を使える存在として認知されてきたが、それは魔法をコピーしていただけであり、本人が使えるわけではない。
「それなら道具を使う魔法はコピーできないはず!!エルザ!!」
「はい!!」
換装で妖精の鎧を身につけたエルザ。彼女はまだ硬直状態にあるオーガスト目掛けて突進する。
「ハァァァァァァァ!!」
オーガストはそれを防ごうと動こうとした。しかし、彼女の背後から見守っている母が視界に入ると、それが気になって仕方がなくなる。
「ぐあっ!!」
打ち上げられたオーガスト。エルザの魔法は鎧により戦闘能力を変えるもの。ゆえにオーガストに魔法をコピーされる心配はない。
(お父さん・・・)
致命傷になっていてもおかしくなかった。だが、オーガストはギリギリで堪えてみせた。
「バカな・・・」
「まだ立てるというの?」
これで終わるかと思っていた。しかし、そこは魔導王の二つ名を持つオーガスト。たった一撃で倒されるほどやわではない。
「私は・・・生まれながらに強大な魔力を持っていた。ゆえに捨てられ、疎まれ、生きることの行き止まりの壁に着いた時、陛下に命を救われた」
彼が語り出したその時、メイビスは何かを感じた。彼の言葉から感じられる重みと、彼の雰囲気から。
「スプリガン16筆頭魔導士オーガスト。例えこの身が砕けようと、汝らを駆逐せん!!」
全身が輝き出したオーガスト。だが、それは魔力によるものではない。いや・・・正確に言えば魔力によるものなのかもしれない。ただ、彼が輝いているのは体内に留められた強大な魔力によってのものなのだ。
「なんだこれは・・・」
「今まで感じたことがない魔力・・・」
あまりの魔力の大きさに目を疑うエルザとアイリーン。その近くにいたウェンディは、この魔法の正体をすぐに察した。
「神の領域・・・」
レオンが天海を倒すために使用した究極の魔力増幅魔法。自らの生命を危機に陥れるそれを、オーガストは平然と使ってきた。
「それは体の温度を高めてしまう魔法です!!やがて脳を溶かし命を危険に晒してしまうんですよ!!」
「知っておるよ」
「え・・・」
ウェンディの呼びかけに答えたオーガストは無表情だった。
「私の命で陛下の役に立てるなら、喜んで礎になろう」
父であるゼレフにその存在を気付いてもらうことはできなかった。それでも彼は構わない。自分が彼の役に立ち満足させられるなら、喜んで父のために命を捨てようと決心したのだ。
「命を何だと思っているんだ・・・」
彼の決意には感心するものがある。それでも、緋色の剣士はそれを許すことができなかった。
「この戦争は多くの犠牲が生まれている・・・散っていった仲間たちのために生きなければならない・・・それなのに貴様は・・・」
容易く命を投げ出す身勝手さに体が震えている。怒りを露にした剣士は袴とさらし姿に換装すると、最高の剣で男に立ち向かっていった。
「その程度で私に挑むとは」
決死の覚悟で挑んだエルザだったが、オーガストはそれを虫でも払うかのように叩き落とした。
「ぐっ!!」
「エルザ!!」
地面を転がる娘を見てアイリーンも玉砕覚悟の接近戦に打って出た。それでもオーガストは難なく跳ね返し、二人は地面に横たわる。
「親子の愛などそんなもの。私には全く通じない」
「・・・」
異常なまでに親子の愛を否定するオーガスト。それを見ていたメイビスは違和感を感じ取った。
(何?この感覚・・・)
誰かと重なる老人の姿。見た目も何もかも全く違うのに、彼女にはとある人物がその目に浮かんでいた。
「こうなったら俺が・・・」
「待ってください!!」
星崩しの体勢に入ろうとしたジェラール。しかし、それを妖精軍師が止めた。
「オーガストと言いましたね」
「・・・何か?」
メイビスはその目を見た時、確信を持った。これまで憎悪のそれしか持ち合わせていなかった彼の優しげな瞳。それだけで自分の仮説を信じるに足るものだった。
「あなたはゼレフの子供なんですね?」
「「「「「!!」」」」」
ようやく気付くものが現れた真実に、オーガストは頬を緩みそうになった。
「そうだ。だが、それを陛下は知る必要はない」
「そうですね。でも・・・」
