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第64話 第6次イゼルローン攻略戦 1
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第64話 第6次イゼルローン攻略戦 1
宇宙暦794年8月31日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセイン 統合作戦本部
統合作戦本部に今回の第6次イゼルローン攻略作戦に参加する第7艦隊司令官ホーウッド中将、副艦隊司令官ノーウッド少将、参謀長ガルヴァルディ少将、副参謀長ファイサル准将、第3分艦隊司令官リー少将、第3分艦隊参謀長マイヤー准将、第4分艦隊司令官ワーツ少将、第4分艦隊参謀長トリオ准将、第5分艦隊司令官キャボット少将、第5分艦隊参謀長ナガオ准将等10名が集合した。
「シトレ閣下、小官達だけを招集したのはどう言う意図でしょうか?」
第7艦隊司令官ホーウッド中将が統合作戦本部長シトレ元帥に質問をぶつける。
「うむ、貴官は今回の第6次イゼルローン攻略作戦をどう思うかね?」
質問に質問返しで振られたホーウッド中将は考えながら話す。
「作戦自体第5次イゼルローン攻略戦の焼き直しですが、当たれば良いかもしれませんが」
「参加兵力に疑問があるのであろう」
シトレの言葉にホーウッドは頷く。
「本部長の言うように確かに参加兵力に疑問があります。何故態々第8、第9を入れなければ成らないのかですが」
「やはり其処に疑問があるか、参謀長はどう思うかね?」
そう振られた、ガルヴァルディ少将は自分の考えを述べる。
「第8のアップルトン、第9のアル・サレム共に前回昇進出来なかったからですか?」
「100点とはいえないが60点ぐらいだな」
士官学校校長だった頃のような言いように思わず参加者達に笑顔が出てくる。
「となりますと、功名心と言う訳ですか?」
「そうだな、アップルトン、アル・サレムだけではなくコーネフに最高評議会の面々もだな」
シトレの答えに全員がざわつく。
「それでは、無責任な功名心から作戦を行うと言う訳ですか?」
「今回の件は、コーネフ大将、アップルトン中将、アル・サレム中将とホーランド大佐が最高評議会のサンフォード副議長にねじ込んだ物だ」
「何と、それではフォークと変わらんでは無いですか」
「そうだな、4人の個人的な功名心と数人の選挙対策が被って作戦が可決されたわけだ」
「そうしますと、本部長が我々を呼んだわけと言うのが、その事を伝えるためですか」
ホーウッドの言葉にシトレは頷く。
「それもあるが、今回の件で折角の帝国の混乱が早期に収まる可能性が出てきた。敵はイゼルローン要塞を死守する為に増援を送ってくるかも知れない、彼等のような甘い考えでは、この戦いは旨く行かないのだよ」
「でしたら、総司令官代理のコーネフ大将に作戦案を提案なされば宜しいのでは?」
ガルヴァルディ少将の言葉にホーウッド中将が顔を顰めながら頸を振り非賛同意志を見せる。
「参謀長、コーネフ大将とあのホーランド大佐が言う事を聞くと思うか?」
ホーウッド中将の言葉に皆が頷いた。
「つまり本部長閣下は、第7艦隊にその火消し役としての働きを求めていると言う訳ですな」
寡黙に徹していた揉み上げと繋がった立派な顎髭の第3分艦隊司令官リー少将が的確な話をする。
「少将の言う通りだな、恐らく作戦はかなりの苦難をもたらすだろう、此はワイドボーン、ヤン両准将の意見も同じだ」
ワイドボーンとヤンという名前に皆が納得した顔をする。それほど両人は最近の同盟で有名人と成っているのである。
「ワイドボーン准将、ヤン准将が推測しているならかなりの確率で当たりますな」
「其処で貴艦隊に第6次イゼルローン攻略戦中に敵が取り得る作戦をシミュレートして此に纏めてある。貴官らは此で研究を行い非常時に備えて貰いたい。本来であれば私が言うのは職責に問題があるのだが、座して同盟軍の危機を見過ごす事は出来んからな」
シトレの決意に身の締まる思いのしたホーウッド中将以下の指揮官達はこの戦いの火消し役に徹する事を心に誓ったのである。
「判りました、我が第7艦隊は作戦の為に努力致します」
「頼んだぞ」
シトレに見事な敬礼を見せて退席するホーウッド中将以下の面々であった。
その日から第7艦隊の面々は、リーファとワイドボーンが監修しヤンが作成した敵作戦と味方が取り得るべき対抗策のシミュレーション訓練を行いはじめた。作戦案は普段のヤンとは思えないほどの説得力のある資料であった為、第7艦隊は必死に研究と訓練を行っていった。無論ハイネセン出撃後は実際の訓練を行う事にしたのである。
宇宙暦794年9月10日にアップルトン中将指揮下の第8艦隊9,000隻が、ハイネセン第8軍事宇宙ステーションから訓練と称して発進した。
第8艦隊はヴァンフリート星域会戦で、包囲殲滅中の敵艦隊の突破を許した際に3,000隻に及ぶ喪失と同数の損傷艦が出た挙げ句に、旗艦クリシュナを大破させられた為、今回6,000隻も少なく、旗艦も分艦隊旗艦FBB47 プロテシラオスに将旗を移していた。
