僕のヒーローアカデミア〜言霊使いはヒーロー嫌い〜
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入試
前書き
連続投稿‼︎
実技試験の会場はバスでの移動。暫くして、演習場Aに到着し、ゾロゾロと生徒達がバスを降りる。 皆、能力にあったスポーツウェアを身につけていた。かくいう、緋奈も白に黒のラインが入った上下のウインドブレーカーを着込んでいた。ただし、緋奈の場合は能力関係なしでデザイン性を求めただけである。
「さーて、いっちょやりますかね」
軽く準備運動をして、いつでも動けるように構える。と、
『ハイ、スタート―!』
モニタに大きく映し出されているプレゼント・マイクが試験開始の合図をかける。その声に咄嗟に反応できたのは数名。その中には緋奈も含まれていた。
「【風】」
と、地を踏み抜くとと共に呟いた瞬間、文字通り、加速した。メキャッと床を踏み砕く音が炸裂し、一瞬にして数十メートル以上の距離まで辿り着く。
これが桜兎 緋奈の個性【言霊】。 言葉にした事象を現実に表せる効果を持つ。因みにこれは一つ目の使い方の『自然干渉』だ。持続時間は五分。
『どうしたあ!? 実践じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れ!! 既に一人走ってたぞ!そいつに続け!!続け!!賽は投げられてんぞ!!?』
プレゼント・マイクの余計なお節介が響き渡る。
限られた時間の中、広大な敷地で状況をいち早く把握する為の情報力。
遅れて登場じゃ話にならない機動力。どんなに状況でも冷静でいられるか判断力。
そして……純然たる戦闘力。
(・・・ほっときゃいいのに)
優しいな。と呆れながら緋奈は更に言葉を紡ぐ。
「【翼】」
すると、ウインドブレーカーを突き破り、背中から翼が現れた。
これが【言霊】二つ目の使い方、『具現化』だ。一度覚えた物を言霊を使って具現化させる。 持続時間は制限無し。
そして、ビル群のうち、まぁまぁ高いビルの上に降り立つ。上空から見渡せるということは戦場を支配したも同然だ。
「すぅ・・・はぁー。」
翼を消し、心を落ち着かせるように息を吸い吐く。そして、右手でピストルの形を作る。それを仮装敵と呼ばれるロボットに向け、
「【爆発】」
そう呟いた。 瞬間、下の方で生徒を探して動き回っていた仮装敵が爆発した。まるで砲撃を食らったかのように。
さらに続けて、左右で駆動する仮装敵二名の方に両手を向け、
「【重力】」
そう告げる。 それに伴い、見えない力で押しつぶされるかのごとく、仮装敵がひしゃげた。
「これで7P。 できれば目立たない中間ぐらいの順位になりたいから、もうちょい稼ごうかな!」
指を鳴らし、槍を投げるような投擲モーションに入る。 そして、
「【槍】」
告げる。すると、
ドズン!
と鈍い音をあげて横っ腹を穿たれた仮装敵がビルに激突し、撃沈した。窓ガラスが割れ、パラパラと地面に降り注ぐ。
「これで10P!」
緋奈はガッツポーズを決めた。
彼の【言霊】は使い方次第で最強の個性かもしれないが、絶対的力に弱点はある。
それは--『順序』と『頭痛』だ。『自然干渉』を使ったら次は『具現化』→『自然干渉』→『自然干渉』→『具現化』という並びが大事だ。 さらに、使用する度に、頭痛が起こり、その痛みは『軽く小突かれる痛み』→『掌で叩かれる痛み』→『拳で殴られる痛み』→『針で脳を貫かれたような痛み』→『指で脳をこねくり回される痛み』→『失神するほどの痛み』の順に使用者に襲いかかってくる。
現在の【言霊】使用回数は5回。頭痛レベルは『掌で叩かれる痛み』だ。5回毎に頭痛レベルが上昇する仕組みになっている。なので頭を使って戦わなければならない。
「次はアイツらかな」
緋奈はそう呟いて、ビルから飛び降りると共に、
「【暴風】!」
と叫んだ。 それと同時に道あたりを蠢く仮装敵六体を風の刃で切り裂き破壊する。これで、22P。最低で百近くの方がいいかもしれないと考え、更に先ほど干渉した暴風を指で操り、続けざまに仮装敵を10体倒す。そこからは暴風のみで仮装敵を蹴散らしていく。やがて5分が経ち、暴風が消える。だが、ポイントは97ポイントまで到達した。
「ふぅ。まぁ、こんなもんかな」
額の汗を拭って、緋奈は大きく伸びをした。と、突然、背後の方から大きな音がした。
「ん? 地震?」
呑気そうに背後に顔を向けると、そこにいたのは--巨大な仮装敵だった。なんと表せばいいのか、言葉にするのも難しいフォルムをしたロボット。確か、0ポイントの仮装敵だった筈だ。緋奈は自分には関係ないという表情で、こちら側へと逃げてくる受験生達の邪魔にならないように左側のビルの割れている窓から中へと侵入する。その間にもズンズンと0P仮装敵が前進する。しかも音の発生源はここだけではなく、他の場所からも響いてくる。どうやら0p仮装敵は数体存在するらしい。
試験時間は残り5分。このまま身を隠して待機していれば、余裕で合格ラインに達する。チラッと外の様子を確認し、
「・・・ここで待機してよ・・・」
うかな、と最後まで言葉が続かず、緋奈は無意識にビルから飛び出していた。
なぜなら--0P仮装敵のせいで倒壊したであろうビルの向かいの傍の道路。そこに、足を挟まれて身動きの出来ない、前髪の両端が長い茶髪のショートボブの少女がいた。
「人助けなんて柄じゃないんだよ、僕は!」
と、誰かに八つ当たりするような叫んで、緋奈は瓦礫の下に足を挟まれている少女の元に駆け寄り、声をかける。
「君、大丈夫?」
「え・・・? だ、誰?」
「それは後でいいかな? 今からアレ倒してくるから」
緋奈は足以外に怪我した部分はないかを瞬時に確認し、そう声をかけて、立ち上がる。
「これは禁じ手なんだけど、そんなこと言ってられないかな」
緋奈はそう呟き、手ぶらの状態で0P仮装敵に向かっていく。個性を使わず、無謀だと避難した受験生達が叫ぶ中、緋奈は歩くのをやめた。徐々に近づいてくる0P仮装敵の巨大な足。やがて、数メートルの差になり、次、0P仮装敵が一歩進んだら、緋奈は潰され死ぬ。そして--足を上がり、緋奈を踏みつぶ--
「【後ろに下がれ】」
さなかった。 更に驚くことに、0P仮装敵が前に出した足を止め、ゆっくりとした動きで後ろに下がった。
「【自分を殴れ】」
緋奈がそう言葉を紡ぐと、0P仮装敵は、自身の巨大な機械の拳を、動くために必要な動力源のある顔にぶつけた。しかもフルスイングでだ。ドデカイ衝撃が生じ、0P仮装敵はビルを巻き込んで倒れ込み、撃沈した。
これが【言霊】最後の使い方、『対象物の操作』。 対象者を言葉で操る禁じ手。普段使わないのはリスクを伴うからだ。
そのリスクというのが、
「あ・・・やば」
意識の喪失。グラッと緋奈の身体が揺れ、地面に倒れる。そして、意識が喪失する瞬間、試験終了の合図がなり響いたのだった。
後書き
連続投稿します
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