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繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
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03.過去語
ー水城涙ー
  過去語ー水城涙ー 一

 
前書き
溢れ出る厨二病感。だけど厨二病では無いです。
今回もよろしくお願いします。 

 
 遠くで鐘が鳴った。
 俺達は〝琴葉〟と名乗る不審者(?)に着いて行き、現在彼奴の家に居る。
 部屋の中は黒と白の二色に統一されていて、此の部屋にはそれ以外の色が見つからなかった。花瓶に入れて飾ってある花も白。床に敷いた絨毯も白。だけどその下の床は黒。机も黒。置かれている物は机と椅子、ソファ、花瓶、電視機(テレビ)位で、とても物が少なくて、開放感がある。
 窓の外には広く街の景色が映っている。とても綺麗だった。
 だが、此処は基本的に入る事の禁止されている区域。此処は、俺達人間の敵である〝鬼〟が住む場所であるらしいのだ。実際鬼を見た事が無い為、此処に鬼が住んでいるという所では無く、まず鬼の存在から信じていないが。
 で、問題なのは何故彼奴がこの立ち入り危険区域に住んでいるのかだ。
 此の区域に間違えて入るという事は先ずありえない。普通の街は、植物や建物の色で綺麗に彩られている。が、この区域内の街は全ての物が黒いのだ。建築物も、植物も、凡てが黒い。だから、例え道を間違っていても―――自分の家への道を間違える奴は余り居ないとは思うが―――此の区域には入らないだろう。
「おい、本当に此処なのか?」俺は彼奴に問う。
「え、逆に此処じゃなかったら何処なん?」不思議そうに此方を見る琴葉。
まぁ、確かに自分の家を間違える程の阿呆は居ないか。
琴葉は、俺をソファに座るように促し、自分は椅子に深く腰を掛ける。子供達は既に琴葉の家の捜索―――と言っても、探検ごっこ的なものを始めていて、もう話を聞きそうにない。
ソファは光沢のある白い革で作られていて、座るのに躊躇いが在った。着ている服がとても汚れている為、このまま座ったら必ず汚してしまう。相手が不審者だとしても、一人の人間としてそういう気遣いがある。
「嗚呼、別に汚しても構わないよ」
 俺の心を読み取ったかのように、淡々と言葉を零す琴葉。「お言葉に甘えて……」と小さく呟いてから、俺はそのソファに腰を掛ける。
「君が今疑問に思っている事を中てよう。そうだね……一つは、何故こんな処に住んでいるのか。もう一つは、私が何なのか。でしょう?」
凡てを見透かすような黒い瞳。吸い込まれそうな程深い黒は、俺の中身を掻き乱している様で、君が悪い。
「嗚呼」小さく答えを返す。
「矢張りね」自慢げに話す琴葉。
「いいよ、君の疑問に答えてあげよう」足を組み替えて、妖美に微笑む琴葉。
「説明がしやすいように、二つ目の疑問から答えよう。私は黒華琴葉、人間の子供だ。まぁ、普通の子供では無いけどね」
「どういう事だ?」身を乗り出して問う。
「私はね、人間だが、鬼共の味方だ。その意味が分かるかい?」
 裏切者。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
 そう言えば、街で彷徨っていた時、張り紙に琴葉の顔写真が載っていた様な気がする。あの紙は確か―――指名手配書?
 そんな奴に保護されたと言うのなら、逃げるのが今の最適な行動ではないのだろうか?
咄嗟に腰を浮かせて、子供達を集めるために声を出そうと、息を吸うが、「おっと、最後まで聞くんだ。」と言って、俺の肩に手を置く琴葉。先程まで机を挟んだ向こうにある椅子に座っていたはずなのに、音も立てずに此方に回ってくるのは不可能。時間があれば出来るだろうが、これは一瞬だった。
「私はね、白猫が嫌いなのだよ。あんな、黒猫を倒すためなら街の人々の事情も考えない奴らがね。君達が追い出された施設には、白猫の息が掛かっていた」だから何なのだ。それが本心だった。
 此奴が白猫が嫌いだから人間を裏切ったと言うのなら、勝手にしろ、と言って終わりだった。俺にとって白猫が特別大切って訳では無いし―――まぁ、人の生活があるのは彼等の御陰なのだろうが―――別に俺にとっては如何でも良かった―――
「つまり、だ。君達がこうやって長い間、路地で生活していたのは白猫の所為って事にもなる」
 が、此れを聞いてしまっては、勝手にしろ、では済まなくなった。
「は………?」
 目を見開いて、狼狽える。其れを見て、薄く笑みを浮かべる琴葉。
 若しかしたら嘘かも知れない、そう考えた。だが、まだ会って一時間余りしか経っていなくて、更に完全なる不審者であり、指名手配犯である琴葉の事何て信用は出来ない。目の前で微笑を浮かべる此奴の名前が、本当に〝黒華琴葉〟である事すら信用は出来ない。
 人間の裏切者となれば尚更。
「最初は誰でも驚くものだ」ケラケラと乾いた笑いと共に、言葉を続ける琴葉。「まぁ、実際私は白猫と君達が居た孤児院が契約をしている所を見ている。白猫が、〝水城の息子を、彼奴が匿っている子供達と共に、院から追放しろ、さもなければ皆殺しにする〟と脅して居る所をね」
 それでも、信じられない。信じてはいけない気がした。
 此奴の言葉を信じれば、俺だって裏切者になる。そうすれば子供達も共に、裏切者となってしまうだろう。
 暖房によって暖められた部屋が、段々冷たくなっていくのが分かる。絶対零度の様な視線が向けられ、部屋ごと凡てが凍り付くような気配がある。
「若し……」震える唇を動かす。「信じないと言ったら、アンタは俺達を如何する?」
「決まってるじゃない」琴葉は、視線はそのまま、口角を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべる。「其処の窓から突き落として、永遠にさようなら(グッド・バイ)」
 窓の外に映る、漆黒の高層ビル。純白の雪も、此の漆黒を染めつくす事は出来ていなかった。
 リーン、ゴーン。遠くで鐘が鳴る音と、子供達のはしゃぐ声だけが、此の空間を飾る。
 ―――選択肢は無かった。
「信じる。アンタの事」
 待ってました、と言わんばかりの表情を浮かべ、うふふと奇妙な笑い声を漏らす琴葉。前髪に隠れて、其の表情は見えないが、兎に角、気分が良い事は分かった。
 雪が静かに積もる。声が静かに聞こえる。時間が何倍にも引き伸ばされ、重力が重くなった様な感じがする。そして―――琴葉はバッと立ち上がり、光の無い瞳を見開いて言った。

