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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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彼女の正体は・・・

 
前書き
今年では終わらないだろうと思っていた当作品、なんだか終わりが見えてきてしまいました。
ちょっと展開が早すぎたかもしれない・・・と嘆いてももう遅いですが。 

 
「ふっふふ~ん♪」

今から400年前、ヨザイネは遥か上空からこの地を見下ろしていた。

「何してるの?ヨザイネ」

その彼女に声をかけたのは全身真っ黒の姿に金色の模様が入った黒髪の少女。彼女の頭には純白のリングが輝いており、背中には灰色の翼が生えている。

「ヤッホー、クロノス」

泉に映し出される世界を見ているヨザイネは今とは異なる姿をしていた。容姿や髪型こそ変わっていないものの、頭には純白のリング、背中にも同様の翼、そして真っ白な衣服に身を包んだ彼女はまさしく“天使”という言葉が似合う存在だった。

「また()()の様子を見ているのか?」
「いいじゃん別に~」

クロノスから指摘されたヨザイネは不服そうに口を尖らせる。別にクロノスはヨザイネが地上を見ているから怒っているのではない。注意する理由はもっと他にあるのだ。

「お前は本当にそいつが好きなのか?」

クロノスが咎める理由・・・それはヨザイネが見ている人物がいつも一緒なのだ。

「だってカッコいいんだもん」

彼女が見ているのは水色の髪をした所謂美青年といった感じの人物。確かに彼の見た目は非常によろしい。それはクロノスも間違いなく認める。だが・・・

「お前が恋をするのは勝手だが、忘れるな。私たちは天使であり、そいつは人間だ。私たちは決して結ばれることはない」

地上では時の神と評されているクロノスであるが、それはあくまでも人間たちからすればの話。実際は彼女は神ではない。神の下に使える天使であり、ヨザイネもまた同じ立場にいる。

「・・・わかってるわよ、そんなの」

ヨザイネはクロノスの言いたいことはわかっていた。だから彼女は毎日見ているだけで、行動に出ようとはしない。
もし地上に降りてしまえば二度と戻ってくることはできない。ましてや人間と結ばれようとすれば、天界から追放されることは目に見えている。だが、それでも彼女は、青年を諦めることができなかった。



















そして、ついに事件が起こってしまう。

「あの・・・」
「??」

霊峰ゾニア。今では一年中冬のような天候のその地も、400年前は至って普通の場所だった。そこで暮らしていたある青年の前に現れた一人の少女。

「お名前を教えていただけませんか?」

青年の前に現れたのはどこにでもいるような普通の少女だった。彼女の問いに彼は不信感を持ったが、不安そうな彼女の目を見てその気持ちをないがしろにするわけにはいけないと悟った。

「ヴァッサボーネ・アデナウアー」

青年は自らの名前を淡々と答えた。彼の名前を聞き出せた少女は嬉しそうに笑顔を見せる。

「ありがとうございます!!失礼します!!」

ぺこりと一礼してその場を後にしようとする。だが、ヴァッサボーネはそれを引き止めた。

「君は?」

立ち止まった少女。彼女は振り返り、幼さの残る笑顔で答えた。

「ヨザイネと言います。以後、お見知りおきを」

ヴァッサボーネの前に現れたのは、人間へと変化したヨザイネだった。彼女のその笑顔を見た青年は胸が熱くなるのを感じた。

「ヨザイネ・・・か」

















「ヨザイネ!!何をやっているんだ!!」

地上から戻ってきたヨザイネを待っていたのは、大切な友からのお説教。

「人間の姿に変化して地上へ降りるなど・・・いや!!自分の名前を人間にばらすなど言語道断だぞ!!」

大切な友であるがゆえに厳しい言葉をかけているのはヨザイネもわかっている。だが、彼女はこの時クロノスの言葉に耳を貸してはいなかった。

(ヴァッサボーネって言うんだ・・・カッコいいなぁ・・・)

上の空で聞いていたヨザイネ。それにはクロノスも気が付いていた。ボケッとしている彼女の表情を見たクロノスは、説教をするのをやめてしまう。

「もういい!!だが、これだけは忘れるな。もし人間と結ばれようとするならばその時は・・・」

鋭い眼光が友を捉える。しかし、彼女の表情を見てクロノスは奥歯を噛み締めた。

「・・・お前は天界から追放されるぞ」

そうは言ってみたが、彼女の決意は固いことはわかっていた。ヨザイネは間違いなくこの後も地上に出向き彼と仲を深めていく。恐らく・・・天使として永遠に生きることをやめ、人間として暮らしていこうと思っているのだろう。

(もしお前がそれを選ぶのであれば、私にも考えがある)


















それから人間の時で1年が経過しただろうか、ヨザイネはいつもの通り一目惚れした青年の元へと向かっていた。

「♪♪♪」

鼻唄混じりで、軽い足取りのヨザイネ。彼女はもう天使として生きていくとなどできないのはわかっていた。いつ全ての天使をまとめあげる神から追放の言葉を言われるのか、内心ドキドキしていた。

