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タールート王

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第四章

「この通りです」
「済まぬ、余は」
「いえ、私は務めを果たしました」
 謝ろうとする王に笑顔で言うだけだった。
「ですから」
「それでか」
「頭を下げられることはありません」
「ではどうすればよいのだ」
「巨人達は全ていなくなりました」
 ダーウードが言うのはこのことだった。
「そのことをお喜び下さい」
「喜んでいいのか」
「これから巨人達がいた場所にです」
「我等はだな」
「民達を送りそこでも暮らしましょう」
「そうか、戦の次は政だな」
「それにあたりましょう」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 ダーウードは王宮に民達の歓声と共に戻った、そしてタールートはその彼の助けを受けてそうしてだった。
 政を続けた、そしてある日のことだった。彼はダーウードに言った。
「この日が来た」
「この日とは」
「そなたに全てを任せる日がな」
 こう言ってだ、彼は。
 自ら玉座を立ちダーウードのところに来てだった、そうして。
 王冠を脱ぎ彼に差し出した。
「受け取るだ」
「そうしてですか」
「これを被り玉座に座りだ」
 そうしてというのだ。
「このユダヤを治めるのだ」
「それでは」
「頼むぞ、そなたならだ」
 タールートは笑顔で話した。
「必ずだ」
「このユダヤを」
「余以上に治めてくれる」
「有り難きお言葉」 
 ダーウードはタールートに恐縮して応えた。
「それでは」
「うむ、余以上にこの国を治め」
「そうしてですね」
「この国と民達を栄えさせてくれ」
「わかりました」
 ダーウードはタールートに笑顔で応えた、そしてだった。
 王冠を被り玉座に座った、タールートはその彼を見て言った。
「これでよし」
「全てはですね」
「アッラーの思し召しだ」
 妃に笑顔で言った、その後彼は静かな余生を過ごした。
 タールートとは聖書で言うサウルのことだ、聖書ではその結末は残念なものだがコーランでは違う。これはそのことを書いたものである。聖書とコーランでは本当にかなり違うがこのことはこの人物でも同じだ。聖書では悲しい結末もコーランでは幸せな結末となっている。このことは実に面白いことではないだろうか。


タールート王   完


                 2018・5・15 
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