僕のヒーローアカデミア〜言霊使いはヒーロー嫌い〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
USJ in 山岳ゾーン
「うぅわ!!!」
「・・・んぐ!?」
黒い背景に白い稲妻が走るヒーローコスチュームに、『特製電子変換無線』を右耳につけた上鳴と、口元あたりにスピーカーの取り付けられた長めのウインドブレーカーを着込む緋奈は、敵達から逃げていた。
「コエー!! マジ!! 今、見えた!! 三途見えたマジ!! なんなんだよ、コイツらは!! どうなってんだよォ!!!?」
「やばっ、マジ。 お、ぅえ。 あ、吐きそう」
敵の攻撃にビビる上鳴と、違う意味でヤバい緋奈は、模造の小剣と、細長い鉄の棒を各々手に、応戦する耳郎と八百万の近くへと避難する。
「そういうの後にしよ」
「ええ、そうですわ。この数を早く何とかしなければ、緋奈さんが吐いてしまいますわ」
「いや、あいつもうリバってんぞ!?」
「「え?」」
上鳴の言葉に緋奈の方を向くと、
「」
床に四つん這いになって、昼に食べた物を全て吐き出す緋奈の姿があった。
「ちょ、アンタ何こんな時に吐いてんの!?」
「ひ、緋奈さん!?」
「リバってる場合じゃねえぞ! 桜兎!!」
八百万達は緋奈にそう声をかけるが、絶賛嘔吐中の緋奈は言葉を返すことが出来ない。ただ、そんな彼らを待ってくれるはずもなく、
「へへへ! 今がチャンスだ!」
「よそ見してんなよ、イヤフォン女!!」
「テメェもだぜ、ゲロ吐き中の兄ちゃんよォ?」
敵達が襲いかかる。
「緋奈さんはやらせませんわ!」
「マジあとでなんか奢れよ! 桜兎!!」
「こんな時に面倒事増やさないでよ!」
八百万達はそう叫んで、敵達の攻撃をあらゆる手段を使って凌いでいく。ただ、集団相手に四名(一人嘔吐中)では勝ち目がない。どれだけ凌いでも、時間が過ぎていく度に八百万達のスタミナが減っていくだけで、伸ばせば伸ばすほど勝ち目が薄れていく。
「つーか、あんた電気男じゃん。 バリバリっとやっちゃってよ!」
「あのな、俺の個性はそんな便利なもんじゃねえんだよ!? 電気を纏うだけだ俺は!
放電できるだけど、操れるわけじゃねーから、3人とも、巻き込んじまうの!あれだ!轟と一緒よ!? つーか、俺にも武器くれ! それに救けを呼ぼうにも特製電子変換無線、今ジャミングヤベぇしさ。 いいか!? 二人とも! 今、俺と緋奈は頼りになんねー!!頼りにしてるぜ!!」
長々と言葉を並べる上鳴。
「男のくせにウダウダと・・・じゃあさ、人間スタンガン!!」
「マジかバカ!!!」
情けない上鳴に呆れる耳郎は名案とばかりに、上鳴の背中を蹴った。 そしてその方向には、敵がいた。
「へへへ、自分から死にに来8t--ぐわああああ!?」
敵が拳を振りかぶった瞬間、帯電状態の上鳴が身体に触れ、電気が迸った。
「あ、通用するわコレ! 俺強え!!」
バチバチと全身で敵を痺れさせる上鳴。
「ふざけんなよ、ガキィ!!!」
と、上鳴めがけ敵が二人、襲いかかる。 テレビほどの大きさの岩が振り下ろされ、直撃する瞬間、上鳴を守るように風が生じた。その風は増殖し、的確に敵だけを切り裂いていく。真っ赤な血が風に溶け込み、真紅の風と化す。それを起こしたのは、先程までリバースしていた緋奈だ。
「うっぷ。 ・・・気持ち悪い」
顔色の悪いまま、両手で風を操り続ける。五分間ほど風を操り、やがて効果が消える。その頃には全身に無数の切り傷を刻まれた敵だけが地面に倒れていた。中には、目を切り裂かれた者や耳を裂かれた者、身体の一部に深い切り傷を刻まれた者がいた。ただ、数人ほど、風を凌いだ敵がいたようだ。
「う・・・おぇぇぇぇ!!」
再び嘔吐感に襲われた緋奈は、リバースを再開する。
「あの野郎! ぶっ殺してやる!」
「死にやがれ、クソガキィ!!」
「ヒャッハー!!」
同胞をやられた怒りというより、子供に付けられた小さな傷に怒りを示した敵達がリバース中の緋奈の背中めがけて、ナイフや拳、鞭に爪、といったあらゆる攻撃手段を振り下ろす瞬間、
「出来た!!」
八百万がそう叫んで、緋奈に襲いかかる敵達を鉄の棒で振り払った。 そして、耳郎と緋奈が近くにいるのを確認し、
「時間がかかってしまいますの。 大きなものを創造るのは」
ムクムクと背中の服の素材が形を変え、大きなシートが形成された。そして、それに隠れる八百万は、
「厚さ100ミリメートルの絶縁シートです。 上鳴さん」
隙間から上鳴にそう声をかける。
「・・・なるほど」
ニヤリと上鳴は笑い、
「これなら俺は・・・クソ強え!!!」
全ての電気を身体から外へと放出させた。その電気は絶縁シートにより安全な八百万達を除いた敵だけに感電した。バタバタと敵が倒れ、無力化に成功する。
「さて・・・他の方々が心配・・・合流を急ぎましょう」
「それもそう・・・ごぶァ!?」
「なにこっち見ようとしてるの!? バカ!!」
八百万の方に視線を移そうとしたタイミングで、視界に耳郎の拳が見えたと思ったら、視界一面に肌色が見え、それと共に強烈な痛みが顔面を襲った。
「な、何するのさ、響香ちゃん?」
「わ、わぁ!? 今、ほんと見ちゃダメだから!あれだから! 服がちょうパンクだから! 発育の暴力だから!」
「あたふたと手を忙しなく動かす耳郎によって八百万の様子が見えない緋奈は殴られた顔を押さえながら、口を尖らせる。ちなみに、最後の最後に大活躍をした上鳴はというと、
「うェ〜〜い」
アホそうな顔で両親指を立てていた。
ページ上へ戻る