プロテシラオス艦橋内では、アップルトン提督が復仇の念に燃えていた。
「いいか、今回の戦闘は楽勝だ。敵は混乱しているのだからな」
「「「おう」」」
艦橋内の楽観主義は艦隊全体に流れて行き、非常に危険な兆候になっていった。
続いて宇宙暦794年9月13日にアル・サレム中将指揮下の第9艦隊12,000隻が、ハイネセン第9軍事宇宙ステーションから訓練と称して発進した。
第9艦隊はヴァンフリート星域会戦後半戦で、包囲を突破しイゼルローン回廊へ逃げ帰る敵艦隊を待ち伏せ攻撃を行った際に3,000隻の損傷艦が出ており、今回3,000隻少ない状態での作戦参加であった。
パラミデュース艦橋内では、アル・サレム中将が、髭を触りながら作戦に付いて考えて居た。
「提督、モートン少将から連絡です」
「ああ、繋いでくれ」
『閣下、本艦隊はヴァンフリート星域会戦からの連戦です。しかも3,000隻も減った状態ですし、その損害の穴埋めをしただけの状態です。出来れば待機地点までに練度を上げるために、訓練を行いつつ進みたいのですが』
副官隊司令官モートン少将の言葉にアル・サレム中将は考え始める。
「うむ、しかし到着日時が押しているからな、作戦日時に間に合うようなら許可しよう」
『はっ、では訓練計画を立てお送りします』
モートン少将の姿がスクリーンから消えると艦橋内では、訓練なんか面倒だとのぼやきが聞こえていた。
モートン分艦隊旗艦ユースティティアでは、アル・サレム提督との連絡を終えた、モートン少将が分艦隊スタッフに訓練案を纏めるように命令していた。
「艦隊練度向上の為に待機地点まで訓練をしながら航行する、訓練計画を作成するぞ」
「はっ」
その言葉にモートン少将の薫陶をうけたスタッフ達が直ぐさま訓練計画を纏めるために動き出したのである。
続いて宇宙暦794年9月17日にホーウッド中将指揮下の第7艦隊15,000隻が、ハイネセン第7軍事宇宙ステーションからアルレスハイム方面哨戒活動と称して発進した。
第7艦隊旗艦ケツアルコアトル、ノーウッド分艦隊旗艦ペンテシレイア、 リー分艦隊旗艦アイユーブ、ワーツ分艦隊旗艦シャマシュ、キャボット分艦隊旗艦アヌンナキ各艦で、司令官達が、艦隊の訓練を計画に基づき直ぐさま始めるように命令していた。
其処結果、今回の作戦が危うい状態で有ると艦隊全体で考えるようになり、艦隊がハイネセンを出撃後に直ぐさま、訓練航行に入ったのである。
宇宙暦794年9月20日というまさに最後に宇宙艦隊司令長官代理コーネフ大将座乗の旗艦アイアース以下1,000隻の艦隊がまるで物見遊山のようにハイネセン第1軍事宇宙ステーションから出撃した。
艦隊では第8艦隊以上の楽観論に包まれ、スタッフ達も昼間から飲酒を行うほどであった。コーネフ大将も参謀連中と飲みまくり遊びほうけていた。その為1,000隻の艦隊も殆どがだらけた状態で進んでいたのである。
只、作戦参謀のホーランド大佐は自意識過剰で自信家ではあるが、作戦のタイムスケジュールを考えるために作戦室でシミュレーションを行いながら、勝利への意欲に燃えていた。
また、艦隊参謀には、ダスティー・アッテンボロー少佐も含まれていたが、彼はシトレ元帥及びロボス元帥からの特命でヤンの作った作戦案を確りと勉強させられ、いざと言う時のアドバイスを行う様になっていたが、コーネフ大将が言う事を聞かない時のために、シトレ元帥、ロボス元帥連名の委任状を渡されていた。
宇宙暦794年10月20日
■自由惑星同盟 ダゴン星域 旗艦アイアース
別々に分離進撃を行っていた司令部艦隊、第8艦隊、第9艦隊、22,000隻が待機地点のダゴン星域に到着した。第7艦隊は分離進撃の為にアルレスハイム星域方面から直接イゼルローン回廊同盟側出口で合流するためにこの地には来ていない。
合流した艦隊では、各艦隊司令官が集まり、会議を行っていたが、一部を除き楽観論が更に流れまくり、最早ピクニック状態で有った。
「月末にはイゼルローン回廊へ到着する。其処から一気呵成に要塞を攻略する」
コーネフ大将の言葉に多くの将官が賛同の意を示すが、モートン少将達は、司令部の浮かれように、危うさを完全に感じていた。其処で意見具申をしようとするが、具申自体が認められないのであった。
宇宙暦794年10月30日
■自由惑星同盟イゼルローン回廊同盟側出口付近
イゼルローン要塞攻略艦隊は10月30日イゼルローン回廊出口で合流し素早い展開で帝国軍の回廊外展開を阻んでしまった。此処に第6次イゼルローン攻略戦が始まったのである。
帝国暦485年10月30日
■銀河帝国イゼルローン要塞
イゼルローン要塞に到着した宇宙艦隊副司令長官メルカッツ大将旗下の艦隊はイゼルローン要塞駐留艦隊司令官ゼークト大将旗下艦隊と共にイゼルローン要塞から同盟艦隊を迎撃に出撃して行く。
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