空に星が輝く様に
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183部分:第十四話 夏の終わりにその一
第十四話 夏の終わりにその一
第十四話 夏の終わりに
「おい、マジかよ」
「家に行ったの」
海の近くのファミリーレストランだった。そこで集まって夏休みの宿題のレポートを書いている最中だった。
狭山と津島は驚いた顔で陽太郎に問う。赤瀬と椎名も一緒である。
「西堀さんの家に」
「すっごい進んだじゃない」
「進んだっていうかさ」
陽太郎は自分が注文したアイスコーヒーの氷をストローでかき混ぜながら二人に答える。
「向こうから誘われてさ」
「って西堀さんからかよ」
「嘘でしょ、それ」
狭山と津島は自分が今手にしているそのコップを割れそうになるまで強く握り締めてしまっていた。そうしてそのうえで話すのであった。
「あの大人しい人が」
「自分から」
「けれどよ。本当だぜこれって」
陽太郎は驚き続ける二人にまた話す。
「月美からな」
「しかも名前で呼んでるし」
「仲進展し過ぎ」
二人はさらに驚く。
「何だってんだよ、それって」
「おかしいでしょ、私達なんか全然なのに」
「二人はまた馬鹿過ぎる」
今のは椎名の言葉だ。
「子供過ぎるから」
「子供過ぎるって」
「私達って子供だったの」
「そう、子供」
椎名の言葉は厳しい。
「だからそこまでいかない」
「ちっ、じゃあ大人にならないとな」
「早くね」
こうしたところがやはり子供だった。それがどうしても出てしまっている。
「何時までも子供だと仕方ないしな」
「そうよね、やっぱり」
「努力すればなれる」
また言う椎名だった。
「だから頑張る」
「よし、そうするな」
「是非ね」
無意味にいきり立つ二人だった。その二人からちょっかいの対象を外してだ。椎名はここでとんでもないことを暴露するのであった。
その言うことはだ。これだった。
「勧めた介があった」
「勧めた?」
「そう、勧めた介があった」
まずはこう言うのであった。
「つきぴーに」
「勧めたって何がだよ」
陽太郎は話がわからず彼女に問い返した。
「月美に何を勧めたんだよ」
「斉宮を家に入れること」
それをだというのだ。
「勧めて正解だった」
「おい待て」
陽太郎は今の月美の言葉に真剣な顔で突っ込みを入れた。
「今何て言ったんだよ」
「聞こえたのね」
「っていうかあきらかに俺に聞こえるように言っただろ」
口を大きく開けて椎名に告げた。
「どう見てもな」
「そうだけれど」
「それで何て言ったんだよ」
必死なものを思わせる形相でまた椎名に問う。
「今よ、御前が月美に勧めた!?」
「そう」
声だけで頷いてみせた。
「その通り」
「そうだったのかよ」
「その通り、そろそろ必要だと思って」
「つまり御前が全部仕組んでいたのかよ」
「全てはつきぴーの為」
また言う椎名だった。
「全部アドバイスして決めた」
「じゃあ俺はそれにまんまと乗せられたって訳か」
「そう。斉宮の考えていることも全部考えてた」
何処までも考えていた。まさに策士であった。
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