 ―――ようこそ、我等が統べる闇の世界へ。此れから起こるはとある復讐劇の一幕に過ぎない。一度見れば引き返せないのが、此の劇の御約束。破れば一瞬にして消し炭に成る位の覚悟は当たり前。居場所を奪った人間を恨め。居場所を求めて抗え。自分の運命に抗え。一度捨てられた我等にとって、抗う事が生甲斐。抗う事を止める、それは即ち〝死〟。君は如何する。答えて見ろ、此れが最初の試験だ。

 スッと部屋が暗くなる。何も置いて居ない、唯の漆黒が広がる、虚無の空間。子供達の声も、姿も見当たらない。在るのは一つの玉座の様な物と、其処に座る琴葉。先程とは違って、黒帽子を被り、黒い胴衣(ベスト)と洋袴(ズボン)、黒い長外套を羽織っている。近寄り難い雰囲気と、冷たい視線。辺りに霧が立ち込めてきて、静かな音が立つ。
「俺は―――」
 スッと息を飲み、頭に浮かんだ事を、そのまま琴葉に告げる。
 もう何度目かも分からない程見た、琴葉の不気味な笑み。口は笑っていても、瞳は殺気に満ち溢れていて、まるで、獲物を狙う獣の様で。単純な恐怖が心を支配した。
「うふふふ………試験は合格だ。君はもう我等から逃れる事は出来ぬ。覚悟をしておけ」
 パッと明るくなる視界。柔らかいソファの感覚が戻り、子供達の声と、部屋の色が戻る。だが、相変わらず琴葉は不思議な笑みを浮かべている。だが、先程と違う点が一つ。此方を指さしていた。
 指の方向を視線で追って、その先を見て見ると―――其処には琴葉と同じ様な服が映った。だが、それは畳んで置いてある訳でも無く、乱雑に置いてある訳でも無く。
「んなっ、なんで俺、何時の間に着替えた……!?」
 むふふ、と今度こそ気色悪い笑い声を上げる琴葉。俺は琴葉と同じ様な服に、何時の間にか着替えていた。それに、ボサボサに伸びていた髪も整えられている。
 此奴、本当に人間かよ、と言う疑問を飲み込み、不気味な笑みを浮かべる琴葉を見る。すると、期待しているよ、と唇だけで琴葉は言葉を作る。

―――俺は、俺と子供達を棄てた人間共に復讐をする。
 
 

 
後書き
続きます。そろそろネタg((殴
あ、そう言えば琴葉さんのお兄ちゃんの名前が決まりません。
作者的には〝黒華葉月〟と考えているのですが(琴葉の〝葉〟の字が遣いたかったので)、他に何かあれば考えて頂けると嬉しいです。まだお兄ちゃんにはノータッチ(写真の話は出たけど)なので、まだ変えられるので。まぁ、この過去語シリーズでお兄ちゃんの過去語もしますし、しかも水城くんの話にも出てくる予定があるので(でも、まだ予定です)、早めに決めたいものです。
でも、それを言ったら琴葉さんの仲間達の名前を早く決めてしまいたいですね。そっちの方が重要なのd((殴
これからもよろしくお願いします。
というか短いのでごめんなさい。 
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