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エイハブ船長の恋

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第四章

「海で生きてきた、そしてだ」
「モディーディッグをですか」
「ずっとだ」
 それこそというのだ。
「追い求めていたのだ」
「だからですか」
「わしは素敵でもないしだ」
 それにというのだ。
「女もだ」
「女性も」
「興味を持ったことはない」
「一切ですか」
「そうだ、あの時からな」
 まさにとだ、ここで船長はそのことを言ったのだった。
「モビィーディッグに片足を食われたその時からな」
「では」
「そんな話は興味がない」
 女を完全に否定した。
「帰ってくれ」
「そうですか」
「そうだ、もうな」
 二度と声をかけるなとだ、船長は女に背を向けて言った。だが女はそれからもだった。
 船長のところに来て声をかけた、だが。
 船長は断り続ける、それでイシュメール達も船長に彼が船にいる時にこんなことを言ったのだった。
「あの、噂聞きましたが」
「船長に交際を申し込んでいる人がいるとか」
「随分奇麗な人だとか」
「そう聞いてますけれど」
「それがどうした」
 船長の返事は素っ気ないものだった。
「わしに女が声をかけてきて何かあるか」
「いえ、船長独身ですから」
「どうですか?交際されれば」
「そして結婚も」
「本気で考えられては」
「わしは交際も結婚も興味はない」
 船長はイシュメール達にも素っ気なく返した。
「どっちもな」
「モビィーディッグだけですか」
「あいつを倒す」
「そのことだけですか」
「わしはその為だけに生きているのだ」
 だからだというのだ。
「女なぞだ」
「興味ないですか」
「そうですか」
「だからその人もですか」
「相手にされないですか」
「わしは女には縁がないのだ」
 一切という言葉だった。
「だからな」
「それでは」
「あの人が何度声をかけられても」
「断られますか」
「そうしていかれますか」
「絶対にな」
 それこそというのだ、そしてだった。
 船長はイシュメール達に船での作業をさせていった、そうしつつ今も海を見ていたがそこにふとだ。
 あの女の顔が思い浮かんだ、そのことに何故だと思ったが。
 次の日あの居酒屋で飲んでいる時に親父に言われた。
「今日もな」
「あの女がか」
「来ると思うかい?」
「そうだろうな」
 船長はラム酒を飲みつつカウンターの中にいる親父に応えた。
「またな」
「どうだい?もうな」
「そろそろか」
「一度でも話を聞いたらどうだ」
「話は聞いている」
 船長は親父にも素気なかった。 
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