空に星が輝く様に
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168部分:第十三話 家へその二
第十三話 家へその二
だからこそこう言いだ。そうしてだった。
「じゃあ行きましょう」
「西堀の家にだよな」
「はい、今から」
こう話してそのうえでだった。二人で月美の家に向かう。するとだ。
豪邸だった。立派な門にそして広い大きな家、洋館を思わせるそれは実に見事なものだった。陽太郎はその家を見てまずは唖然となった。
そしてだ。その顔で月美に顔を向けて問うた。
「あのさ」
「はい?」
「ここがまさか」
「はい、私の家です」
穏やかな口調で答えてきたのだった。
「ここがです」
「何かさ、ここってさ」
「ここって?」
「凄い屋敷なんだけれどさ」
こう言うのだった。
「こんなお家に住んでるんだ」
「はい、そうですけれど」
「お金持ちだったんだ」
庭まで広い。しかも立派な木々が見えている。そうしたものを見ていけばそれだけで自然と答えが出る、まさにそうした話であった。
「そうだったんだ」
「じゃあ入りましょう」
やはりここでもそうしたことにはこだわらない月美だった。
「それじゃあ」
「いいんだよね」
陽太郎はかなり畏まってそのうえで問うたのだった。
「ここで」
「はい、御願いします」
「そうなんだ、そこなんだ」
こんな話をしながらそのうえで家に入る。門から家の中まで結構歩いた。そうしてそのうえで辿り着いたその家の中はというとだった。
立派な玄関に長い木の廊下だった。玄関も奇麗でそのうえで左右には部屋の扉が幾つも見えている。それも見てまた言う陽太郎だった。
「やっぱり凄いな」
「はい?」
「いや、豪邸じゃない」
またこれを言う。しかしであった。
月美は全く動じずにだ。そうして先に進んである部屋に案内された。そこはビロードの絨毯に黒檀の食器入れ、それに柔らかそうなソファーが置かれている部屋だった。百インチはあるテレビもある。そんな部屋だった。
月美は陽太郎をその部屋に案内してだ。そのうえでまた言ってきた。
「お茶を持って来ますから」
「うん、悪いね」
「お茶は何がいいですか?」
部屋の中にも唖然とする陽太郎にまた話してきた。
「ダージリンがいいかアッサムがいいか」
「えっ、ダージリンにアッサムって」
「ハーブティーにされますか?それともローズですか?」
「あの、それ何?」
「紅茶です」
それだと。返答自体はにこりとしていた。
「それですけれど」
「紅茶も幾つもあるんだ」
「それかコーヒーにされますか?」
言うのはまだあった。コーヒーもあったのであった。
「キリマンジャロですか?ブルーマウンテンですか?」
「いや、そう言われてもさ」
「決まりませんか?」
「紅茶だけでなくコーヒーもそんなにあるんだ」
「ありますけれど」
返答は素っ気無いものだった。気付いていない顔だった。
「それが何か」
「何かじゃなくて。物凄いね」
「はあ」
「気を使ってもらわなくていいよ」
陽太郎は月美の家と言葉にだ。完全に気圧されていた。そうして呆然としたまま彼女に言葉を返す。それだけしかできなかった。
「別にさ」
「じゃあ紅茶ですか?」
「あっ、うん」
陽太郎は紅茶でもコーヒーでもいける。しかしそれでも今はとても言えなかった。
「それじゃあそれでね」
「そうされますか」
「種類は何でもいいからさ」
「何でもですか」
「うん、何でもね」
こう話すのであった。
「何でもいいからさ」
「お任せさせてもらっていいのですね」
「うん、それでね」
「わかりました。じゃあお菓子は」
まだあるのだった。お茶だけではなかった。
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