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真田十勇士

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巻ノ百四十 槍に生きその十三

 だがそれでもとだ、兼続は言うのだった。
「結局はじゃ」
「右大臣様が出られず」
「士気があと一歩のところに届かさせず」
「そうしてですか」
「大坂方は敗れる」
「そうなりますか」
「そうなる、しかし幕府の旗本達も」
 家康に直接従う彼等を見た、家康にとってみればまさに己の手足であり最も信頼の置ける者達であるが。
「流石に辛いであろう」
「今の真田殿のお相手は」
「それは」
「どうにもですか」
「うむ、鬼が相手ではな」
 今の幸村と彼が率いる軍勢が愛てではというのだ。
「辛いわ、しかも十勇士も共におるな」
「天下に知られたあの者達」
「十人の猛者達ですな」
「真田殿の忠臣である友であり義兄弟でもある」
「あの十人も揃って戦っているからこそ」
「流石の三河以来の者達もな」
 家康の下武辺を誇る彼等でもというのだ。
「敵わぬわ」
「勝てぬまでもですか」
「それでもですか」
「真田殿を凌げぬ」
「陣は崩れますか」
「そうなる、だが大御所様はご無事じゃ」
 そこまで攻められてもというのだ、陣が崩されるまでされても。
「それでもな」
「あと一歩ですか」
「真田殿はやはり及びませぬか」
「どうしても」
「そうなる、後はどうしてあの方を逃せられるか」
 また大坂城の方を見てだった、兼続は言った。
「それが問題じゃな」
「あの方?」
「あの方といいますと」
「それは一体」
「どなたでしょうか」
「いや、何でもない」
 それが誰かは言わない兼続だった、そこから先は。
「別にな」
「左様ですか」
「うむ、それでな」
 兼続はここで周りの者達にこうも言った。
「我等はこれよりな」
「はい、攻めましょう」
「大坂方を」
「そうしてですな」
「敵を破りますか」
「そうするぞ、手柄を立てればじゃ」
 そうすればとも話した兼続だった。
「褒美は手柄のままぞ」
「では」
「我等もです」
「手柄を立てまする」
「これより」
 上杉家の者達は兼続に応えてだった、景勝の采配の下動いた。そうして戦いに赴くのだった。上杉家の黒い具足も旗も動かして。
 幸村はただひたすら攻めていた、敵の軍勢は片っ端から蹴散らしていよいよだった。
 家康の陣に向かっていた、徳川の黄色い旗と具足が見えてだった。幸村は自身が率いる赤備えの軍勢に言った。
「よいな」
「はい、いよいよですな」
「大御所殿の軍勢ですな」
「あの方のところに来ますな」
「そして」
「前に来る者は倒せ」
 向かってくる者達はというのだ。
「そしてじゃ」
「はい、大御所殿の馬印を目指し」
「あの方を討つ」
「そうしますな」
「そうせよ、お主達もじゃ」 
 幸村は十勇士達にも言った。
「よいな」
「承知しております」
「我等もそのつもりです」
「大御所殿の御首を」
「必ず挙げます」
「そうじゃ、拙者も向かう」
 見れば軍勢の要所に全て幸村がいる、七人の彼が。 
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