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とある3年4組の卑怯者

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158 期待

 
前書き
 交友会を満喫するスケート大会の出場者とその保護者達。会長が世界大会出場者を集合させ、世界大会のコーチを行うという人物を入場させると、その人物は・・・。 

 
「か、片山さん!?」
 藤木は驚いた。何しろコーチとして招かれたのは己のスケートの技術を高評価した片山だったのだから。
「嘗てオリンピックの選手だった元スケート選手、片山次男さん、そして平岡久子さんです」
 片山とと呼ばれた女性は紹介されるとお辞儀をした。
「皆さん、こんばんは。元スケート選手の片山です」
「同じく平岡です」
「これより我々でこの才能ある子達のコーチを引き受けました。大会の前に東京で行う合宿で鍛え、そしてカナダのバンクーバーで大いに活躍させる事ができるよう頑張りたいと思います」
「そして私も同じく指導する者として皆さんに貢献できるよう頑張ります。宜しくお願いします」
 皆は拍手した。会長がまた進行を続ける。
「そして、はるばるカナダから起こしになり今大会をご覧になってくださった国際スケート協会のイーサン・シールズさんのご来場です!」
 会長に呼ばれて外人の男性が入ってきた。
「Good evening,everyone.My name is Ethan Seals. I could enjoy today's the natinal competition.I hope for you the activity of the world competition.Thank you」
 片山が通訳した。
「こんばんは。私はイーサン・シールズです。私は本日の大会を大いに楽しむ事ができました。ここにいる皆さんの世界大会での活躍を期待しています。ありがとうございます」
 皆は再び拍手した。
「ではまた引き続き交友会を楽しんでください!」
 藤木は日本代表となる五名と共に顔を合わせた。
(この大会でもここにいる人たちは皆凄い・・・。お互い日本代表の仲間として、世界一を争うライバルとして戦うんだね!)
 藤木はそう考えていた。最初は不幸の手紙で自分を責めた者達を驚かせるために大会に出場したのだが、やがてスケートで世界一を目指すという新たな目標ができ、今までは世界一を目指すには世界大会に出場するために金、銀、銅のいずれかを獲る事が目標だった。しかし、世界一になるという事は頂点に立つ、つまり金メダルを取らなければならないのだ。銀や銅でも満足できるものではない。
(今度は、賞が獲れればいいなんて、考えないぞ!絶対に金を取るんだ・・・!!)
 藤木はそう誓った。
「豆尾さん」
 藤木は豆尾に話しかけた。
「何だい?藤木君」
「豆尾さんの演技、凄かったです。僕はスケートを唯一の取り柄にしていますが、僕よりずっとかっこいい演技でした」
「ほう、君はスケートが唯一の取り柄か。でも俺もスケートが唯一の取り柄だし、他の事は何もできないような奴だっぺよ。でも、君も三年生だろ?それで銀ってのは凄いよ」
「はい、ありがとうございます・・・」
 その時、片山が話に入ってきた。
「しかし、その唯一の取り柄でここまで来たのだから君達は他にはない才能を持っているのだよ。それから豆尾亮吾君と言ったな。私は君の事をあまり知らなかった。是非合宿の時にまた君の技術を見せて貰いたい」
「はい、是非お見せしたいと思います!」
 そしてカナダ人の国際スケート協会のイーサン・シールズ氏が近づいた。
「You're playing were very exciting!Please let show on the world competition」
 藤木達は英語が分からなかった。片山が通訳する。
「『君達の演技はとても素晴らしかった。世界大会でも是非その演技を見せて欲しい』と言っている」
「え・・・。はい、ありがとうございます!頑張ります!」
 藤木達はシールズと握手した。交友会は続く。
「有子さん、演技私達が思っていた時より凄かったです。驚きました」
 美葡が有子に話しかけた。
「ああ、リハーサルでは本気出さなかったのはただ手の内を知らㇾたくないためにわざと手を抜いたのよ。そㇾで本番で皆を驚かせたかっただけよ」
「そうだったんですか・・・」
 美葡と黄花は有子の本当の実力に驚いていた。もしかしたら彼女は世界大会でも一位になるのは確実ではないかとさえ思った。
 藤木は古宮の元に再び向かった。
「古宮さん・・・」
「ああ、藤木君。すごいな。あの国際スケート協会の人と話す事ができるなんて。おりはこれで終わりだけど、藤木君を応援してるよ」
「は、ありがとうございます。でも折角ですから住所交換を。大会の事、いつか手紙を出します」
「ああ、いいな。世界大会終わったら手紙待っとるよ」
 藤木と古宮はお互い住所をメモ用紙に書き、交換し合った。そして藤木は佐野と吉岡と対面した。
「藤木君、君はまた凄いよ。今度は世界大会に行くんだから」
「ああ、俺は君を超える事ができなくて悔しいけど、頑張れよな・・・」
「吉岡君、佐野君・・・。うん、ありがとう!僕、頑張るよ。そうだ、住所交換しないかい?世界大会が終わったら手紙出すよ!」
「あ、うん、ありがとう!」
 藤木は吉岡、佐野とも住所を教え合った。

 藤木は大串にも声を掛けた。
「大串君、君も残念だったね。君の分も頑張るよ」
「あ、ああ、サンキュー、ところで、お前は誰が好きなんだ~い?」
「そ、そんな事関係ないだろ!?じゃ、じゃあね!!」
 藤木は大串に話しかける事をやや後悔してその場を離れた。

