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とある3年4組の卑怯者

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163 恋心

 
前書き
 堀の転校前の学校の親友・雪田みきえが清水に訪れ、藤木のスケート姿を生で観たいという話を聞いた藤木。一方、たかしは城ヶ崎がピアノコンクールの時に友達になった島根県にいる少女の所に行っている間に彼女の犬・ベスを預かる事を承諾するのだった!! 

 
 とある日曜日、たかしはタロの散歩をしようと家を出た。
「それじゃあ、今日も色んな所を言ってみようか」
 タロは嬉しそうに「ワン!」と返事をした。

 藤木は堀の家に到着した。堀の母が出迎えた。
「あ、藤木君。いらっしゃい。今ウチの子呼ぶわね」
 堀の母が娘を呼んだ。
「あ、藤木君。来てくれてありがとう。私の友達と吉川さんも来てるわ。上がって!」
 藤木は堀が使っているとされる部屋に入った。そこにはみどりもおり、また二つ結びのおさげの女子がいた。
(この子が堀さんや美葡ちゃんの友達か・・・。堀さんと同じくらい可愛いな・・・)
「こんにちは」
「こんにちは。君が藤木茂君だね。私は雪田みきえ。君の事はこずえや美葡ちゃんから聞いてるよ。宜しくね」
「あ、うん、宜しく・・・」
「そうそう、藤木さんのスケート姿、カッコいいんです!私もそれで藤木さんが好きなんです!」
「み、みどりちゃん・・・」
 藤木はみどりがそう言うのでいきなりみきえから自分がみどりが好きだと誤解されるのではないかと不安になった。
「へえ、確かに背も高いから吉川さんの言う通りかもね!」
「いやあ、そんな・・・」
「そうだ。美葡ちゃんのお父さんが録画したビデオ借りたんだ。皆で観ようよ!」
「はい!」
「借りたのかい?」
「うん、こずえや吉川さんも見たいかもしれないと思ってね」
「私も見たいわ」
(堀さん・・・)
「うん、いいよ。銀賞者の演技、よく見てくれよ!」
 みきえはビデオの準備をした。

 たかしはタロの散歩に出かけた。と、その時、野口とすれ違った。
「あ~ら、西村君・・・」
「の、野口さん・・・」
「犬の散歩かい?いいね・・・。クックック・・・」
「うん、そういえば野口さんは九官鳥を飼ってるんだっけ?」
「そうだよ・・・。クックック・・・」
「へえ、今度見てみたいね」
「今度ウチに来るといいよ・・・。クックック・・・。それじゃあ・・・」
 たかしは野口と別れ、商店街を歩いて行く。その時、よく知るあの女子がいた。
「あ、城ヶ崎さーん!」
「西村君っ!」
 城ヶ崎もベスを連れていた。
「こんなとこで会えるなんて驚いたよ」
「私も。折角会ったから一緒に散歩しましょうか」
「うん、そうだね!」
 たかしとタロは城ヶ崎にベスと、二人と二匹で一緒に散歩した。
「そういえば城ヶ崎さんのその島根にいる友達ってどうやって仲良くなったの?」
「ああ、あの子が私が美人でピアノの上手いって話しかけて来たの。その子もピアノが凄く上手くてコンクール本番では銀賞獲ったのよっ!」
「うわあ、凄いね!」
「うん、それで仲良くなって文通することになってねっ、休みの期間に遊びに来ないかって。それでパパとママに頼んでオーケーしてもらったわっ!」
「そっか、また会えてよかったね。その間ベスをうんと可愛がるよ」
「ありがとうっ!」
 ベスも嬉しそうに「ワン!」と返事した。その時、反対側から赤子連れの一人の男子が現れた。
「なんだ、城ヶ崎に西村君か。君達いつからそんなに仲良くなったんだい?」
 たかしは顔が赤くなった。
「永沢っ・・・・!そんな事あんたに関係ないじゃないっ!」
「いや、それは、僕達同じ犬を飼っているって事に気付いたからだよ!」
「でも西村君、君は前にみぎわと仲良くしていたじゃないか」
「まあ、そうだけどね・・・」
「永沢っ!西村君が誰と仲良くしたっていいじゃないっ!」
 その時、ベスが「ワン!」!と永沢に向かって吠えた。
「ひい~!」
「うわ~ん、うわ~ん!」
 永沢の弟の太郎も泣いてしまった。
「ほら、君の犬のせいで太郎が泣いちゃったじゃないか!!」
「何よっ、あんたが余計な事言うからでしょっ!?」
 たかしはどうしてもこの喧嘩を鎮めたかった。
「そうだ、太郎君!ほら、僕の犬だよ。タロって名前なんだ。君と名前が似てるだろ?」
 たかしはタロを太郎に近づけた。たかしの犬は愛嬌のある顔をし、永沢の弟もまた笑顔になった。
「たー、たー!」
「太郎・・・」
「太郎君・・・。ごめんね、お兄ちゃんと喧嘩しちゃって。またお姉ちゃんと一緒にピアノで遊ぼうね」
「たー、たー!」
 太郎は今度は城ヶ崎の顔を見て嬉しそうな顔をした。
「それじゃあ、永沢君、また学校でね」
「あ、ああ。西村君。君、もしかして城ヶ崎が好きなんじゃないのかい?」
「う・・・」
 たかしは図星で返答がしにくくなってしまった。
「え・・・?」
 城ヶ崎はたかしの顔が赤くなっている事に気付いた。
「そ、そうかもね・・・。それじゃあ」
「太郎君、またね」
 たかしと城ヶ崎、そして彼らの犬は永沢兄弟と別れた。
 