「あれ?今日はまだなんだ」

待ち合わせの場所へと着いたヨザイネは、かの青年よりも珍しく早く着いたことに内心びっくりしている。そのまましばらく待っていると、足音が近付いてくるのを感じた。

「ヨザイネ」
「ヴァッサボ・・・」

やっと来たと思った愛する人。しかし、目の前にいたのは人間の姿をした一番の親友。

「ヨザイネ、これがどういうことかわかる?」

そう言ってクロノスが見せたのは、彼女の魔力によって捉えられているヴァッサボーネの姿。

「クロノス!!どういうこと!?」
「お前は私の大切な友人だ。だからこそ、この手で終わりにしたい」

霊峰ゾニアで語り継がれる白き天女と黒き天女の戦い。それは一人の男を奪い合った少女たちの物語ではなかった。
真実は、愛に目覚めた少女と禁断のそれを止めようとする友との、悲しき戦い。
天使と天使・・・人間たちからすれば神同士の戦いと言ってもいい。それは激しくぶつかり合い、この地を裂くほどのものだろうと思われていた。しかし・・・

「なんで・・・クロノス・・・」

戦いはものの数分で決着した。愛する男性を取り戻そうとしたヨザイネが、クロノスを瞬く間に倒してしまったのだ。

「お前のいない天界になど、興味はない。私は時を司る・・・そうだ、私の力で時の都を作ろう。そしてお前の幸せが、永遠に続くように祈っている」

そう言った彼女は自らの魂を封じ込め、ミルディアンの地で眠ることにした。ヨザイネは大切な友との別れと引き換えに、人間として、最愛の男性と友に暮らすことになったのだ。





















それからさらに1年ほど経っただろうか、ヴァッサボーネとヨザイネの間に一つの新たな生命が誕生した。

「おお!!君にそっくりな可愛い女の子だな!!」

よくしゃべる青年は生まれたばかりの我が子を抱き締めそう言った。

「男の子だよ、ヴァッサボーネ」

その言葉に苦笑しながら答えるヨザイネ。二人の間に生まれた子供は、まるで大人しい女の子のような、生まれたときからわかるほどの魔力を内に宿した男の子だった。

「男の子か!!こりゃあ頼もしい子に育つだろうな」
「そうね」

まるでさっきと言ってることが違って思わず笑ってしまう。それに気付いたヴァッサボーネも盛大に笑っていた。

「・・・」

仲良さげに微笑み合う父と子。だが、ヨザイネの表情は晴れなかった。

「この子は人間と天使の子・・・ちゃんと育ってくれるのかしら」

人間は年と友に死へと近づくため、体が変化していく。しかし、天使には死という概念がない。そのため、ある一定のところまで体が成長すると大きくなれないのだ。

「ヨザイネ、ねぇ!!ヨザイネ!!」
「!!どうしたの?」

ボーッとしていた彼女に声をかけたヴァッサボーネは、笑顔を絶やさない赤ん坊を見せる。

「この子の名前、どうする?」

これから一生を担っていくことになる少年の名前。ヴァッサボーネはそれをヨザイネに託そうとした。

「あなたが決めて、ヴァッサボーネ」
「え?いいの?」
「えぇ。この子はあなたみたいな立派な人になってほしいから」

そう言われてはヴァッサボーネも断るわけにはいかない。しばらく彼の顔を見つめた後、ゆっくりとその名を口にした。

「シリル・・・シリル・アデナウアー」

シリル・・・ギリシア語のキュリロスに由来するとされており、貴族らしい、堂々とした、という意味が込められる。

「いい名前ね」
「よし!!今日からお前はシリルだ!!」

自分の名前がわかっているのか、パチパチと手を叩くシリル。この幸せな時が永遠に続くと思っていた。そう信じて疑わなかった。だが、その幸せはある出来事で簡単に終わりを告げた。


















ドゴォンッ

幸せな家族を襲った突然の悲劇。その原因は、自分たちよりも遥かに大きな生物たちの戦いによるもの。

「ヴァッサボーネ!!シリル!!」

少しずつ大きくなっていたシリル。大切な我が子を守ろうとしたヴァッサボーネは、頭から血を流して動けない。その腕に抱えられている少年も、泣くことすらせずに黙してただ、動かない。