 やがて、交友会がお開きとなった。藤木は美葡や黄花、瓜原達と別れることになった。
「そな皆、合宿で会おうな」
「うん、さようなら」
「さようなら!」
 出場者達とその保護者、運営者や来客達は解散した。

 旅館に帰った藤木は寝る前に、遊園地で買った猿のストラップを見ていた。
(笹山さん・・・。僕は世界大会に行けるよ・・・。僕が遊園地で買った君との思い出が詰まったこのストラップがお守りになったんだ・・・)
 藤木は入院している笹山の事を考え、寝るのだった。

 翌日、藤木とその両親は花巻空港へ向かい、飛行機で羽田空港へ行き、そこから東京モノレールで浜松町駅で東海道本線に乗り換えて帰る予定でいた。飛行機の中で、父親が茂に話しかけた。
「茂、お前、大会に出て変わったかもしれないな」
「え?」
「お前は皆から卑怯と言われていた時のようにおどおどした様子がないからな。ま、お前の好きなスケートだからそれだけ自信が持てるのかもしれないな」
「うん、それもあるよ。でも、リリィに笹山さんと約束したんだ。卑怯を治すって」
「そうかい、茂、あんたいい友達を持って良かったね」
 母親が感心した。
「うん・・・」

 笹山は藤木のスケートの結果が気になっていた。
(藤木君、早く会いたいわ・・・)
 その時、誰かが入ってきた。
「笹山さん」
 城ヶ崎だった。
「城ヶ崎さん・・・」
「帰って来たわ。これ、お土産よ」
 城ヶ崎が差し出した土産は黒餅だった。
「ありがとう。そうだ、藤木君は?」
「藤木なら凄い結果だったわ」
「と言うと?」
「落ち着いて聞いて。銀賞よっ!」
「銀賞・・・。って事は世界大会に行けるのね!」
「そうよっ!」
「良かった・・・。藤木君・・・」
 笹山は涙が止まらなかった。
「それで、藤木君はいつ帰って来るのかしら?」
「今日の夕方じゃないかしら?」
「うん、学校で藤木君に会ったら私の所に来てって言っといて・・・」
「え?うん・・・」
「私、本当は・・・」
 城ヶ崎は笹山のこの後の台詞に驚かない訳にはいかなかった。

 藤木とその両親は清水駅に戻ってきた。そこに出迎えていたのは・・・。
「藤木君、お帰り!!」
「Hey,welcome back,藤木クン」
「リリィ、花輪クン・・・。只今」
「藤木君、ごめんね、昨日言えなくて。貴方の演技、とても最高だったわ」
「う、うん、君に初めてスケートする姿を見せてから今までの気持ちを全部表現したつもりだったんだ。今までは次に進むために金、銀、銅のどれかを獲りたいって思っていたけど、今度は違うよ」
「え?」
「君と約束したからね。卑怯を治す事とスケートで世界一になる事さ。だから今度は世界一だから目指すのは金メダルだけだよ」
「藤木君・・・。うん、頑張ってね!」
「それから、花輪クン」
「何だい?」
「カナダって英語を使うのかい?」
「ああ、それからフランス語も使う人もいるね」
「そうか、ならカナダに行く前に英語とフランス語を少しでも勉強したいんだ。教えてくれるかい?」
「ああ、いいとも。僕の英語やフランス語の先生を紹介するから時間がある時に僕の家に来て勉強してくれたまえ」
「うん、ありがとう、花輪クン」
「藤木君、私もフランス語は無理だけど英語なら私も教えてあげられるわ」
「え?ああ、そっか。リリィはイギリスに住んでたんだよね。ありがとう!!」
 そして藤木はある事を思い出した。
「あ、そうだ。笹山さんにこの事を伝えないと!父さん、母さん、油を売ってごめん、行こう。それじゃ二人共、僕は急いで家に帰って笹山さんのいる病院に行って伝えてくるよ!笹山さんも僕の結果知りたがってると思うし!!」
「あ、待って、その事なら今日城ヶ崎さんが伝えに行ったわ!!」
「え?」
「だから笹山さんも知ってるはずだわ。それに藤木君は大会で疲れてるはずだし、明日から学校だから今日は帰ってゆっくりした方がいいわよ」
 リリィは藤木を気遣うつもりで止めた。
「笹山さんへのお見舞いは明日でいいと思うわ」
「リリィ・・・」
 藤木はリリィが自分を心配してくれて有難く思った。
「うん、そうだね、そうするよ。それじゃあね」
「うん、また明日、学校でね」
「藤木クン、君達の荷物はヒデじいの車で運ぶから安心したまえ」
「ありがとう、花輪クン」
 藤木は貴重品以外の荷物をヒデじいの車に乗せ、運んでもらった。そして両親と共に家に帰り、後は家で(くつろ)ぐ事にした。そして笹山への見舞いは明日にした。一つの目標(ゴール)まで最終段階に入った事を報告する為の。 
 

 
後書き
次回:「報告」
 世界大会に出場したという藤木の功績は学校中の大ニュースとなった。藤木は笹山の元に見舞いに行き、銀賞を獲った事を報告すると、笹山はある事を藤木に願い出る・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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