とある3年4組の卑怯者
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164 後遺症(トラウマ)
前書き
たかしはタロの散歩中、同じくベスの散歩をしていた城ヶ崎と遭遇する。二人で隣町まで行き、お互い散歩の一時を楽しんでいる所、道路でキャッチボールをしている不作法な男子達に絡まれてしまった!!
今回は119~125話で堀さんがつけられた「心の傷」について触れます。
たかしは怒りが込みあがった。自分や城ヶ崎の犬が見知らぬ男子にグラブをぶつけられたからである。
「い、犬を、犬をいじめるなーーー!!」
たかしは太った男子に掴みかかって殴り、もう一方の小柄な男子にも殴った。
「あ、てめえ、調子乗んなよ!」
「ウエッ、こいつ男の癖して女子と仲良くしてるなんてよ、変な奴だな!」
小柄な男子がたかしを抑えつけた。
「小倉、やっちまえ!」
小倉と呼ばれた太った男子はたかしの顔を殴った。たかしは殴られ続ける。
「に、西村君っ!」
城ヶ崎はたかしが学校でいじめられていたことを思い出した。
(そうだ、あの時西村君がいじめられていた時はさくらさんが必死で庇っていた・・・。あの時は私はただ可哀想に見るしかできなかった・・・。でも今は私だって西村君は大切な友達・・・)
ここにいる男子達は各務田出吉や堀内竜一よりも非道な者かもしれない。しかし、逃げるとかただ見ているだけなんてたかしにもっと悪い。城ヶ崎は覚悟を決めた。
「やめなさいよっ!」
城ヶ崎は吠えた。
「ベスっ!」
城ヶ崎はベスにたかしを殴っている太った男子に掴みかかるよう命令した。ベスはボールを口から捨てると狼のようにその男子に噛みつくかのような勢いで飛び掛かった。タロが悲し気に吠える。その隙に城ヶ崎はたかしを抑えつけている男子に掴みかかった。
「西村君を放しなさいよっ!!」
城ヶ崎は小柄な男子の腕をたかしから解こうとした。しかし、相手も強情で簡単には解けない。城ヶ崎はその男子の髪や頬を引っ張ったりした。その瞬間にたかしは何とか脱出できた。
「西村君っ、大丈夫っ!?」
「う、うん・・・」
城ヶ崎はその男子から手を放すと、たかしを心配した。たかしの顔は殴られたせいで顔があちこち赤く腫れあがっていた。その小柄な男子は太った男子を助けようとした。
「ウエッ、この野郎、放しやがれ!」
小柄な男子はベスを太った男子から引き離そうと蹴飛ばそうとした。ベスが「キャン!」と悲鳴をあげる。
「ウエッ、このクソ犬め!」
太った男子はすぐさま立ち上がり、小柄な男子と共にベスを踏みつけ始めた。
「べ、ベスっ!私の犬に何するのよっ!このデブっ!焼きそば頭っ!!」
城ヶ崎は太った男子に体当たりし、焼そば頭と罵った小柄な男子にも飛びかかった。
「ウエッ、てめえ、誰がデブだって!?ウンコ頭!!」
太った男子が小柄な男子を抑えている城ヶ崎に襲いかかる。その時、たかしが決死でその前に立ち塞がり、城ヶ崎を庇った。たかしが太った男子の手首を掴む。
「ウエッ、この野郎!」
太った男子はたかしの腹を蹴った。たかしはその場で踞り、太った男子はさらに両足でたかしの背中に乗って踏んづけた。
(西村君っ・・・!!)
「キモいな、さわんじゃねえ!」
城ヶ崎もたかしの方へ余所見をしている隙に自分が押さえつけている男子から口の部分を勢いよく殴られた。城ヶ崎は口内に血の味がするのを感じた。その時、ベスが相手に飛びかかる。タロも太った男子の足に噛みついた。
「いてえ!この犬!」
太った男子はタロを放そうと首を絞めようとした。タロがこれまでにないくらい「キャーーーン!!」と喚く。
「タ、タローーー!!!」
城ヶ崎はベスが小柄な男子と格闘している間にその場からたかし達の所に向かった。
「その手を放しなさいよっ!!」
城ヶ崎は太った男子の手首を掴んだ。たかしもその男子の反対の手首を掴む。強引にも離れそうにないので二人はその男子の手首に噛みついた。
「いてえ!!」
その男子は噛みつかれたあまりにタロを手から放してしまった。
「ウエッ、こいつら!」
太った男子は噛みついている二人を地面に打ち付けて放し、まずたかしを引っ張り上げると、川の土手の下に落とそうとした。
「西村君っ・・・!!」
城ヶ崎はその男子を必死で止めようとした。先ほどベスが捨てた野球のボールがその場にあるのに気づくと、そのボールを男子に向かって投げ、背中に当てた。しかし、ベスと格闘していた別の男子がベスを何とか引き離すと、すぐさま城ヶ崎に跳び蹴りした。城ヶ崎の脇腹に命中し、城ヶ崎は再び動けなくなった。
「痛え!ウエッ、熊谷、こいつも川に捨てちまえ!」
「そうだな」
熊谷と呼ばれた小柄な男子は城ヶ崎のコートを掴むと、彼女の足を蹴りながら川の土手近くまで引っ張った。
藤木達はスケート場で滑った。世界大会を控えている藤木にとっては練習にもなれた。藤木はみきえと手を繋いで滑り、彼女にも少し照れたが、他に好きな女子がいるため、彼女らの事を考えるとさすがに鼻の下は伸ばせなかった。四人はスケートを満喫した後、川沿いの道を歩いていた。