「なんで・・・どうして・・・」

親友も失い、彼女の分まで幸せになろうとしていたのに・・・待ち受けていたのは全てを奪い去るドラゴンたちの戦争・・・竜王祭。

「おお?なんだ、まだ生きてる人間がおるのか?」

そう言ったのは水色のドラゴンに足を乗せ、傷もほとんどないドラゴン。彼は息も絶え絶えのドラゴンを踏みにじりながら、ヨザイネを見てヨダレを垂らしている。

「逃げろ・・・君だけでも・・・」

この水色のドラゴンは、元々イシュガルに住んでいた人間との共存を望むドラゴン。彼はまだ息のあるヨザイネに逃げるように諭した。

「いいえ」

その言葉を聞いた少女は、鋭い眼光で優勢のドラゴンを睨み付ける。

「私はこいつを殺します」

人間の発言とは思えない台詞。それを聞いた水色のドラゴンは唖然とし、人間を食料としか思っていないそいつは大笑いした。

「我を倒す?人間が面白いことを―――」

それ以上の言葉を、そいつは口にすることはなかった。純白の翼を広げたヨザイネが彼の土手っ腹に風穴を空けたのだ。

「バカな・・・君は一体・・・」

水色のドラゴンは彼女のあまりの強さに目を見開いた。一方の少女は、動くことができない最愛の二人に歩み寄る。

「私と一緒にいたから・・・あなたたちはこんな最期を迎えてしまったのね」

涙を流す彼女は、手にはめていた指輪を外した。それを最愛の息子の左手の薬指にはめる。

「あなたがくれたこのオパールの指輪は、私が持つには相応しくないわ。あなたのアクアリウムの指輪と・・・一緒に・・・」

ヴァッサボーネとシリルの額にキスをする。彼女は二人が目を開けてくれないのを見ると、目頭を熱くしながらその場を去ろうとした。

「お前・・・これからどうするつもりじゃ?」
「私は・・・全てのドラゴンを倒します」

固い決意を露にした少女。そんな彼女に、ドラゴンはあるものを渡そうとした。

「これを持っていけ・・・力になれるかもしれん・・・」

そう言って差し出したのは、滅竜魔法を使えるようになる魔水晶(ラクリマ)。しかし、ヨザイネはそれを弾き飛ばしてしまった。

「いりません。例えあなたがいいドラゴンだとしても、私はあなたたちを滅ぼすのだから」

大切な家族を失った彼女は、天使でも、人間でもない存在になってしまった。それが彼女が堕天使と名乗る理由。
そして、彼女がその場からいなくなった直後、奇跡が起こった。

ピカッ

突如ヴァッサボーネとシリルの手につけられた指輪が輝きだしたのだ。天使(ヨザイネ)の行った額へのキス・・・それはこの世界の一なる魔法“愛”として、奇跡を起こした。

「うぅ・・・」

命尽き果てたはずのヴァッサボーネ。だが、彼はヨザイネの愛の力と、彼女が残してくれた愛の賜物(指輪)の共鳴により、生き返ったのだ。

「貴様・・・生きているのか?」
「・・・ヨザイネは?」

ドラゴンが話しかけてくることよりも、最愛の女性がいなくなっていたことを気にかけるヴァッサボーネ。二人の愛の輝きを見たそのドラゴンは、あることを提案した。

「私はまもなく死ぬ・・・お主の肉体ももう終わりだろう」

ドラゴンの強襲から息子を守るために身を呈した彼の体はボロボロだった。意識を取り戻したとしても、生きていくことなど不可能なのは火を見るよりも明らか。

「我の肉体を使う気はないか?」
「え?」

予期せぬ提案に頭が混乱している。そんな彼を置き去りにして、ドラゴンは話を続けた。

「我の体を使えばあの少女もすぐに探し出せる。そうだ、その子を守ることもできるはずだ」

だが、もう人間として生きていくことはできない。大きな決断を迫られたヴァッサボーネ。だが、彼の答えは決まっていた。

「くれ、その体」

息子を、最愛の人を守れるのならば、人間でなくてもいい。きっと彼女もわかってくれる。そう信じ、彼はドラゴンの肉体へと魂を乗り移らせた。


だが、結果は知っての通り・・・堕天使と化したヨザイネとドラゴンとなったヴァッサボーネが再会することはできなかった。やがてアクノロギアの登場により竜王祭は終わりを迎えた。
そしてヨザイネは大切な二人との思い出があるこの地を、二人の最期を思い出さないためにと離れ、ヴァッサボーネは彼女を探しながら、シリルに滅竜魔法を教え、彼の成長を見守ってきた。
二つの指輪を、二人の初めての出会いの地に残し。




















「お・・・お母さん・・・ってこと?」

ヨザイネの過去を聞いたシリルは困惑していた。だが、それはヨザイネも一緒だった。

「目の前に息子がいたのに気付くことすらできないなんて・・・最低な母親ね・・・」

自分の愛は真実なのか、疑ってしまうほどに心が弱りきっている。彼女の目から輝きが薄れていた。

「私はどうすればいいのかしら?ヴァッサボーネ」









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ヴァッサボーネ・・・元々人間だったがシリルとヨザイネを守るためにドラゴンになった。
ヨザイネ・・・元々天使だったがヴァッサボーネと一緒になるために天界を捨てた。
シリル・・・つまりドラゴンと天使のサラブレッド?

これでシリルが大きくならない理由がはっきりしましたね。天使の子供だから天使同様ある一定以上年を取らない。ハッ(゜ロ゜)まさかウェンディも天使なのでは!? 
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