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レーヴァティン

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第六十話 召喚士その十一

「誰もが甘いものが好きで」
「お酒もっちゃな」
「どちらも好きです」
「ううむ、両方っちゃ」
「そうであります」
 こう愛実に話すのだった。
「かく言うわし自身も」
「どっちもっちゃ」
「ういろうもお酒もであります」
 まさにどちらもというのだ。
「ただ。同時には飲み食い出来ないでありますが」
「まあそれはっちゃ。日本酒に和菓子は合わないっちゃ」
 それは当然だとだ、愛実も返した。
「蜜柑とは結構合うだっちゃが」
「蜜柑とは合うでありますか」
「一度やってみるといいっちゃ」
 試しで、とだ。愛実は峰夫に笑って話した。
「実際に美味しいっちゃよ」
「それは意外であります」
「あとさんらんぼもいいかも知れないっちゃよ」
「さくらんぼも」
「こっちはうちは試したことがないっちゃが」
 それでもとだ、愛実は峰夫に饒舌な感じで話した。
「太宰治さんの小説で出ていたっちゃよ」
「さくらんぼといいますと」
「桜桃だっちゃな」
「あの作品でありますか」
「そうだっちゃ」
 その通りだとだ、愛実は峰夫に笑って答えた。
「太宰さんの命日の名前にもなってるっちゃな」
「桜桃忌でありますな」
「あの作品の最後の飲み屋の場面で出て来るっちゃ」
「それで桜桃でありますか」
「そうなるっちゃ」
「それは知りませんでした、わしも太宰はそれなりに読んできたであります」
 それでもとだ、峰夫は眉を顰めさせ少し残念そうな顔になり愛実に話した。
「しかし桜桃は」
「なかったっちゃ」
「走れメロスや富嶽百景はあるであります」
 どちらも太宰の代表作である。
「あとは津軽や帰郷も」
「けれど桜桃はっちゃ」
「太宰の末期の作品は読んでいないであります」
 それで桜桃も読んだことがないというのだ、太宰の末期の作風は中期のそれと違い前期に戻ったというかより自己破滅的自己退廃的傾向を濃くしていっている。
「自殺する寸前ということで」
「だかかっちゃ」
「読んでいないであります」
「それで桜桃も知らないっちゃな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「そうであります」
「成程っちゃ」
「これは芥川もであります」
「末期の作品は読んでいないっちゃ」
「点鬼簿という作品を読み」
 中国の言葉である、日本で言うところの閻魔帳だ。 
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