美食のない国
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第一章
美食のない国
美食王ダルン=ダ=ルーンはこの時イギリスのロンドンに来ていた、だが彼はいつも一緒にいるメイドに困った顔で言った。
「この国とオランダには来たくなかったよ」
「仰りたいことはわかります」
メイドの主に察して応えた。
「ついでに言えばアイルランドもですね」
「そう、美味しいものというと」
「あるでしょうか」
「聞かない、いやはっきり言えばね」
「まずい、ですね」
「そうとしか聞かないからね」
だからだというのだ。
「それで出来る限りね」
「この国にはですね」
「来たくなかったけれどね」
「この度は女王陛下のお招きです」
イギリスのとだ、メイドは主に答えた。
「ですから」
「それでだね」
「国賓ではないですが」
「招かれたからね」
「来られたということで」
「王族としての責務だね」
「しかも前国王です」
それならばとだ、メイドは主に話した。
「それではです」
「王族としての務めを果たさないとね」
「ではこれよりです」
「うん、女王陛下とお会いしてね」
ダルンはその見事なまでに丸い漫画のキャラクターの様な顔でメイドに応えた。
「そうしてね」
「後は食べ歩きですね」
「果たしてイギリスに美味しい食べものがあるかな」
「調べておきました」
メイドは主に秘書の様に答えた、実際に彼の秘書の役目も行っている。
「ではそちらのお店を巡って」
「そうしてだね」
「楽しまれて下さい」
「出来ればイギリス料理で美味しいお店があれば」
「そちらで、ですね」
「楽しみたいけれどね」
「そう言われると思っていまして」
それでという返事だった。
「そちらの手配もです」
「してくれているんだね」
「はい、ではまずは」
「うん、王族としての務めを果たそう」
まずは前国王即ち王族としての務めを果たした、そしてだった。
ダルンはイギリス女王や王室の者達と会い公務を果たした、それからだった。彼はメイドに不安そうに尋ねた。
「それでだけれど」
「はい、これよりです」
メイドの返事は何も動じていない、主にテキパキと答える。
「お店を巡っていきましょう」
「イギリス料理のお店をだね」
「スコットランドやアイルランドの料理店もあります」
「ウェールズもかな」
「はい」
メイドの返事は即答だった。
「そちらも」
「連合王国全部あるんだね」
イギリスとは実は一国ではない、イングランドにスコットランド、アイルランド北部そしてウェールズ四国から成る連合王国だ。それで細かく言うと食文化も四つあるのだ。
「そしてその四つの国の食事全てを」
「味わって下さい」
「ではね、しかしね」
「味の方はですか」
「どうなのかな、イギリスの料理番組を観ていると」
それはというと。
「甚だで」
「美味しいものを作っているとは」
「思えないからね」
だからと言うのだった。
「正直不安だよ」
「ではその不安をこれからです」
「杞憂になるかどうかをだね」
「ご自身で確かめて下さい」
これがメイドが言うことだった。
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