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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【かつての面影】

 
前書き
 モモシキ襲撃時にネジが居たら、という話。ネジはヒナタとヒマワリと一緒に観戦していた設定。アニメより映画に寄せているつもりです。 

 
「ネジ兄さん、ヒマワリをお願い…! 私はナルト君を──」


 中忍試験試合会場が強大な力を持つ存在に襲撃され、ヒナタは娘のヒマワリと共に従兄のネジに守られながら避難していたが、何を思ってかヒマワリをネジに預け自分自身は襲撃真っ只中の試合会場に戻ろうとする。

その時ネジは、暁のペインが里を襲撃した時の事を思い出さずにはいられなかった。……里から離れていたネジが駆けつけた時にはヒナタは既に死にかけていた。白眼でナルトの危機を知り、周囲にそれを知らせるよりも先に体が動き、ナルトを守る為に一人ペインに立ち向かったらしいが敵うはずもなく一撃で返り討ちに遭い倒れ伏したという。

──ヒナタにはそういう危うさがある。ナルトの為なら後先を考えず盲目的に動いてしまう。それは二人の子を持つ母親となっても変わらないようだった。


「待てヒナタ、この状況下で母であるお前が娘のヒマワリの傍に居てやらなくてどうする。今ナルトの元に行ったところでお前には──」

 ネジは言葉で制止をかけるが、ヒナタの白眼を発動した決意に満ちた顔にそれ以上何も言えず、周囲の逃げ惑う人々とは逆方向に走り中忍試験試合会場に駆け戻って行くヒナタを従姪(じゅうてつ)のヒマワリと共に見送るしか出来なかった。


「ネジおじさん…、パパとお兄ちゃん、ママはどうなっちゃうの……?」

 ヒマワリはネジにすがりつき、不安で一杯の表情で涙を浮かべている。

「大丈夫だ、パパなら……ナルトなら、きっと何とかしてくれる。お兄ちゃんとママも大丈夫だよ」

 ネジはヒマワリを少しでも安心させようと微笑む。内心は気が気でならなかったが。


ナルトの事は信じている。火影であるナルトは命懸けで里と息子を守るだろう。裏の火影でもあるサスケも付いている。

……ヒナタもナルトを信じ、安全な場所まで避難し怯えている娘の傍に居る事を優先してほしかったが──

とにかくネジはヒナタの代わりにヒマワリを抱き上げ、安全な場所まで移動して事態が落ち着くまで従姪の傍に居る事にした。

本来ならネジ自身も里の者達や里外から訪れている人達を避難誘導すべき立場だが、自分までヒマワリの傍を離れてしまっては、危険の只中にいる父親と兄、それを無鉄砲に助けに向かった母を涙ながらに心配し不安に押しつぶされそうになっている幼いヒマワリにとっては酷だと感じた。

(ナルト……ボルト、ヒナタ……どうか無事でいてくれ)



 ──⋯ナルトは、襲撃者に連れ去られた。敢えて、連れ去られる事にしたのだろう。あのまま闘えば、里への被害は甚大だ。

多数の負傷者は出たものの、幸いにも死者は一人も出なかった。

負傷者の中に、ヒナタもいた。

連れ去られるナルトを助けようとして、襲撃者に返り討ちにされたらしい。

やはりペイン戦の時のように、無事では済まなかったようだ。

負傷者の溢れる中ヒナタは病室のベッドに寝かされ、サクラが医療忍術を施している。

その傍らにはヒマワリがいて、母親の片手を握り心配そうに「ママ、ママ……」と小さく呼びかけている。


 ボルトは大した怪我はなかったが、気絶から目覚めて負傷した母を見、父であるナルトが襲撃者に連れ去られたと知ってショックを隠せず、病室から逃げるように出て行った。

ネジは追うべきか迷ったが、放っておけなかった。ネジが外で追いついた時にはボルトは医療箱につまづいたらしくうつ伏せに倒れ、起き上がったと思えば右手首に付けていた科学忍具なる物を剥がして後ろへ勢いよく放った。……それがちょうどネジの足元に当たり、何も言わずに拾い上げる。

「───⋯」

「……おじさん、さぁ……、ほんとは、気づいてたんじゃないの。オレが、不正して何か使ってるってこと」

 ボルトは項垂れて背を向けたまま、掠れた声で言った。

「おじさんも母ちゃんも白眼持ちだし、バレててもおかしくないよなぁ……」

「──俺が試験官をしていたら、すぐ見抜いていたと思うし、必ず報告していただろう。だがその立場にはなかったし、白眼を使って試合を見ていたわけでもなければ気づいていたわけではないよ、俺もヒナタも。……ただ、今のボルトの実力には合わないはずのあれだけの影分身を出せば、俺でなくともナルトが気づいただろう」

「ふーん……そっか。ならいいよ、別に」


 ボルトはネジに背を向けたまま、ふらりと立ち上がる。

「どこへ…、行くつもりだ?」

「付いて来ないでくれってばさ。今は…、独りになりたいんだ。ごめん……心配してくれてありがとな、おじさん」

 重い足取りで遠ざかって行くボルトを、ネジは見ているしか出来なかった。



「──ネジ、ボルトの事は俺に任せろ。俺はアイツの師でもあるからな」

 不意にした声に振り向くと、いつの間にかサスケが立っていた。

「サスケ……、ボルトの師なら、科学忍具の使用に初めから気づいていたんじゃないのか?」

「師匠だからといって、弟子に何でも口出しすればいいものじゃない。……失敗から多くを学ばせるくらいは出来るだろう」

「───⋯」

「無事かどうかまでは判らないが、ナルトは生きている。時空間移動を使ってこれから助けに行く上で、ボルトも連れて行く」

「ボルトを……?」

「科学忍具の使用を咎めなかった俺にも非はあるからな。起死回生のチャンスくらいは、与えてやるさ」

「そうか……。ボルトの事をよろしく頼む、サスケ」

「あぁ、任せておけ」

 サスケは闇に溶け込むようにスッと消え、ボルトの後を追ったのだとネジは察した。



 ──火影室の上の階にある屋上にて、サスケの輪廻写輪眼による時空間移動によってボルトがサスケと五影達と共にナルト奪還へ向かう事を知ったヒナタは、どうしても見送りたいと言ってまだ癒えきらない体をネジに支えてもらいながらその場まで行き、サラダとミツキ、サクラも共にナルトを助けには行きたいがせめてサスケ達を見送ろうと屋上まで来る。

「ボルト……!」

 母親に呼びかけられたボルトは、サスケから借り受けた額当てを付けて見せ、心配させまいと強気な笑みを浮かべる。

……その姿は、サクラ、ヒナタ、ネジの目から見てもかつてのナルトの面影を強く映した。

そしてネジはふと、ナルトにかつて言われた言葉を思い出す。


『運命がどうとか、変われないとか、そんなつまんねーことメソメソ言ってんじゃねーよ! お前はオレと違って、落ちこぼれなんかじゃねーんだから』


「──ボルト!」

 ネジは思わず従甥のボルトに呼びかけていた。


「……行ってくるってばさ!」

 ハッとしてボルトはネジを見、それからニカッとナルトのような笑みを見せて時空間へ飛び込んで行った。


(お前なら、きっとナルトを取り戻せる。……頼んだぞ、ボルト)



《終》


 
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