自分の胸に手を当てたメイビス。彼女の目から一粒の滴がこぼれ落ちた。
「母である私は、知っておかなければならないと思いました」
「「「「「!!」」」」」
戦場に広がる衝撃。中でも一番それを受けていたのは間違いなく彼であろう。
「なぜ・・・それに・・・」
「あなたは、世界に拒まれ続けていたゼレフと思考が似ていました。そして、どこか私にも似ているように感じたんです」
何がそう思わせたのかはわからない。それでも彼女は、オーガストが自身の子供であることにたどり着いた。
「ゼレフは私が倒す・・・いえ、違いますね」
顔を上げて実の我が子に向き合う少女。その目には母親の優しさが感じ取れた。
「お父さんは私が救います。だから・・・手を貸してください」
自分にできることはゼレフの手助けをすることだけ。そう思っていた。しかし、目の前の少女はそれ以上に彼のため・・・そして、自分のためになることを提案してきた。
「私は・・・」
心が揺れ動くオーガスト。そんな彼にメイビスは歩み寄っていく。
「初代!!」
「待て!!エルザ!!」
みすみす敵に無防備にも歩み寄る彼女を止めようとするが、ジェラールが割って止める。メイビスは動けないオーガストを抱き締めた。
「私を信じて・・・オーガスト」
「・・・」
真剣に人を思う純粋さ。我が子に向けてくれる迷いのない愛。真実の愛に触れた彼の目からは、涙が止まらなくなっていた。
「私は・・・ずっとこうしてお母さんとお父さんに抱かれたかった・・・」
ずっと受けてこられなかった愛情に崩れ落ちるオーガスト。彼の体から放たれる光が消えた時、戦いが終わったことを全員が察した。
「・・・信じて・・・いいのか?」
「いいわよ。親子の絆は、絶対に切れたりしないんだから」
まだオーガストが味方になることが信じられないエルザ。そんな娘の頭を母が撫で回す。
「これで希望が見えてきたな」
「はい!!」
ゼレフを倒すためのさらなる力を手に入れたジェラールたちは希望に胸を踊らせていた。だが・・・
「結局裏切る運命だったんだな、オーガスト」
「「「「「!!」」」」」
それをぶち壊す男が、まだ残されていた。
「お前は・・・」
「な・・・」
「え?どういうこと・・・?」
突如現れた青年に驚愕するエルザ、ジェラール、ウェンディの3人。彼女たちは初めて見るティオスの素顔に言葉を失っていた。
「ティオス・・・」
「やっぱり来たわね」
この非常事態に一瞬で涙が乾いたオーガストはアイリーンと共に彼に向き直る。
「ヨザイネもまもなく裏切る。そうなると俺の努力が無駄になっちまう。その前に・・・」
人差し指を立ててメイビスにそれを向けたティオス。その指先に一瞬で大きな魔力が溜め込まれた。
「俺が妖精の心臓を手に入れてやろう」
ターゲット目掛けて繰り出されたレーザー。それにアイリーンもオーガストも反応することができず、脇を抜けてしまった。
「しまっ・・・」
「バカな・・・」
傷だらけのアイリーンはもちろん、ほぼ無傷のオーガストでさえ反応できない速攻に全員視線を動かすことしかできなかった。
避ける暇さえ与えられず迫ってくる光線。それはメイビスの体を・・・
グサッ
貫く前に、一人の青年に突き刺さった。
「チッ、火事場のバカ力ってところか」
誰も反応できないはずの攻撃。それを間一髪で受け止めたのは、星に愛された青年。
「ジェラール!!」
「エルザ・・・」
胴体を貫かれた彼の目には既に生気はなかった。崩れ落ちようとする青年に駆け寄るエルザ。
「エルザ・・・お前と出会えて・・・幸せだった・・・ありがとう」
エルザが駆け寄るよりも先に地面に落ちたジェラール。遠目から見ても結論が見えている彼の末路に、彼女は膝をついた。
「ジェラーーーールゥゥゥゥゥゥゥ!!」
後書き
いかがだったでしょうか。
新たな大どんでん返しが訪れましたよ。
オーガストが味方になる←希望が見える
ティオスが現れる←絶望に切り替わる
ゼレフの言った通りになりましたね、「君たちに明日は与えない」
主に奪ってるのはティオスですが(^^;
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