「みきえちゃん、今日は楽しかったよ」
「うん、こっちこそ。美葡ちゃんのスケートも凄かったけど藤木君のも凄かったよ。リンクにいた人達を皆驚かせてたもんね。私も藤木君のスケート応援するよ」
「いやあ・・・」
川沿いを歩く四人。その時、藤木達は悲鳴と怒鳴り声を耳にした。犬の悲鳴も混ざり合っている。
「何だ?」
藤木達は声の方向を向くと、一人の男子が太った男子に、そしてもう一人の女子も別の男子に道路から河川敷へと投げ捨てられている所を発見した。藤木は投げ捨てられた二人は知っている顔だった。
「何あれ!?酷いね!!」
みきえは男子達の行動に怒りを覚えた。
「あ、あの人達は!」
一方、みどりはいじめている男子達に見覚えがあった。かつて堀へのいじめの主犯格であった小倉こうへいと熊谷まなぶだった。そしてその二人から暴行を受けているのはたかしと城ヶ崎だった。
「や、やられてるのは僕の学校のクラスメイトだ!!」
「ええ!?」
みどりとみきえは驚いた。
「大変!止めないと!あれ、こずえ・・・?」
みきえは堀が体が震えて動けなくなっている事に気付いた。
「堀さん、どうしたんだい?」
みどりは二人にある真相を伝えることにした。
「藤木さん、みきえさん!実は堀さんは、学校であの人達にいじめられていたんです!!」
「ええ!?」
「あの二人が堀さんを・・・!!」
藤木はさらなる怒りが込みあがった。そしてその現場へと近づく。今までの彼なら怖いと思って逃げるという卑怯な行為に出ていただろう。しかし、自分を不幸の手紙の地獄から救ってくれた女子をこんなトラウマを与えるくらいにいじめた事に対する怒り、そしてリリィに笹山と卑怯を治すという約束をした事もあり、見過ごすわけにはいかなかった。
「堀さん、ここは私達が行きますので安心してください!」
「そうだよ、無理しないでいいよ」
みどりとみきえも藤木について行った。
「君達、僕の友達に何をした!?」
藤木は小倉と熊谷に文句を言った。
「ああ!?なんだおめえは!?」
「この人は私の友達です!!」
みどりとみきえも現れた。
「ウエッ、吉川か。んだそいつらは!?」
「私は堀こずえの転校前の友達!あんた達、こずえをいじめていたって!?ふざけんじゃないよ!!」
みきえはまず小倉に、そして熊谷に平手打ちをした。
「なんだ、この野郎!?」
「ウエッ、堀の友達だってよ!熊谷、やっちまおうぜ!」
「や、やめろ!!」
「だめだよ、藤木君!ここで喧嘩して怪我したら大会に出られなくなっちゃうよ!!」
みきえは藤木を止めようとした。
「で、でも見てるだけなんてそんなのできないよ!!」
小倉と熊谷がみきえに襲いかかる。
「みきえさん!!」
みどりが決死の覚悟で小倉に頭突きした。
「この、泣き虫野郎・・・!!」
熊谷がみどりを蹴ろうとする。藤木も動かなければと持っていたスケート靴で熊谷を殴った。
「うう・・・」
河川敷に落とされたたかしと城ヶ崎はやっと立ち上がった。
「西村君っ、大丈夫っ!?」
「う、うん・・・。タロとベスは・・・?」
タロとベスは道路で二人に向かって悲しげに吠えていた。そして道路では三人の男女が二人組の男子と対抗している。
「あれは藤木?そしてあの子は・・・?」
城ヶ崎は一人の女子は知らなかったが、別の女子は知っていた。
(あの子は確かっ・・・!!)
「てめえ、ふざけんじゃねえぞ!」
熊谷が自分をスケート靴で殴った藤木に飛びかかった。
「スケート靴なんか使いやがって!卑怯な奴だな!」
「う・・・」
熊谷は藤木のスケート靴を取りあげた。
「か、返せ!」
「嫌だね、こんなので殴る方がわりいんだよ!」
一方、みきえを庇ったみどりは小倉から顔面を殴られた。
「吉川さん!」
みどりは鼻血を出していた。
「ウエッ、今度はてめえの番だ!!」
小倉はみきえの顔を殴った。そして彼女の腹を蹴った。みきえが呼吸できなくなる。
(こんな時に倉山さんや麹江さんがいれば・・・)
みどりはそう思ったが、都合よく倉山や麹江が現れるわけがなかった。
一方、堀はいじめの恐怖を思い出して動けなかった。
(ごめんね、私の代わりに・・・。みきえ、藤木君、吉川さん・・・)
しかし、藤木が熊谷の靴を取りあげた事ではっとした。あれがないと藤木は大会に出られなくなる。このまま自分はトラウマにとらわれて見ているだけでいいのか。そんな時、笹山の見舞いに行った時、その時の彼女の言葉を思い出す。
《堀さんも負けないで・・・》
堀は思いきって走り出した。
後書き
次回:「漂流」
堀はいじめのトラウマを振り切って乱闘に飛び込もうとする。たかしと城ヶ崎も再起するが、熊谷がタロを川へと投げ捨てる。たかしと堀はタロを助けようとして・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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