 藤木は堀の家で美葡の父が撮影した大会での自分の演技をみきえ、みどり、そして堀と共に鑑賞していた。
「うわあ、あんなに凄い演技を!さすが藤木さん!」
「うん、私達が地区大会で見た時よりも何て言うのかな?進化してるわ!」
(みどりちゃん、堀さん・・・)
 藤木はみどりと堀が褒めるので照れてしまった。
「できれば君達にもカナダに連れて大会での僕を見せてあげたいな。君達が僕の演技を実際に見るのは地区大会だけなんてね・・・」
「いえ、私、藤木さんのこの映像を拝見しまして、藤木さんがそれほど頑張っているというのが分かりました!世界大会でもきっともっと素晴らしい演技になると思います!」
「みどりちゃん・・・」
「それにしても一度も失敗しなかったわね」
「ああ、自分でもびっくりだよ。でも君はいじめを受けていただろ。それで君の事を考えて後半の三回転ジャンプを考えたんだ」
「私の事を・・・?」
「うん、大会に出る事を勧めてくれたのも君だし、それで元気をあげたいって思ってあの三連続三回転ジャンプを跳んだんだ」
「そっか・・・。藤木君、ありがとう・・・」
 堀は藤木が自分の為にも必死で頑張っていた事を感じ取り、藤木に照れた。
(え?いじめ・・・?)
 みきえは「いじめ」という言葉で気になった。
「美葡ちゃんのお父さんがビデオを撮ってくれたからその様子を見せる事ができてよかったよ」
「はい、私も光栄です!」
「そうだ。こずえも吉川さんも藤木君のスケート見てるんでしょ?折角だから私にも藤木君のスケート見せてよ!」
 みきえが藤木に願い出た。
「うん、いいよ!だからスケートの準備してきたんだ」
「では、行きましょう!」
 四人はスケート場へと向かった。

