空に星が輝く様に
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189部分:第十四話 夏の終わりにその七
第十四話 夏の終わりにその七
「それって」
「あいつらしいんだ」
「はい、愛ちゃんらしいです」
微笑んでこう話すのだった。
「そういうところが」
「そうなのか」
「それがいいところなんです。夢があって」
「夢ねえ」
「ネッシーが恐竜だって思うことも」
まずはそこから話す。
「それに絶滅した動物画今も生き残ってるんじゃないかって思うことも」
「そのこともなんだ」
「はい、そうです」
また話す月美だった。
「それで私も」
「月美も?」
「その影響を受けてステラーカイギュウを選びました」
こう話すのだった。
「それで」
「ステラーカイギュウをなんだ」
「絶滅したってことにはなってますけれど」
発見されて二十七年である。ベーリング海にいたそのカイギュウは発見から僅か二十七年で人間によって絶滅させられたのである。
ステラーカイギュウは肉は美味でしかも脂も皮も良質だった。しかも人を警戒せず動きも極めて鈍重だった。しかも危機に陥っている仲間を助けようとする性質もまた備えていたのである。捕らえるにあたってこれ程都合のいい生き物はなかったのだ。
「それでも」
「いるかな」
「目撃例が多いです」
月美が言ういるという根拠はこのことだった。
「最近でもありましたし」
「じゃあいるのかな」
「いると思いたいですね」
「思いたい」
「はっきりと確かめられたわけじゃないですから」
「だから思いたいんだ」
「はい」
陽太郎の言葉にこくりと頷く。
「けれどいますよね」
「そうだよな。いるよな」
「そう思えば見つからないものも見つけられる」
こんなことも言う月美だった。
「愛ちゃんによく言われます」
「ああ、ここでもあいつなんだ」
「私、ずっと友達いなくて」
月美はふと寂しい顔になってこう前置きもしてきた。
「それで愛ちゃんは」
「そんな中でできたんだ」
「中学校の時に同じ塾で」
陽太郎には前に話したことだ。しかしここでも話したのである。
「一年の時に一緒のクラスになって」
「成績が同じレベルだったとか?」
「はい」
塾ではそのそれぞれの成績によってクラスが決まることが非常に多い。それで彼女と椎名も同じクラスになったということなのだ。
「それでなんです」
「成程、よくあることだよな」
「そうですね。けれどそれで一緒になってから」
「あいつに色々と教えてもらって」
「絶滅した動物のこともです」
それもだというのだ。
「そのうちの一つです」
「そういうことだったんだ」
「それでステラーカイギュウですけれど」
「今月美が書いているそれだよな」
「凄く変わった動物なんですよ」
こう陽太郎に話す。
「マナテイーとかジュゴンの仲間なんですけれど」
「ああ、あんな感じなんだ」
「けれど凄く大きくて」
「ええと、相当大きいんだっけ」
「九メートルはあったんですよ」
その大きさを詳しく話すのだった。
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