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カー女

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第五章

「何かが憑いていましたから」
「そうした車は本当にあるんだね」
「ものには憑くことがあるといいますが」
「車もだね」
「はい、刀が有名ですが」
 俗に言う妖刀だ、こうした刀の話は日本だけでなくあらゆる武器で様々な国に存在している。
「車にもです」
「そうした話があるとは聞いていたけれど」
「本当にありましたね」
「あの先生が轢いたり撥ねたのかな」
「そこまではわかりませんが」
 それでもと言う玲だった。
「あの車を買わなくてよかったですね」
「全くだよ」
 店長もほっとしていた。
「僕もそう思うよ」
「若しああした車を置いておくと」
「祟りが怖いね」
「私もそう思います」
「車は大事にして大事に使わないとね」 
 それこそとも言う店長だった。
「駄目だね」
「ああした風に使いますと」
「車も憑くね」
「そうなりますから」
「そうだね」
 店長は玲に深い顔で言った、そしてこの日も玲は真面目に働いたがたまたま外に用事があったので午後はそちらに行ったが。
 玲は以前外出した時にポルシェに乗った男に声をかけられたその場所を通った、するとそこでその彼に声をかけられた。
「あっ、これはまた奇遇だね」
「あれっ、そのポルシェは」
 玲が見たのはそちらだった。
「二度目ね、見たのは」
「あの、僕は?」
「あっ、そういえば貴方も」
 彼に気付いたのはポルシェの次だった。
「二度目ね、お会いしたのは」
「僕はポルシェのついでなんだ」
「いい車を大事にしている人なのはわかるわ」
「いや、そのことで君にたまたま会ったから話をしたいんだけれど」
「仕事中だけれど、私」
「簡潔に言うよ、今日は仕事がオフでまた女の子を誘おうとしていたけれど」
 それでというのだった。
「たまたま君に会ってね」
「それでポルシェを見られたのね」
「違うよ、僕に会ったんだよ」
 そこは訂正させた。
「またね」
「貴方はそう思うのね」
「うん、それで僕はポルシェの同好会に入ってるけれど」
「いい同好会ね」
 ポルシェ同好会と聞いてだ、玲はすぐに言った。
「それは」
「あっ、わかるね」
「ええ、貴方の車を見ていたらね」
「よく手入れされてるって言ってたね」
「只のポルシェ好きの人達じゃないわね」
「ポルシェを愛しているね」
「そうした人達の同好会ね」
 彼の車からこのことがわかったのだ。
「そうね」
「その通りだよ」
「面白そうね」
「興味あるかな」
「ええ、私ポルシェは持ってないけれど」
 高くて買えないがそれ以上に自分が乗る車として興味がないのだ、今乗っている車が一番だと思っている。
「それでもね」
「興味はあるね」
「どんな同好会もね」
「じゃあ参加してみる?」
 青年は早速玲に切り出した。
「そうしてみる?」
「ポルシェ持ってないわよ、私」
「いや、持ってないメンバーも多いから」
「それでも参加出来るのね」
「参加条件はどれだけポルシェを愛していて理解しているか」
「だからなのね」
「持っていなくてもいいよ」
 そして乗っていなくてもというのだ。 
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