 たかしと城ヶ崎は犬の散歩を続けていた。たかしは永沢に心の中を読まれた事に恥ずかしさを隠せなくなっていた。
「西村君・・・」
「城ヶ崎さん・・・。いや、本当に何でもないんだ!」
「永沢が言った事?大丈夫よっ、気にしてないわっ!」
「う、うん・・・。そうだよね。城ヶ崎さんは確か男子っていつもふざけてばかりいるからあんまり好きじゃないんだよね・・・」
「・・・えっ、でっ、でもそんな事ないわっ。全ての男子が嫌いってわけじゃないわっ!それに西村君はそんなバカな事をするようには見えないわっ!それに私達同じ犬を飼ってる『犬友』じゃないっ!」
「城ヶ崎さん・・・」
「私と西村君は友達よっ。だから落ち込まないでっ!」
「城ヶ崎さん・・・。うん、ありがとう」
「今日は西村君と一緒だからちょっと遠くまで一緒に遊び歩こうっ!」
「うん!」
 二人と二匹は気を取り直して犬の散歩を続けた。

 みどり、堀、みきえ、そして藤木の四人はスケート場にいた。
「ここで私と藤木君は会ったのよ」
 堀がみきえに説明した。
「へえ。そうだったんだ。そういえばこずえと吉川さんは藤木君と学校が違うんだよね。どうやって知り合ったの?」
「実は、私のおじいちゃんのお友達のお孫さんとお友達でその方のお友達が藤木さんなんです。前に私の学校と藤木さんの学校が一緒にスケート教室を行いました時に、藤木さんの滑る姿がとてもカッコよくて私好きになってしまったんです」
 みどりが説明した。
「へえ、そうだったの」
「こずえは知らないの?」
「うん、私が転校前の話だからね。私は吉川さんとスケート場に行くときに藤木君とばったり会ったのよ」
「そっか・・・」
 四人はリンクに入る。
「それじゃあ、滑るよ」
 藤木は三人に自分の滑る様子を見世物にした。鮮やかにステップ、ターンし、ジャンプ、スピンも軽々こなす。彼の演技はみどり達どころかその場にいるすべての人々を驚かせた。
「うわあ、すごいね!」
「そうよ。だから私藤木君に大会に出るのを勧めたのよ」
「へえ」
 藤木が一演技を見せて三人の所に戻って来た。
「藤木君、オリンピックの選手みたいだね!」
 みきえが賞賛した。
「ははは、ありがとう。まあ、僕はスケート以外じゃ何もできないけどね」
「まあ、まあ、私と一緒に滑っていい?」
「うん、いいよ!」
 藤木はみきえと手を繋ぎ、滑り出した。みどりは藤木と手を繋ぐみきえを見て羨ましくなった。
「吉川さん、私達も滑ろうか」
「はい!」
 みどりと堀は二人で滑り出した。

「うわあ、ここもいい眺めだねえ!」
「ええ、隣町もいいわねっ!」
 たかしと城ヶ崎は隣町の川沿いの道を歩いていた。隣町の散歩もまた悪くないと思う二人だった。しかし、その時、横から野球のボールが飛んできた。
「キャアっ!」
 城ヶ崎が避けようとしたが、それをベスがキャッチした。
「ベス、ありがとうっ!」
 たかしはベスに感心した。
「ベス、凄いね!タロもこんな事できるかな?」
「大きくなればきっとで・・・」
「おい、ボール返せよ!」
 ボールの持ち主と思われる男子二名が寄ってきた。
「ウエッ、犬がくわえやがって!汚ねえな!!」
「何よっ!あんた達がそんなとこでキャッチボールしてるからでしょっ!」
「ウエッ、てめえやる気か!?」
「なんだこいつ!頭にウンコ付けやがって!キモいな!」
「誰が頭にウンコ付けてるですってっ!?」
 城ヶ崎は髪型を馬鹿にされて激昂した。
「そうだよ、今のは失礼だよ!」
「うるせえ!お前も調子のりやがって!お前らの犬なんてこうしてやる!」
 二人の男子は手にはめているグラブを外してベスとタロにぶつけた。
「な、何て事を・・・!!」
 たかしは怒りが込み上がった。 
 

 
後書き
次回:「後遺症(トラウマ)
 二人の男子に絡まれるたかしと城ヶ崎。スケート場を出た藤木達はその様子を目撃してしまう。堀はその様子を見て、あの時の事を思い出してしまう・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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